中国共産党が7月1日に改正反スパイ法を施行した。米当局は恣意的な法執行によって出国禁止、不当な拘束のリスクが生じるとして渡航勧告を発出した。中国ビジネスの安定性が損なわれ国内回帰を検討する企業が増える可能性があるとして、政府がこの動きをサポートすべきだと声を上げる米議員もいる。
「米国は反スパイ法に対して何ができるのか。(米国企業の)CEOも役員も皆怯えている」マリン上院議員はFOXニュースの取材にこう答えた。いっぽう「バイデン政権にとって大きなチャンスだ。もし活動家ばかりではなく、ビジネスに明るい人材が豊富にあれば、米国に戻る企業に対しあらゆる政策的優遇を全面に打ち出していただろう」
そして、中国の反スパイ法施行により「文字通り一夜にして、製造業が米国に戻るという大きなうねりが出来上がるだろう」と論じた。
同法はこれまで、スパイ行為を「国家機密」の提供に限っていた。しかし、改正法では「国家の安全と利益」に関わる情報の取り扱いなど後半に及び、嫌疑があれば拘束される恐れがある。
SNSでの書き込み、ホテルでの会話…責任を負わされる
米国務省領事局は先月30日、「反スパイ法」施行について、中国で活動する米国企業や個人が新たなリスクにさらされるとして強い懸念を示した。スパイの定義が「国家安全保障上の利益に関連するあらゆる文書、データ、資料、物品」に拡大され、法律の規定がより曖昧になったと指摘した。
さらに、「外国企業やジャーナリスト、学者、研究者に法的リスクや不確実性をもたらす恐れがある」と警告した。米国務省は6月30日に渡航情報を更新し、「不当に拘束される危険がある」として中国への渡航を再検討するよう勧告した。
マリン氏は、文言の曖昧さを残した反スパイ法は米国民と企業に対する「直接攻撃」であり、「米国内でソーシャルメディア上で発言したこと、ホテルの部屋でプライベートで発言したことなど、すべてに対して責任を負わされることになる」と非難した。
日本側も中国反スパイ法について警戒を呼びかけている。松野博一官房長官は30日の記者会見で、「在留邦人への注意喚起をしてきており、今後も取り組みを続けていく」と述べた。
外務省は海外安全ホームページで、同法について注意した。国家安全に関わるとみなされた事案は「国家安全部門に長期間の拘束を余儀なくされるのみならず、裁判で有罪となれば懲役などの刑罰を科されるおそれがある」と述べた。
和田政宗参議院議員(自民)は、「対中国のSNS発信等で中国に目を付けられた人が、中国旅行の際に拘束される危険性も」あるとして警戒を呼びかけた。
青山繁晴参議院議員は時事通信の取材で、代表を務める議員連盟「日本の尊厳と国益を護る会」で外国勢力のカウンター・インテリジェンスに関する提言を秋の臨時国会でまとめる方針である明らかにした。議員立法による法律のみならず政府提出法によって統合的な省庁対策部署の創設が必要だと訴えた。
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