最近報告された米国の南部国境を超える中国人の増加(過去4か月で約3万人)は偶然ではないと、元米国国境警備隊のアモン・ブレア氏は言う。
「中国共産党は国民を強力に支配している。中国から抜け出せた者がいたとしても、それは中国共産党が流入を促進したものと考えている」とブレア氏は述べた。
中国共産党は米国と「長い戦争」をしていると彼は言う。
またブレア氏は、中国から輸入されるフェンタニルが米国を苦しめていることを指摘した。
「彼らはメキシコのカルテルを武器化し、アヘン戦争と同様に麻薬戦争を行っている」と彼は言う。
1840年代、中国がアヘン中毒の蔓延を理由にアヘンの輸入を止めようとし、英国と中国の間でアヘン戦争が勃発した。
ジョセフ・ヒューミア氏は、米国と敵対する国々は、不法移民を利用して「共産主義者の破壊工作ネットワーク」を米国国境の州に構築し、米国の主権をさらに侵食しようとしているとの見方を示した。
ヒューミア氏は、米シンクタンク「安全な自由社会のためのセンター( Center for a Secure Free Society)」の理事を務め、不正規戦について研究している。
不法移民の数が年々増加するにつれて、左派は「社会から疎外された」コミュニティの権利と政府への発言権を求めるようになった。
憲法では、選挙権を得るには米国市民であることが必要だが、市民ではない者を地方選挙で投票を認めるリベラル寄りの都市もある。
米国のオンライン政治百科事典「Ballotpedia」がまとめた報告書によると、カリフォルニア州、メリーランド州、バーモント州内の自治体やコロンビア特別区では、2023年6月時点で非市民の地方選挙での投票を認めている。
最近、サンフランシスコでは、香港出身の非市民が選挙管理委員会に任命された。
アリゾナ州などでは、非市民が米国市民であることを証明する書類を提出することなく、「連邦選挙のみの有権者(federal-only voters)」として登録できる。州のウェブサイトによれば、これらの登録者は連邦政府の選挙にのみ投票できる。
ベネズエラのハイブリッド戦争
「武器化された移民」は、ベネズエラのようなラテンアメリカの弱小国が、米国に圧力をかけて制裁を解除させるための手段でもあると、ヒューミア氏は言う。
2017年、米国はベネズエラのニコラス・マドゥロ大統領を独裁者と呼び制裁を加えた。
ヒューミア氏は、2018年に結成されたホンジュラス人移民を中心とするキャラバン(中米の移民集団)に興味を持ったという。約180人で始まったそのキャラバンは、10日間で7千人に急拡大した。
「自然災害や戦争がない限り、そのようなことは決してない」とヒューミア氏は言う。
さらなる調査の結果、ベネズエラがキャラバンを組織し、NGOが設置したインフラがそれを促進していたことがわかった。
2023年のプレゼンテーションでヒューミア氏は、ホンジュラスのキャラバンに関する調査で、左派の非政府組織プエブロ・シン・フロンテラスが、大規模なキャラバンを促進するために、ベネズエラの独裁者から、どうやら「現金入りのスーツケース」を受け取っていたと述べた。
移民権利団体は当時の報道記事で、政府関連からの資金提供を否定している。
ベネズエラの関与がマイク・ペンス副大統領によって確認された。ペンス副大統領は2018年、ホンジュラスの大統領が移民キャラバンの背後にラテンアメリカの左翼派閥がいることを伝えたとフォックスニュースに語った。
「このキャラバンはホンジュラスの左翼グループが組織したもので、ベネズエラが一部資金援助している」とペンス氏は語った。
米国税関・国境警備局(CBP)の統計によると、ベネズエラ人は現在、米国に不法入国する外国人の最大グループの1つとなっている。過去2年間で、60万人以上のベネズエラ人が米国に不法入国している。
不法移民が急増した2023年秋、バイデン政権はベネズエラの民主的選挙の実施協力と引き換えに、石油、ガス、金鉱セクターへの制裁を緩和していた。
そしてその合意が成立すると、突然、米国は数年ぶりに南米諸国へ不法移民の強制送還を開始した。
しかし、ベネズエラの独裁者が自由選挙で野党候補を認めないことが明らかになると、米国は1月に、ベネズエラ資本の金鉱会社に対する制裁を2月に再開すると発表した。
それに対抗するかのように、ベネズエラは米国の強制送還の取り組みの協力を打ち切った。
米国当局によれば、米国からベネズエラへの便は1月下旬で停止した。
米国はばらばらに
「移民の武器化は、学術界では数年前から一般的になってきていた」とヒューミア氏は言う。
同分野を専門とする米国の政治学者、ケリー・グリーンヒル氏は自身の著書で、弱小国が移民を利用して強国に圧力をかけることについて述べている。
グリーンヒル氏の調査によって、弱小国が制裁解除などの強国側の譲歩を強要するために「武器化された移民」を利用した81件の例が明らかになったという。
この方法の成功率は40%で、成功率が26%である制裁よりも行動を変える可能性が高いことがわかった。「武器化された移民」の成功率がもっと高いことを示唆する新たな研究もある。
「これは非対称的な侵略だ。彼らが米国に持ち込もうとしている対立と戦争の予備条件だ」 とヒューミア氏は言う。
彼は、現在の大量移民は次の段階への土台作りだと考えているという。6月のメキシコ大統領選と11月の米国大統領選の結果による影響も示唆した。
ヒューミア氏は、「武器化された移民」にさらされている欧州諸国を分析した結果、攻撃の第二段階として、米国南部国境のメキシコ側にロシアと中国が支配する企業が展開し、インフラが構築される可能性があると推測した。
「国境を不安定化させるために、さらに増強していくこともできるだろう」
ロシア、中国、イランはいずれもラテンアメリカに進出しており、協調して米国に立ち向かっているように見えると、共産主義の専門家であるトレバー・ラウドン氏は言う。
たとえば中国は、大規模な「一帯一路」構想によって、すでにラテンアメリカ全域に足場を築いている。複数の港湾や鉄道に出資し、いくつかの国と軍事パートナーシップを結んでいる。
メキシコでは、中国はフェンタニル製造のための薬物前駆体を提供し、もう一方ではマネーロンダリングサービスを提供することで、カルテルの麻薬密売活動に組み込まれている。メキシコのソノラ州では現在、中国政権がリチウムの採掘を模索している。
米国外の敵対勢力からのプロパガンダは、最終的に米国を解体するか、公平性の名の下に譲歩して、メキシコなどの他国に米国の領土を戻すことを示唆していると、両専門家は口を揃えた。
ヒューミア氏は、プーチン大統領に次ぐロシアのナンバー2であるニコライ・パトルシェフ安全保障会議書記が2023年にラテンアメリカを訪問したことを指摘した。
パトルシェフ氏がキューバなどを訪問している間、ロシア政府が支配するソーシャルメディアは、米国南部の国境線を引き直した地図を放送したという。
「彼らはアリゾナ州全域、テキサス州の半分、カリフォルニア州の3分の2をおおむねカバーする新たな国境を示す地図をすべてのソーシャルメディアに掲載した」
ロシア政府系の報道機関によると、パトルシェフ氏は、「遅かれ早かれ米国の南側の隣国が奪われた領土を取り戻すことは間違いない」と述べた。
パトルシェフ氏は米国を「継ぎ目から簡単にバラバラになるパッチワークキルト」と呼んだ。
「人々はその考えを否定して笑うかもしれない。しかし、大きな圧力と不安定化によって、米国は国境を管理できなくなり、領土を放棄せざるを得なくなる可能性がある」とヒューミア氏は述べた。
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