中国 衰退の道

オピニオン:揺らぐ「中国夢」、中産階級の苦境と不動産危機

2024/06/22 更新: 2024/06/22

中国が現在、衰退の道を歩んでいることは、複数の証拠から明らかである。かつて楽観的で自信に満ちていた中国の中産階級が崩壊し、多くの人々が再び貧困に陥っている。この状況は、中国共産党(中共)にとって深刻な問題を引き起こした。

中共は長年にわたり、中国人民との間に暗黙の契約を結んできた。人民が中共の統治を黙認する代わりに、中共は経済的繁栄をもたらす事というものである。しかし、現在の経済状況は、その契約が破綻しつつあることを示している。

現在、中国の人々は消極的な態度を取り、支出を削減し、逆境の中で財産を再建しようとしている。もし事態がさらに悪化すれば、人民がどのように反応するかは予測が難しい。2009年の経済危機の際には、多くの暴動が発生したことがあるため、一触即発の状況であると言えよう。

問題の根本原因は、持続する不動産危機にある。2021年、大手住宅不動産開発会社である恒大が財務上の義務を履行できないことを発表して以来、この危機は中国の経済と金融を脅かしている。恒大の破綻とその後の複数の企業破産は、財務の混乱を引き起こし、住宅建設と購入のペースを抑制している。

特に中産階級にとって重要なのは、これらの問題が、既存の住宅価値を押し下げている点である。既存の住宅は、多くの中国人にとって、特に中産階級にとって主要な財産である。例えば、昨年12月、中国の70大中都市における既存住宅の平均価格は前年比6.3%減少しており、これは2011年にデータ収集が開始されて以来、最大の下落幅である。

さらに説得力のある証拠は、最近発表された北京の個人所得税収入報告にある。最新データである1月と2月の個人所得税収入は約3622億元(約7兆8300億円)で、前年より16%減少している。財務省は、年収が10万元(約220万円)以下の個人は実質的に個人所得税を支払っていないため、所得税収入の減少は多くの家庭が、この収入レベル以下に転落したことを示していると説明している。また、10万元という年収は中国の中産階級の下限を示しており、多くの人々がこの地位を失ったことを物語っている。

‎ブルームバーグニュースが収集した中国の初任給データも、同様に悲観的な内容である。2023年第4四半期、初任給は1.3%減少し、これは3四半期連続の減少である。ボーナスのデータはさらに厳しく、前年同期比で約17.5%減少している。特にインターネットと電信業界のボーナスは27%、金融業界は35%の減少である。

これらの情報を考慮すると、高級品の売上が大幅に減少していることも理解できる。グッチは、中国における売上が前年同期比で20%減少したと報告している。スイス製の時計の対中輸出も前年同期比で25%減少している。中国の高級レストランも同様の減少を報告しており、特に低価格レストランの客足が回復した後のことである。さらに興味深い例として、中古ピアノの在庫が急増し、価格に大きな下押し圧力がかかっていることが挙げられる。ピアノを所有する事は中産階級の象徴であり、在庫の過剰は多くの人々がピアノを手放していることを示している。

これらの状況は、中国経済の見通しにとって何の助けにもならない。中産階級にとって、現在のテーマは家にとどまり、支出を削減し、貯蓄を再建することである。習近平や他の中国指導者にとって、中国人民に繁栄を約束したが、この不安定な状況は少なくとも不安を感じさせるものである。

ミルトン・エズラティは、The National Interestの寄稿編集者であり、ニューヨーク州立大学バッファロー校の人間資本研究センターの関連組織であり、ニューヨークに拠点を置くコミュニケーション会社Vestedの主席エコノミストである。Vestedに加わる前は、Lord、Abbett & Coの主席マーケットストラテジスト兼エコノミストを務めていた。彼は頻繁にCity Journalに寄稿し、Forbesのブログに定期的に投稿している。最新の著書は「Thirty Tomorrows: The Next Three Decades of Globalization, Demographics, and How We Will Live」。
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