WHOの高額なパンデミック対策計画

2026/08/29 更新: 2026/08/29

論評

アンソニー・ファウチ氏の日記が最近公開され、その後、米上院委員会への出席時に、自己負罪を拒否する権利を保障する合衆国憲法修正第5条を111回にわたって行使し、質問への回答を拒んだ。この出来事は、公衆衛生当局によるコロナパンデミックへの対処を巡り、その実態に大きな隔たりがあることを浮き彫りにした。これは米国だけでなく、オーストラリアにも当てはまる。

ウイルスの起源や、ロックダウン、マスク、ワクチン政策をめぐって、当局は公式見解を正当化するため、公の場では繰り返し確信に満ちた説明をしていた。しかし、当時の非公開のやり取りを見ると、実際には第一線の科学者たちでさえ、科学的に不確かな状況の中で判断を下していたことが確認できる。

このように「表向きの強い主張」と「裏での本音」の間に生じた隔たりが残した重大な弊害の一つが、公式発表に対する不信感の高まりである。

こうした公的機関に対する疑いの目は、彼らが進めようとしている将来のパンデミック対策計画に対しても、同様に向けられるべきである。

私たちは、パンデミックのような災厄が自国に到達するのを防ぎ、少なくともその影響を軽減するため、各国間の調整を世界保健機関(WHO)に依存している。そのためには、こうした国際機関で働く大勢の国際官僚に一定の判断を委ねなければならない。そして、その信頼関係は「信用」の上に成り立っている。

彼らの給与やキャリアは、その活動を支援するために、私たちからより多くの資金を拠出させることにかかっている。しかし、ケンブリッジ大学出版局の学術誌『Health Economics, Policy and Law』に掲載された国際的なパンデミック資金に関する新たな論文によれば、WHOと世界銀行は、将来のパンデミック被害を軽減するための主要な国際的取り組みの根拠となる投資収益率を算出する際、疑わしい前提に依存している。

これは各国政府に警戒を促すべき問題である。パンデミックは今後も時折発生するため、その被害軽減に投資する価値はある。しかし、この論文は、現在進められている投資が、世界全体の健康に総じて有害な影響を及ぼすことになると指摘している。さらに深刻なのは、広く共有された世界的な公益を守る役割を託されている機関そのものの質に、根深い腐敗が存在する可能性を示唆していることである。

WHOと世界銀行がG20の要請を受けて2022年に作成した報告書は、パンデミックへの備えと予防のため、年間311億ドル(約4兆円超)の予算を提案している。このうち約105億ドルを、オーストラリアを含む各国の対外援助によって賄うとしている。また約260億ドルは、膨らむ新型コロナ関連債務などの経済問題にすでに苦しんでいる低・中所得国が負担することになる。比較のために言えば、WHOの2024~25年の年間予算全体はわずか38億ドルだった。

WHOと世界銀行の主張の要点は、これほどの資金をパンデミックへの備えに投入すれば、将来的にはそれを桁違いに上回る投資収益が得られるというものだ。一部の富裕国では1000倍を超えるとしており、もしそれが事実なら、断るのが難しいほど魅力的な話である。

しかし、リーズ大学の論文は、こうした財務上の主張が「煙と鏡」、つまり実態を覆い隠すような論法(まやかし)に基づいていると指摘している。その算定が依拠しているのは、以下のような極めて疑わしい前提である。

まず、パンデミックによって失われる『健康な寿命(質調整生存年)』を、世界の三大感染症(HIV/エイズ、結核、マラリア)による損失と比較した、極めて根拠の薄い仮定。そして、命を1人救うコストにおいて、三大感染症よりもパンデミック対策へ圧倒的に多くの国際資金を優先配分しようとする、不自然な前提である。さらに、栄養、衛生設備、水、衛生習慣といった、人々の健康上の回復力を支えるより基本的な要因を過小評価し、ワクチンなど医薬品投資の利益を不当に優先している点も挙げられる。

なお、1918年のスペイン風邪以降、パンデミックの死亡率を下げてきた要因は、抗生物質や医療の進歩とともに、まさにこれら基礎的な生活環境の改善にほかならない。

さらにWHOと世界銀行は、健康上のリスクが明らかになるにつれて人々が自ら行動を変えることで生じるリスク軽減効果や、パンデミック対策そのものがもたらす付随的なコスト、そしてそうした基本的対策に投資することで得られる可能性のある利益についても、十分に考慮していない。

これが深刻な問題となるのは、オーストラリア政府がすでに改正された国際保健規則(IHR)を承認し、提案されている「WHOパンデミック協定」への署名も予定しているからである。政府はさらに今年9月、拡大の一途をたどる「パンデミック産業」の仕掛け人や受益者たちへ、さらなる資金提供を促す国連の政治合意にも署名する見通しだ。彼らは、WHOの不透明な見積もりに基づいて、多額の資金拠出を約束してしまっているのである。

多くのオーストラリア国民は、国際機関が信頼に足る存在であり、不適切な会計やごまかしを行うのではなく、厳格な基準を重んじていると信じていた。しかし残念ながら、説明責任(アカウンタビリティ)を伴わない利益誘導は、保健ガバナンスの基盤として極めて不十分である。パンデミック計画から恩恵を受ける製薬企業や研究機関、そして官僚たちを支えるための巨額の資金は、実際に機能している他の公衆衛生プログラムから流用せざるを得なくなる。

三大風土病や栄養などの基本的な優先課題に対する国際的な資金援助はすでに減少している一方、パンデミック対策は拡大している。リーズ大学の論文の著者らが求めているのは、世界の保健上の優先順位を評価し、そのための費用を負担する際に、単純に透明性と誠実さを確保することである。決して過大な要求ではない。

オーストラリア政府には選択肢がある。納税者のために建設的な立場を取り、より適切な基準を要求するのか。それとも、無批判に追随することで、問題の一部であり続けるのかである。

本記事は当初『The Australian』に掲載され、その後Brownstone Instituteから転載されたものである。

公衆衛生医、ブラウンストーン研究所の上級研究員、グローバルヘルスにおけるバイオテクノロジー・コンサルタント。世界保健機関(WHO)の医務官および科学者、開発途上国に適した感染症の新たな診断技術の開発と普及を目的とした活動を行うスイスの非営利組織「FIND」のマラリアおよび発熱性疾患担当プログラム責任者、米ワシントン州ベルビューのIntellectual Ventures Global Good Fundのグローバルヘルス技術担当ディレクターを経て、現在に至る。
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