米陸軍は、中国共産党(中共)の接近阻止・領域拒否(A2/AD)戦略に対抗するため、第4多領域任務部隊(4th Multi-Domain Task Force)を新設した。中共のA2/AD戦略は、米軍や同盟国の部隊が西太平洋に進出し、台湾防衛を支援することを阻む狙いがある。
インド太平洋での作戦を想定
米陸軍は10月8日、公式サイトで、第4多領域任務部隊が同日、コロラド州フォート・カーソンで発足したと発表した。
米陸軍は声明で、「同任務部隊は、長距離精密火力をはじめとする各種作戦能力を統合し、複雑な敵のA2/ADネットワークを混乱・分断することを目的としている」と説明した。
さらに、「インド太平洋地域での作戦を重点とし、陸・海・空・宇宙・サイバー空間を含むすべての領域にわたり、作戦司令官に多様かつ強力な選択肢を提供する」としている。
新部隊は約2100人で構成され、太平洋多領域司令部の隷下に入る。ハワイに駐留する第1多領域任務部隊とともに、インド太平洋全域で任務に当たる。
第4多領域任務部隊の司令官、ヒュー・ジョーンズ大佐は発足式で、「われわれがこの部隊を編成するのは、侵略を抑止し、平和を維持するためだ」と述べた。
「もし戦争が起きれば、われわれは戦い、勝利する準備ができていなければならない。危険に直面する人々にあらゆる優位性を提供すると同時に、敵に逃げ場も隠れ場所も与えないことがわれわれの責務だ」と語った。
中共のA2/ADに対抗する3部隊
米海軍研究所(USNI)ニュースが10月13日に報じたところによると、米陸軍は多領域任務部隊について、「複雑さを増す世界情勢の中で、同等の戦力を持つ相手に対抗するための部隊」と位置づけている。
各部隊は長距離ミサイルを装備し、電子戦、情報収集、防空などを担う部隊も編成している。
これまでにワシントン州、ドイツ、ハワイで同様の部隊が設置されてきた。第4多領域任務部隊の発足により、米陸軍は現在、中共のA2/AD戦略への対処を主眼とする多領域任務部隊を3つ置くことになる。
米陸軍が2024年に示した計画では、世界で計5つの多領域任務部隊を配備し、このうち3つを米陸軍太平洋の隷下に置くとしていた。
第4多領域任務部隊の具体的な展開時期は明らかになっておらず、中距離ミサイルシステム「タイフォン」をすでに配備しているかどうかも公表されていない。
中共の「接近阻止」網をどう突破するか
中共のA2/AD戦略は、有事の際に台湾支援へ向かう米軍の台湾海峡への接近を阻み、「敵による作戦地域への進入を制御し、地域内での行動の自由を制限する」ことを目的としている。
サウスチャイナ・モーニング・ポストが10月15日、専門家の分析として報じたところによると、中共は長距離ミサイル、高性能レーダー、衛星、通信システムなどを組み合わせたネットワークを構築し、接近する米軍の艦艇や航空機を探知・追跡することで、威嚇や攻撃によって米軍の進出を阻もうとしている。
これに対し、米軍の多領域任務部隊は、長距離精密打撃と情報、サイバー、宇宙、電子戦の能力を組み合わせ、分散した陸上拠点から作戦を展開する。
狙いは、中共側のレーダーや指揮施設、ミサイル発射装置を特定し、通信を妨害するとともに、地上発射型ミサイルで重要目標を攻撃することにある。
太平洋多領域司令部のバーナード・J・ハリントン少将は6月、無人艇や長距離攻撃ドローンなどを活用し、敵の封鎖網を突破する構想を示した。
ハリントン少将は、中共側の「信号を発するレーダーや情報を送信する通信拠点」を常に攻撃可能な状態に置く必要があるとの考えを示した。
また、AIを活用し、指令処理にかかる時間を短縮する方針も明らかにした。
防衛コンサルティング会社Perceptumの責任者で中国問題の専門家、ティモシー・ヒース氏は、移動式ミサイル発射装置は草木や建物に紛れて隠すことができるため、中共軍は捜索に多くの労力を割かざるを得ず、常に奇襲を警戒することになると分析している。
各地で演習 北京も反発
米軍は近年、中共のA2/AD戦略を突破するための演習を重ねている。
2024年6月、米軍が西太平洋の島国パラオで行った演習「バリアント・シールド」では、第3多領域任務部隊が無人型の発射装置からミサイルを発射し、移動中の海上目標を攻撃した。
同年、第1多領域任務部隊は中距離ミサイル、タイフォンをフィリピンに展開した。
2026年には、第3多領域任務部隊が「タイフォン」の発射装置と高機動ロケット砲システムHIMARSを日本の鹿屋航空基地に展開し、演習に参加した。
中共外務省の郭嘉昆報道官は今年5月、タイフォンを「戦略的な攻撃兵器」と批判し、日本への配備は地域の対立や軍拡競争を激化させると主張した。
一方、米陸軍士官学校の現代戦争研究所は3月、米陸軍中佐ベン・ブレインら3人の将校による論考を掲載した。
論考は、こうした部隊が紛争の勃発前に前方拠点や情報ネットワーク、兵站体制を構築しておく必要があると指摘。紛争初期に必要な態勢を整えられなければ、陸軍はインド太平洋で最も重要な戦いを傍観するだけの存在になりかねないと警告している。
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