米陸軍が新作戦指針 中共軍を最重要脅威に 第1列島線の配備強化

2026/10/23 更新: 2026/10/23

米陸軍は10月7日、新たな作戦指針を発表し中国共産党(中共)軍を最優先で対処すべき相手と位置づけた。第1列島線への部隊や弾薬の事前配備、後方支援施設の整備も求めている。

専門家は、米軍の有事への備えが戦略構想から具体的な配備計画へと進んでいると分析する。これにより、中共当局が台湾への武力行使に踏み切った場合、米軍がどう対応するかを予測しにくくなるという。

ただし、米国は台湾有事への軍事介入を明言しない「戦略的曖昧さ」を維持している。台湾は外部からの支援を当てにするのではなく、自らの防衛力を強化すべきだとの指摘も出ている。

米陸軍、中共軍を最重要の警戒対象に

米陸軍は10月7日、新たな作戦指針「陸軍はいかに戦うか」を発表し、中共軍を長期にわたって重点的に対処すべき「ペーシング・スレット」と位置づけた。これは、米軍が戦力や装備を整備する際に基準とする脅威を意味する。

指針では、冷戦期にソ連軍への対処を重視したのと同様に、組織編成や訓練、装備の整備を長期的に進める必要があると強調した。

米陸軍によると、現代の戦争では、長距離精密攻撃や無人システム、AIによる標的識別、戦場の常時監視などが大きな影響を及ぼしている。部隊の位置を隠すことが難しくなる一方、作戦を判断する時間も短くなっている。

また、米国内での部隊動員や海外への増援を、敵の妨害を受けずに進められるとは限らないと警告した。敵が米国内の鉄道や港湾、部隊の動員を支えるネットワークを攻撃し、戦闘地域への部隊や装備の輸送を妨げる恐れがあるという。

米軍事紙「星条旗新聞」によると、指針は、紛争が始まる前に部隊や装備を想定される戦闘地域の近くへ配備し、開戦初期の優位性を確保する必要があると強調している。

その重要な拠点となるのが、第1列島線だ。

米軍、第1列島線に部隊と物資を事前配備へ

インド太平洋地域では、第1列島線の作戦体制を強化し、有事に米本土から大規模な増援部隊を送る方式への依存を減らす方針だ。

具体的には、第1列島線で燃料や弾薬の貯蔵施設を整備し、作戦物資の備蓄や緊急時に使用する基地の機能強化を進める。また、戦闘が長期化しても機能する指揮統制体制を構築し、敵の「接近阻止・領域拒否(A2/AD)」能力に対抗する。

A2/ADとは、ミサイルや防空システムなどを使い、相手の部隊が特定の地域に進入するのを阻んだり、その地域内での行動を制限したりする軍事戦略を指す。

米海軍協会のニュースサイト「USNIニュース」によると、指針は第1列島線に迅速に戦闘へ投入できる部隊を配備するとともに、第2列島線の後方支援体制を強化する方針を示した。

燃料や弾薬の備蓄、輸送網の改善に加え、工兵、医療、防空部隊の事前配備を進め、長期戦にも対応できる態勢を整える。

ただし、前方配備は必ずしも多数の米軍部隊を常時駐留させることを意味しない。部隊の交代配備や装備の事前集積、迅速に対応できる拠点の整備を組み合わせ、増援部隊が到着後すぐに作戦を開始できる態勢を目指す。

台湾有事に備え、開戦初日からの即応を重視

軍事評論家の馬克氏は大紀元に対し、今回の指針が従来と大きく異なる点の一つとして、具体的な地名や部隊名、作戦状況に踏み込んでいることを挙げた。

従来の文書ではインド太平洋地域や潜在的な敵について大まかに論じていたが、新たな指針ではフィリピンのルソン島北部、バブヤン諸島、バシー海峡、ミンダナオ島などに直接言及している。

さらに、第593遠征維持司令部、第8戦域支援司令部、第94陸軍防空ミサイル防衛司令部など、具体的な部隊名も挙げた。

馬克氏は「作戦指針がここまで具体的になるのは極めて珍しい」と述べた。

もう一つの大きな変化は、前方に配備した部隊が開戦初日から行動できる態勢を重視している点だ。敵が短期間で軍事目標を達成し、既成事実を作るのを可能な限り阻止する狙いがある。

馬克氏によると、米軍が対テロ戦争を行っていた時期には、航空任務命令(ATO)の策定・運用サイクルが96時間に及ぶこともあった。

新たな指針は、迅速な攻撃能力を持つ敵に対して従来の手順をそのまま使えば、米軍の対応が遅れる恐れがあるとして、見直しの必要性を示している。

馬克氏は、米軍が従来の作戦手順を再検討し、空軍や海軍の展開が完了するのを待つのではなく、陸軍も紛争初期から行動できる態勢へと転換を進めていると分析した。

専門家「米軍の備えは台湾防衛の約束ではない」

米軍が有事への備えを進めるなか、こうした動きが米国による台湾防衛の約束を意味するのか、関心が集まっている。

台湾の国防安全研究院で戦略・資源研究所長を務める蘇紫雲氏は、大紀元の取材に対し、米国の台湾海峡政策を分析する際には、個別の文書や発言だけでなく、全体的な戦略から理解する必要があると述べた。

「米軍の新たな作戦指針が示しているのは、『戦略は曖昧、戦術は明確』という方針だ」

蘇氏によると、米国は台湾海峡で戦争が起きた場合に出兵して台湾を防衛すると明言しているわけではない。あくまで軍事的な準備を整えていることを示しており、軍事的な備えと正式な防衛の約束は別の問題だという。

蘇氏は「トランプ米大統領は習近平と親しい関係にあると語っているが、米国の官僚機構は軍事的な準備を進めている」と指摘した。

政治的な対話と軍事的な準備が並行して進むことで、中共当局は武力行使を判断する際に、米国がどう対応するかを予測しにくくなる。その影響は台湾海峡にとどまらず、東シナ海や南シナ海にも及び得る。

蘇氏は、中共にとって戦争での敗北は深刻な政治危機につながりかねないと指摘する。一方、戦争の代償が大きいからといって、中共当局が必ずしも武力行使を断念するとは限らない。

ただ、米軍がどのように対応するか分からない状況は、中共に軽率な軍事行動を思いとどまらせる要因になり得るとの見方を示した。

長距離攻撃だけでは不十分 地上部隊と補給体制も重視

新たな作戦指針は、前方配備だけでなく、陸軍の戦い方そのものにも新たな要求を示している。

部隊編成では、引き続き師団を主要な戦術行動の中心とし、旅団規模の部隊についても火力、防護能力、生存性を高める方針だ。

指針は、現代の大規模戦争では、小規模部隊を分散させた作戦や長距離攻撃だけでは十分ではないと強調した。

師団以上の部隊が情報収集、標的識別、長距離火力、後方支援を統合し、地上部隊が重要な地形や拠点を奪取・確保する必要がある。

陸軍の作戦は、相互に関連する四つの要素から成る。複数の作戦領域にまたがる戦力の統合、長距離攻撃の実施、地上部隊による敵への接近と撃破、そして長い戦線や継続的な脅威の下でも作戦を維持することだ。

武器や技術の面では、長距離精密攻撃能力、ドローン、AIを活用した意思決定支援、防空・ミサイル防衛能力の向上を求めている。通信網の改善も進め、敵による指揮系統や情報システムへの妨害を受けにくくする方針だ。

今回の指針には、ウクライナ戦争やガザ地区での地上戦から得られた教訓も反映されている。

米陸軍は、長距離攻撃によって敵の軍事システムを弱体化させることはできても、それだけですべての戦略目標を達成するのは難しいとみている。

地上部隊には引き続き、敵の防衛線を突破し、陣地を奪取・維持する能力が必要だ。

そのため、前方配備部隊の戦闘力を高めるだけでなく、弾薬の補給、装備の修理、指揮系統、輸送網が攻撃を受けても機能し続ける態勢を整える必要がある。

また、同盟国やパートナー国との共同訓練、基地の使用、作戦上の連携も強化する。

西太平洋地域では、米陸軍が戦前の部隊配置、地域内の後方支援、陸海空の連携を一層重視することになる。紛争初期に迅速に行動し、激しい戦闘が長期化した場合でも戦力を維持するためだ。

米軍が有事への備えを強化 台湾の自主防衛が課題に

新たな作戦指針は、前方配備部隊の即応能力を重視するとともに、米軍自身が抱える作戦上の弱点についても異例の詳しさで言及している。

馬克氏は、第1列島線内での補給・輸送能力の不足や、衛星通信への過度な依存といった問題が公に取り上げられた点に注目した。

こうした弱点は、米軍が激しい戦闘を長期間続けられるかどうかに直結するという。

また、核攻撃を受けた場合の対応が公開文書で取り上げられたことも、重要な変化だと指摘した。

例えば、グアムの空港が核攻撃を受け、72時間にわたって使用できなくなった場合、陸軍が作戦や後方支援をどう調整するかという想定だ。

馬克氏は「これは、陸軍に通常戦と核戦争の双方に対応できる能力を求めるものであり、中共が急速に増強している核戦力を米国が重視していることも示している」と語った。

一方、蘇紫雲氏は、米国が台湾有事への対応を明言していない以上、台湾社会は米軍が出兵するかどうかや、米大統領が支援に応じるかどうかを推測することに、安全保障を委ねるべきではないと警告した。

「台湾は、中共が攻めてくるのか、米国が助けてくれるのかということばかり考えるのをやめるべきだ。それは健全でも成熟した姿勢でもない」

蘇氏は、米国の政治家の発言を過度に気にすれば、根拠のない安心感につながりかねないと指摘する。

米国の台湾政策、軍事的な準備、実際の介入方法はそれぞれ異なる問題であり、台湾は外部からの支援を当然のものと考えてはならない。

台湾に本当に必要なのは、米国の意図を推測することではなく、自らの安全を守れるよう、国防力の強化を続けることだと強調した。

蘇氏は「台湾が本当にすべきことは、自らの安全を自らの手で守ることだ。自主防衛こそが何よりも重要だ」と語った。

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