中国臓器移植の闇 報告書が暴いた人権侵害の隠蔽構造

2026/10/28 更新: 2026/10/28

 「あなたが勇気を出して声を上げれば、次に行方不明になるのはあなただ」と、亡命した中国人の元医師が研究者に語った。

新しい報告書によると、中国の医師たちは、強制的な臓器摘出に直面しても被害者のために声を上げず、沈黙を守る傾向が強いという。これは、中国共産党(中共)政権が医療分野を厳しく統括しているためだ。

中国での臓器移植濫用停止ETAC国際ネットワーク(ETAC:The International Coalition to End Transplant Abuse in China)の調査によると、中国の移植監視機関、病院の倫理委員会、臓器調達機関、および専門団体はいずれも中共の下で党と国家の階層構造に組み込まれているため、中国国内における臓器移植の不正に対する独立したセーフガードは存在しないという。

この報告書は10月20日に発表された。独立した民衆法廷が大規模な人権侵害を認定してから7年が経つ現在も、国家主導の強制的な臓器摘出が続いていることを示すものであり、中国の移植システムを検証する一連の報告書の第一弾である。

報告書の著者であり中国の人権問題研究者であるサラ・クック氏は声明の中で、「中国当局が国際社会に対して表向きは独立している、あるいは『第三者』であると提示しているすべての主体は、実際には同じ党が管理するシステム内のひとつのノード(結節点)にすぎない」と述べた。

民主主義国の政党とは違い、中国共産党は党員(医療従事者を含む)に対し、党への絶対的な忠誠を要求する。一生涯にわたって党に尽くし、秘密を守り、「決して裏切らない」ことを誓うよう求めている。

「まさにこうした人々が、基本的に移植部門を運営しているのです」とクック氏は『エポックタイムズ』に語った。

システムの基本的な構造上、いかなる不正も外部から見抜くことは極めて困難である。

「完全に隠蔽される可能性がある」と彼女は述べた。

 

党委員会

中国では、病院の内部に中国共産党の委員会が組み込まれている。したがって、最高意思決定者は病院長や医療部長ではなく、人事、規律、組織の重大な決定に対する権限が臨床管理者よりも優先される「党書記」であると報告書は指摘している。

この政治的支配は個々の病院をはるかに超えて広がっている。報告書によれば、中国の主要な2つの医学専門団体である「中華医学会」や「中国医師協会」の内部にも党委員会が入り込んでいる。そのため、これらの団体は医療分野を「独立して監視」するどころか、国家が管理する組織と化している。

個人レベルでは、中国の医学生は西側と同様に「人間の苦しみを和らげる」ことを誓うが、その誓約には「祖国を愛する(党に従う)」ことも義務付けられていると報告書は指摘している。政治的な誓約が医療的な誓約よりも上位に置かれているのだ。

「医療という、生と死を日常的に扱い、過去の虐待や不透明さが問題視されている分野において、こうした秘密保持の誓約は一段と重い意味を持つ」と、クック氏は指摘している。

こうした国家主導の措置は組織的な沈黙を繰り返し強いており、最も顕著な例としては、中国当局者が李文亮医師によるCOVID-19パンデミックに関する初期の警告を抑え込んだことが挙げられる。報告書にはまた、2002年に骨盤を骨折した法輪功(ファルンゴン)学習者が病院に搬送された際、当局が医療スタッフに必要な治療施策の提供を禁じ、その存在を隠蔽するよう強要した事件についても詳述されている。

 

「形式的な儀礼(パフォーマンス)」

米国は、臓器の回収を調整し移植を円滑に進めるために、54の独立した非営利組織に依存している。中国にはそのような独立した機関は存在しない。

その代わり、中国の調達機関は国家承認された移植病院内の「内部組織」として機能しており、そのガバナンスは病院の指導体制、最終的には病院の党委員会に委ねられていると報告書は述べている。

国家レベルでは、移植部門は中国の国家臓器提供移植委員会(NODTC)によって監督されている。同委員会の一般公開されている最新の2016年の名簿を分析したところ、33人のメンバーのうち17人が中国共産党員であることが確認された。

報告書によると、17人のうち2人は中国最高峰の軍事機関である中央軍事委員会の後方保障部(兵站や医療などを支える部門)から選出されていた。

報告書は「軍の存在は、移植ガバナンスの最高レベルに中国人民解放軍が直接関与していることを浮き彫りにしている」と指摘している。

別の3人のメンバーは中国赤十字会から選出されていた。

クック氏によれば、「赤十字」という名前は独立組織であるかのような誤解を与えるが、中国赤十字会は国家の監督下にある社会組織にすぎないと指摘する。ジュネーブに本部を置く人道支援組織「国際赤十字委員会」によって管理されているわけではないのだ。

報告書はまた、病院倫理委員会の役割についても疑問視し、メンバーの公表不足や実務上のハードルから、審査プロセスは「強力なセーフガードというよりも、形式的な儀礼(パフォーマンス)」として機能していることが示唆されると指摘している。

報告書には次のように記されている。「中国当局者が国際社会に対し『人権侵害はもはや起きていない』と保証するとき、その言葉を発するルート自体が問題である。なぜなら、その保証は、そもそも人権侵害を指示し、隠蔽し、そこから利益を得ていたはずの同じ支配体制(階層構造)の中から発せられているからだ」

クック氏は、それを米国の状況と対比させた。米国では、一部の臓器調達グループが脳死の基準を満たさずに臓器を採取しているという懸念が生じた際、医療従事者が問題を暴露し、連邦政府の注意を喚起した。

中国では、懸念を提起する医師に対して深刻な結果が待ち受けている。

「自分自身があえて声を上げれば、次に行方不明になるのはあなただ」と、遼寧省から亡命した元内科医は研究者に語った。

2026年7月21日、ニュージーランドのウェリントンで行われた集会で、中国における強制臓器摘出への意識を高め、その終結を求めるため、活動家たちが白衣を着て再現劇を行った(Echo Wang/The Epoch times)

 

「囚われたドナー集団の搾取」

報告書は、中国共産党員でもある移植外科医や移植センター長の確認された事例を19件特定したが、この数字が網羅的なものではないことを強調している。

報告書によると、確認された関係者のうち温浩と楊毅寧の2人は、米国がウイグル族へのジェノサイドを非難する新疆ウイグル自治区に拠点を置いている。彼らの勤務先は、「新疆の囚われたドナー集団を搾取する上で、最も好都合な立場にある」機関だと報告書は指摘している。

特定された当局者のうちさらに4人は、「法輪功に対する最も徹底的かつ持続的な迫害」で知られる主要な病院に勤務している。

「法輪大法」とも呼ばれる法輪功は、「真・善・忍」の原則に基づく道徳的な教えと、瞑想などの鍛錬を特徴とするスピリチュアルな修練法である。

中共は1999年に法輪功への迫害を開始し、何百万人もの人々が恣意的な拘束、拷問、強制労働、その他の虐待の対象となってきた。

2019年、ロンドンを拠点とする中国に関する独立法廷(チャイナ・トリビュナル:China Tribunal)は、1年間の調査を実施した。その結果、中共政権が長年にわたり良心の囚人から強制的な臓器摘出を行ってきたと結論づけ、その主な被害者が法輪功学習者であると指摘している。

注目すべき事例の一つとして、報告書は、浙江省の著名な移植外科医であり反法輪功組織の指導者でもある鄭樹森の事例を取り上げ、「中国の移植部門では医療の現場と党の政治組織が一体化している」と指摘する。多くの移植病院で、上層部は「党組織の上役に対してのみ責任を負う」人物たちで固められている。

報告書は外国政府に対し、臓器密売に関与した個人に対する制裁やビザ発給制限を可能にする法律を可決するよう求めている。また、民主主義国家に対し、対象を絞った制裁の適用、中国から訪れる中国人移植医師の中国共産党所属歴の審査、そして内部告発者の支援を行うよう呼びかけている。

Eva Fu
エポックタイムズのライター。ニューヨークを拠点に、米国政治、米中関係、信教の自由、人権問題について執筆を行う。
台湾在住のジャーナリスト。米国、中国、台湾のニュースを担当。台湾の国立清華大学で材料工学の修士号を取得。
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