中国中央政府の貧困救済基金が約16億元(約280億円)をかけて建設した、中国中部の貧困地域の道路が、ずさんな工事であったことが最近、明らかになった。
中国では、いまだ広範囲に貧困地域が残っている。世界銀行のデータによると、中国の人口の36%、約4億9300万人は1日の生活費5.5ドル(500~600円)程度で暮らしている。中国統計局は、1日当たり10元(160~170円)未満で暮らす人々が4300万人以上いるという。
習近平・中国国家主席は「小康社会(ややゆとりある社会)」をスローガンとし、2020年までに貧困を完全に撲滅することを政策目標の一つに掲げた。そのため中央政府は、貧困にあえぐ地域の行政を支援するため、貧困救済基金を捻出している。
約20キロに及ぶ折達高速道路は、甘粛省の貧困にあえぐ臨夏市と蘭州市の近隣地域を結ぶ現地政府によるインフラ計画だ。2009年8月に建設が始まり、2011年10月に完成した。
中国国営放送・中国中央テレビ(CCTV)は、道路の完成後、多くの住民が品質の悪さを訴えていたと4月1日に報じた。
昨年、この高速道路は崩壊し、水没した。地方当局が調査を行ったところ、崩落箇所とは別に、高速道路の一部であるトンネルにも、重大な安全上の問題のあることが明らかになった。企画上は2層の鉄製のはずだが、単層に置き換えられていたという。
CCTVによると、現地政府当局はトンネルを一時閉鎖し、改修を要請した。甘粛省の高速道路管理局は2017年10月~11月まで改修工事を行うとした。しかし地元住民によると、トンネルは一度も閉鎖されず、改修もされなかったとCCTVの取材に述べた。
トンネル内部の道路と壁には1センチほどの亀裂が数カ所あるが、埋められていないと住民は主張する。CCTVによると、亀裂カ所は単に「上塗り」しただけだったという。
一連の問題は、いわゆる中央政府からの貧困救済金の横領や不正な請求水増しを行う、地方政府の腐敗があると専門家は指摘する。
北京に拠点を置く月刊誌『百姓』の黄良天・元編集長は、4月4日に衛星放送・新唐人テレビ(NTD)の取材に答えた。同誌は、雑誌名の通り、一般市民の関心が高いテーマを取り上げている。
「地方政府もお金を多く受け取りたいし、請負業者も取り分が欲しい。中国では非常によくあることだ。実際、中国のどのインフラプロジェクトにも大なり小なりの腐敗がある」と黄氏は述べた。
現在、甘粛省道路局の副局長や高速道路建設担当者ら幹部3人が職務停止となり、検察の捜査を受けている。
中国の時事問題評論家の田奇莊氏はNTDの取材に対して、中国共産党政府が近年打ち出した「精準」(ピンポイントに合わせた)貧困救済計画では、市民を実際に支援するのは困難であると批判した。
「中央政府でさえ透明性はなく、計画の管理もきちんとしていない。貧困救済資金はどこで使われているのか、インフラ計画は正しく実施されているのか。チェック体制はまったくない」
元雑誌編集長の黄氏は、多くの貧困地域の住民は、地方政府のずさんな工事計画により、河川や山部などが汚染され、土地が強制収容されるなど、被害を被っていると指摘する。「地方政府には、貧困を救済する気はないのだ。(資金を)自分の懐に入れたいだけだ」と黄氏は述べた。
(翻訳編集・佐渡道世)
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