中国山東省威海市にある集合住宅地(「全球候鳥度假地」)の6階建てマンションで4月7日、1階を除く全階のバルコニーが一斉に崩落した。
建設からわずか4年でこの惨状だ。「こんな家に誰が住めるか」と不安の声が上がって、住民は「地震かと思った」と振り返っており、現場の映像では、落下したバルコニーの断面に鉄筋は見当たらず、コンクリートの塊がそのまま剥がれ落ちたような状況だった。
住民らは「明白にして完全な手抜き工事だ」と怒りをあらわに。今回、被害のあった建物は2021年に完成し、すでに内装まで整っていたが、幸いなことに住んでいた者は「まだ」いなかったため、負傷者は出ていない。
責任はどこに?
もはや中国の「名物」ともいえるこうした手抜き工事(おから工事)。専門家や市民の間では、工事現場での材料節約や基準無視がまかり通っていると指摘され、建設業者は「短期間に問題が出なければよい」という発想でコスト削減を優先し、建物の耐久性や安全性は二の次になっていると言う。
また、施工だけでなく、施工後の検査・監督の形骸化にも問題があるとされる。検査担当者に賄賂を贈り、帳簿上の手続きを通せば、品質に難があっても表沙汰にはならない構図があるのだ。
こうした「構造的腐敗」は単なる住宅の崩壊にとどまらず、行政機関の無責任体質、報道の不自由、そして「権力と金こそが正義」とされる社会風潮の象徴とも言える。
中国国内のネット上でも「バルコニーはのりで貼り付けたのか」「地球の引力が強すぎたのだろうか」「風が強かったのが原因かもな」といった皮肉混じりの投稿が溢れる中、「なぜ中国はこんな不安全な住宅があふれているのか」という避けて通れない問いに誰もが苦しみにもがいている。
今回崩れたのはバルコニーだけではない――中国社会全体の「信頼」そのものが、音を立てて崩れたのかもしれない。
(中国の手抜き工事の実態)
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