国内外の機密情報の収集などを行う英秘密情報部(MI6)のムーア長官は11月30日、中国共産党は世界の平和に深刻な挑戦をもたらしており、同機関にとって「唯一かつ最大の優先事項」だと警戒感を示した。さらに価値観を共有しない中国に対し、英国は「断固とした姿勢を示す必要がある」と訴えた。
英シンクタンク国際戦略研究所(IISS)で演説したムーア氏は、中国、ロシア、イラン、国際テロ組織の脅威を機密情報部門の懸念事項である「ビッグ4」と表現した。このなかで、スパイが英国やその同盟国に対して大規模な諜報活動を展開しする中国がもっとも重大な課題だと強調した。
演説では台湾に対する中国の威圧的な行動にも言及し、紛争の可能性を示唆した。「中国共産党は、安全保障を理由に断固とした行動を一段と好むようになっている」と述べ「『韜光養晦(とうこうようかい、意図を隠して実力を磨き時を待つ戦術)』という鄧小平時代は終わった」と指摘した。
ムーア氏は中国が国家安全保障の名のもとに香港人の権利や自由を奪うなど、その監視体制が新疆ウイグル自治区で100万人のウイグル人への人権侵害につながっているとの見解も示した。「支配と監視の技術が中国から他国の政府に輸出されている。世界中に権威主義的な支配の網を広げている」と懸念を表明した。
さらにムーア氏は、中国と取引する各国に警戒を呼びかけた。「独立した司法機関に頼ることができない関係に依存することで『債務の罠』に陥らせたり、重要な情報を抜き取られて政治的に脆弱な立場に立たされたりする」と語った。
これに先立ち、ムーア氏はBBC番組「トゥデイ」のインタビューで、国や個人を「窮地に追い込む」ため、中国が「債務の罠」や「データの罠」を仕掛けていると指摘。債務の返済に窮した国では、中国が債権の代償として港湾利用権を取得した事例を挙げた。さらに、「他国からの重要なデータへのアクセスを許すと、時間の経過とともに主権が奪われ、自国で制御できなくなるリスクがある」と述べた。
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