「炭水化物は有害である」「遅い時間に食べると太る」などと言われますが、これらの通説は、果たしてどれほど正しいでしょうか。
ここでは、食の全般に関するいくつかの疑問を取り上げ、お答えします。
炭水化物は本当に「有害」ですか?
三大栄養素の一つである炭水化物は、体にエネルギーと各種の栄養素を提供する不可欠な物質です。
しかし一部の炭水化物、とくに精製された炭水化物を過剰に摂取すると、確かに肥満を引き起こし、心血管系疾患のリスクを増大させる可能性があります。
また、炭水化物は血糖値の上昇に直接的な影響を及ぼすため、糖尿病患者は、炭水化物を含む食物を摂取する際には、医師や栄養士の指導に従うなどの注意が必要です。
では、炭水化物だけを問題視して、摂取量を減らすべきなのでしょうか。
そういうことではありません。炭水化物も含めてどんな食物も、適度な「量」および適切な「種類」を、ひろく食べることが肝要なのです。
炭水化物は体の主要なエネルギー源で、特に脳と神経系にエネルギーを供給します。
脳の重さは体重の約2%ですが、摂取したエネルギーの約20%を消費する器官です。これらのエネルギーは、主に炭水化物から作られるブドウ糖から得ています。
もしも血液中のブドウ糖が少なく、脳に十分なエネルギーが供給されないと、めまい、イライラ感、疲労感、頭痛、集中力の低下などの症状が現れます。ひどい場合は低血糖昏睡に至り、命の危険に直面することがあるのです。
米国の食事指針では、1日に摂取する総カロリーのうち、炭水化物からの摂取量を45%~65%にするよう推奨しています。仮に、人が1日に約2200キロカロリーを摂取する場合、炭水化物からは990~1430キロカロリー、つまり247~357gを摂取することになります。
「ケトン食ダイエット」とは?
炭水化物が不足すると、体は脂肪をエネルギーとして消費するように「切り替え」をします。減量を目的とする、いわゆるケトン食ダイエットは、この性質を利用しています。
このダイエット法は炭水化物の摂取を厳しく制限し、主なエネルギーを脂肪から得ることを提唱するものです。
本来、ケトン食自体はダイエットのために発明されたものではありません。もともとは1924年に米メイヨー・クリニックのラッセル・ワイルダー医師が考案したもので、児童の耐薬性てんかんを治療するための食事療法だったのです。
ケトン食ダイエットは体重を減らすことができますが、方法を誤ると、新たな健康問題を引き起こす可能性もあるのです。
例えば、シカゴ大学病院のウェブサイトに掲載された文章によると、「ケトン食は体重を減らすことができるという研究はまだ十分ではない。飽和脂肪を摂りすぎると心血管疾患のリスクを増加させる」と警告します。
そのほか、ケトン食は低血圧、腎臓結石、便秘、栄養欠乏などの症状を引き起こしやすくなることが指摘されています。
また、ケトン食ダイエットは炭水化物の摂取を厳格に制限するため、人が通常の食事を通じて食物繊維や微量栄養素を摂ることに影響を与えます。
(次稿に続く)
(翻訳編集・鳥飼聡)
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