米 露ウと協議 黒海航行とエネルギー施設の保護で合意

2025/03/26 更新: 2025/03/26

アメリカ政府は3月23日から25日にかけて、サウジアラビアでロシアおよびウクライナの代表団とそれぞれ会談を行い、黒海での安全航行やエネルギー施設の保護に関する複数の合意に達した。ホワイトハウスは25日、両国との協議に関する声明を発表した。

米露会談の内容

24日に行われた米露会談は約12時間に及び、主に技術的な協議が行われた。ホワイトハウスによると、以下の点で合意が得られた。

  • 黒海における航行の安全を確保し、武力行使を避け、商業船が軍事目的に利用されることを防止する。
  • アメリカはロシアの農産物や肥料の輸出再開を支援し、海上輸送コストの削減や支払いに関する障壁の解消にも取り組む。
  • 黒海における安全確保や、ロシアおよびウクライナ双方のエネルギーインフラへの攻撃を回避する。
  • エネルギーや海上輸送に関する協定の実施を支援するため、第三国の仲介を歓迎する。
  • 持続的な平和の実現に向けた取り組みを継続する。

米ウ会談の内容

同様にアメリカはウクライナとも会談を行い、以下の点で合意がなされた:

  • 黒海での航行の安全確保、武力行使の回避、商業船の軍事転用の防止。
  • 戦争捕虜の交換や拘束された民間人の解放、国外に移送されたウクライナの子どもたちの帰還支援を継続する。
  • ロシアおよびウクライナのエネルギー施設への攻撃を禁止する措置を策定。
  • エネルギー・海事協定の履行における第三国の仲介を歓迎する。
  • 平和の実現に向けた協議を今後も継続する。

ホワイトハウスはまた、トランプ大統領の意向として「戦闘行為の即時停止が恒久的な平和に向けた第一歩である」と、双方に対して改めて伝えたと明らかにした。今後もサウジアラビアでの合意内容を基に、アメリカは和平実現に向けた対話を促進していく方針だ。

なお、今回の協議ではロシアとウクライナがアメリカと個別に合意を交わしたが、両国間での直接的な交渉は行われていない。

ロシア「米露会談の結果を分析中」 次回協議は未定

ロシア大統領府のドミトリー・ペスコフ報道官は26日、モスクワで開かれた記者会見で、アメリカとロシアによる2回目の会談について「現在、結果を分析している」と述べた。24日に行われた会談は技術的なものであり、すべての内容は公開されないと説明した。次回の米露会談については「具体的な日程は決まっていない」としている。

また、プーチン大統領とトランプ大統領との電話会談などの予定は「現時点でない」としながらも、「近く実現する可能性がある」との見通しを示した。

ロシア連邦院(上院)外交委員会のグリゴリー・カラシン委員長も26日、ロシア国営メディアに対し、今回の米露会談は「有益だった」と述べた。国営タス通信によると、カラシン氏は「詳細かつ複雑な内容だったが、双方にとって非常に有意義な対話だった」と語っている。今後のロシア・ウクライナ戦争をめぐる交渉には、国連や各国を含む国際社会の関与が必要になるとも強調した。

アメリカ政府は、会談内容について現時点では公式なコメントを出していない。

黒海での停戦合意に向け ロシアは「条件付きで合意の用意」

今回の会談の主なテーマは、黒海での停戦と航行の安全確保だった。2022年7月には、国連とトルコの仲介により、ロシアとウクライナが「黒海穀物イニシアティブ」に署名し、農産物の輸出ルートとしての黒海の安全を確保する取り組みが始まったが、2023年にはロシアの離脱により失効した。

この合意の再開をめぐって、ロシア側にも前向きな姿勢がある一方、一定の条件が求められている。ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相は26日、前日の米露会談で黒海の航行安全について議論したことを明らかにし、「新たな合意に応じる用意はあるが、厳格な条件が必要だ」と述べた。

その条件として、アメリカがウクライナのゼレンスキー大統領に対し、黒海に関する合意を順守させるよう「明確な保証」を与えることが不可欠だと主張。「ワシントンの影響力が不可欠であり、民間インフラへの攻撃停止や、非軍事的なエネルギー施設の保護などについて進展が期待される」と語った。

また、ロシアとしては、武器の輸送を防ぐために、航行する船舶の検査を求めている。加えて、自国の農産物や化学肥料の輸出において障害が続いていることにも不満を示した。

ラブロフ外相の発言は、ロシアが黒海停戦合意に向け、アメリカに対してゼレンスキー政権へのさらなる圧力を求めていることを示している。アメリカ側は、黒海での停戦が今後の全面的な停戦に向けた重要な一歩と位置づけている。

協議は継続へ

一方、アメリカはロシアとの協議と並行して、ウクライナとの会談も複数回実施している。ウクライナのウメロフ国防省によれば、サウジアラビアでの追加協議はすでに終了したという。

アメリカとウクライナは23日にも会談を行っており、ウメロフ氏の事務所は、25日にも両国の高官による協議が行われたと発表している。

張婷
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