米議会下院の超党派の「トム・ラントス人権委員会」は12日、中国共産党による強制臓器摘出に関するオンライン公聴会を開催した。同委員会の共同議長を務めるクリス・スミス議員は、同政権が良心の囚人を臓器摘出のために殺害することは「大量虐殺の手段」であると強い言葉で非難した。
スミス氏は、中国共産党は「国家の敵とみなした人々を、移植の必要性に応じて臓器提供のために殺害している」と指摘。国家が「好ましくない」と判断した少数民族らを淘汰するための大量虐殺の手段でもある」と発言した。
2019年にイギリスで開催された独立民衆法廷「中国民衆法廷」は、中国共産党の一党支配に置かれている中国本土では、長年にわたり移植手術を目的とした「強制的な臓器摘出が、相当な規模で行われている」と結論を下した。中国の伝統的な気功修煉法・法輪功の学習者が主要な供給源であるとしている。
スミス氏は、昨年提出した「臓器強制摘出停止法案(Stop Forced Organ Harvesting Act)」にも言及し、法案可決の必要性を訴えた。法案には、強制臓器摘出に関与またはその他の方法で支援する外国高官および団体に制裁を加えるほか、強制臓器摘出に関わった組織への手術器具の輸出を禁止する内容が盛り込まれている。
生々しい証言
公聴会では、共産主義犠牲者記念財団の中国研究員で「臓器収奪(The Slaughter)」の著者イーサン・ガットマン氏が、中国の強制収容所に収監された被害者にインタビューした際の生々しい証言について語った。
「血液検査など収容所での健康診断を行ったあと、強制臓器摘出を目的としたクロスマッチ試験が行われる」とガットマン氏。目撃者によると、その中にはピンクやオレンジの色のブレスレットやベストを強制的に着用させられた者もいたという。ガットマン氏は「健康診断のおよそ1週間後、それらの色分けされた人々は夜中に姿を消した」と述べた。
これらの失踪した人々は「中国医療機関に(臓器移植のための)臓器が理想的な年齢とされる」28歳前後が大半だという。
公聴会では、1994年に実際に囚人から臓器を摘出したエンバー・トフティ氏も証言した。新疆ウイグル自治区で外科医だったトフティ氏は銃殺刑現場で、心臓がある左胸ではない、右胸を撃たれた囚人から臓器を摘出するよう命じられた際、患者の心臓まだ鼓動していたという。
「手術は30分から40分ほどで終わった。外科医長は嬉しそうに臓器を奇妙な形の箱に入れて、『今日のことは忘れろ』と口止めされた」とトフティ氏は後悔の念を語った。
先月には世界的に権威のある医学雑誌、米国移植学会誌が中国の臓器移植に関する報告書を発表。中国の臓器移植に関する12万件以上の論文を調査し、中国の移植外科医が脳死判定に必要な検査を行わずに臓器を強制的に摘出したと結論付けた。
報告書の共著者マシュー・ロバートソン氏は公聴会で「わかりやすく言えば、囚人だったドナーは手術時にはまだ生きていて、心臓を取り出す過程で外科医に殺されたことを示している」と証言している。
行動の呼びかけ
公聴会では、国際社会と医療機関のさらなる行動を求める声も上がった。
臓器強制摘出停止法案の共同提案者であるガス・ビリラキス下院議員は「本日の公聴会のテーマである臓器狩りは、あまりにも長い間、国際社会で見過ごされてきた」「米国と同盟国は、基本的人権とすべての人々の安全を守るために、強く揺るぎないメッセージを送る必要がある」と述べた。
5日には欧州議会が中国共産党による強制臓器摘出について「深刻な懸念」を表明する決議を採択している。
欧州連合(EU)の外交安全保障上級代表(外相)のジョセップ・ボレル氏は「人権の尊重はオプションではない。臓器提供や移植という医学的・倫理的に難しい分野を含めたすべての領域で必要条件である」と発言した。
いっぽう、医学会は中国でのビジネスチャンスを見込み、同問題についてはほとんど沈黙を貫いてきたと前出のガットマン氏は指摘する。
「この大惨事は、中国(共産党)が作り出した。しかし、この10年間、中国で経済的利益を得て、すべてが正常であるかのように帰国できると考えた一握りの西洋人医師たちによって、この惨事が継続的に引き起こされている」と述べた。
元米国務省次官補のロバート・ デストロ氏は、議会が「財政権を使い、官僚や経済界に説明責任を求める必要がある」と具体的な行動を起こすよう訴えた。
(山中蓮夏)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。