米ペロシ下院議長の訪台、専門家「中国が黙認する可能性」

2022/08/02 更新: 2022/08/02

ナンシー・ペロシ米下院議長が台湾を訪問する見通しだと、米CNNが1日、当局者の話として報じた。中国政府は強く反発するいっぽう、同氏の訪台に対する批判的な言論を検閲している。専門家は、中国共産党が今年秋の党大会を無事に開催することに集中したい考えから、ペロシ氏の訪台を黙認する可能性が高いと指摘した。

中国外務省の趙立堅報道官は1日の会見で、中国軍は「座視しない」と強く警告した。台湾海峡を管轄する中国軍の東部戦区は7月31日と8月1日、ネット上で軍事演習の動画を投稿し、威嚇を強めた。

中国共産党系「環球時報」の胡錫進・前編集長はペロシ氏が訪台すれば「米機を撃墜する」と過激な言論を繰り広げ、衆目を集めた。いっぽう、1日、SNS微博(ウェイボー)では、「台湾」は検索ランキング50位に入っておらず、中国当局がネット検閲を行ったとみられる。

時事評論家の方文祥氏は米ラジオ・フリー・アジア(RFA)に対し、「中国は今、台湾やペロシ氏への批判が過熱化することを警戒している」と指摘した。

「うまく対応できなければ、国内の批判の矛先が中国政府自身に向けられるに違いない」

ペロシ議長側は、台湾を訪問するかを明言していない。

中国政府系メディア「人民網」や「新華網」は、外務省の趙報道官の発言を報じることにとどまり、評論記事や主張を掲載しておらず沈黙している。

清華大学政治学部の元講師である呉強氏は、「中国政府があいまいな態度を取っており、その対応も毎日変化している」とした。

呉氏は、中国共産党政権が「秋に開催される党大会を前に、愛国主義を利用することに慎重になっているのではないか」と分析した。

同氏は、中国政府は米中対立の先鋭化に「切り札を多く持っていない」とし、「ペロシ氏の台湾訪問を巡り、中国は当初の反発から黙認へと態度を変えるだろう」とし、党大会前に国内の政治情勢に混乱が生じないよう、中国が警戒しているとの見方を示した。

呉氏は、台湾問題に関して米中間の緊張感は増しているが、「米中のどちらも軍事行動を避けたい思いがある」とした。

国際関係学者の宋涛氏も、「米中首脳が先週電話会談を行ったばかりで、中国は今、台湾問題より国内政局の安定化に取り組みたい。今秋の党大会の後に、新指導部は台湾問題に関して新たな方針を打ち出すだろう」とRFAに語った。

張哲
張哲
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