欧州人権裁判所(ECHR)は1月31日、ロシアが法輪功に関する資料を禁止したことは、欧州人権条約が定める表現の自由の侵害だと判断、原告に対して賠償金と訴訟費用の計1万596ユーロを支払うよう命じた。
ロシア南西部クラスノダールの地方裁判所は2008年8月、北京オリンピックの開催時期に法輪功の書籍『轉法輪』のほか、中国共産党による強制臓器摘出に関する調査報告書、同党による人権弾圧への抗議活動を呼びかける資料、法輪功に関する資料を「過激派」に指定、禁止令を出した。
法輪功は「真・善・忍」を理念とする中国の伝統的な修煉法。1992年に伝え出されてからは急速に人気を博したが、これを脅威とみなした当時の中国国家主席・江沢民が1999年7月に弾圧政策を実施。現在でも学習者は不当な投獄や拷問、臓器収奪の犠牲者となっている。
判決は、ロシアが法輪功資料の出版と普及を禁止したことは「表現の自由の権利に対する『公的機関による干渉』」だと指摘。出版物の文章について法的分析を行わず、「資料を広めることによる損害を立証していない」として欧州人権条約違反と判断した。
ロシアはウクライナ戦争のさなか、昨年3月中旬にECHRを含む欧州評議会を脱退、9月には正式に欧州人権条約からも離脱している。しかし、原告の訴状は2012年に提出されていたことから、欧州評議会閣僚委員会の評価対象になった。
ECHRの判決を受けて、法輪大法情報センターのリーバイ・ブラウデ事務局長は「中国共産党と協力しても決して上手くはいかない」「ロシア当局が軌道修正し、信教の自由を抑圧する中国共産党の言いなりにならないよう望む」とエポックタイムズの取材に答えた。
カナダの人権弁護士デービッド・マタス氏も「ロシアは、中国共産党が臓器収奪のため多くの法輪功学習者を殺害したとの報道を抑圧した」と非難。その上でECHRはこうした「ロシアと中国政府の狂気に正気の声を上げた」と評した。
ロシアは2021年7月にもハカシア地方の法輪功学習者を『過激派』と決めつけ抑圧。2022年11月には、ロシア中部のメジュドゥレチェンスク市の検察庁が複数の法輪功出版物の禁止を求める訴えを起こした。12月に原告側に有利な判決が出たが、検察は今年2月2日に控訴、ケメロヴォ地方裁判所での審理は3月2日に予定されている。
ロシアの法輪功出版物規制について、米国務省も以前、基本的人権と自由を抑圧する「過激派指定の誤用」をやめるよう声明を出した。プライス報道官の署名で「私たちは法輪功学習者や他の宗教少数派を含む、すべての信仰の自由の権利を尊重するよう、ロシアに呼びかける」と記した。
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