氷山に衝突して海底に沈没した豪華客船タイタニック号を探索するツアーを運営していた「オーシャンゲート」の最高経営責任者(CEO)で、潜水艇の操縦士として乗っていた男性の妻がタイタニック号で亡くなった夫婦の子孫であること分かった。
米ニューヨーク・タイムズの21日付けの報道によれば、オーシャンゲートのストックトン・ラッシュCEOの妻は、111年前に沈没した豪華客船タイタニック号の乗客イジドー・ストラウスさんと妻のアイダさんの曾孫にあたる。イジドーさんは米下院議員を務めたほか、百貨店「メイシーズ」の共同オーナーだった。
2人ともタイタニック号のファーストクラスの乗客だったが、女性や子供を優先するため救命ボートに乗ることを拒否し、沈みゆく船に残ったことで知られている。
「あなたが行くところに私も行く」
国立公文書館によると、1912年4月14日の夜、タイタニック号が氷山に衝突した際、夫婦は救命ボート8番に誘導された。しかし老齢のイジドーさんが救命ボートに乗ることを拒否。妻のアイダさんも「あなたが行くところに私も行く」と、40年以上連れ添った夫と船に残ることを決めたという。
救命ボートを見送る際には、一緒にタイタニック号に乗船していたメイドのエレンさんに「もう使うことはない」と毛皮コートを渡した。夫婦が最後に目撃されたのは、海に流される前、デッキで手をつないで寄り添っているところだったと伝えられている。
イジドーさんの遺体は後に発見され、ニューヨークのウッドローン墓地に埋葬されたものの、アイダさんの遺体は見つかっていない。
5人の生存は絶望的
米沿岸警備隊は22日、5人が乗船し行方不明になっている観光用米潜水艇「タイタン」について、破片を海底で発見したと発表した。
見つかったのは潜水艇の大きな破片5つと小さな破片2つで、タイタニック号の残骸から1600フィートの地点で発見されたという。潜水艇は深海の水圧によって「壊滅的な損壊」を起こしたとされる。
観光用米潜水艇「タイタン」のツアーを企画していたオーシャンゲート社も同日、「5人全員が死亡した可能性が高い」と明らかにした。
同社は声明で「彼らは真の探検家であり、冒険精神と世界の海洋を探検し保護することへの深い情熱を共有していた。この悲劇のなか、私たちの心はこの5人の魂とそのご家族の皆さんとともにある」「この喪失感で疲れ果て、深く悲しんでいる献身的な従業員にとって、今は非常に悲しい時だ」と述べた。
潜水艇にはオーシャン・ゲートのストックトン・ラッシュCEOのほか、英富豪のハミッシュ・ハーディング氏、フランス人の探検家ポールアンリ・ナルジョレ氏、パキスタン出身で英国籍の実業家シャーザダ・ダウード氏とその息子が乗っていたとされる。
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