最新の経済指標によれば、中国経済は厳しい状況にあることが明らかになっている。第2四半期の国内総生産(GDP)は、公式発表や非公式の予測を下回る結果となった。
すべてのセクターが停滞しているが、特に一部のセクターはさらに悪い状況にある。一方で、中国経済を急速に回復させるための手段はほとんどない。
中国の公式統計によると、今年第1四半期は前年同期比で6.3%の実質成長率が記録された。高い成長率に見えるかもしれないが、実際には2022年初頭の経済がいかに低迷していたかを示すものだ。第2四半期の実質GDPは第1四半期の数字をわずか0.8%上回るにとどまり、第1四半期の2.2%の成長率に比べて大きく減速した。
1~3月にかけての短期間の急増は、富裕層を中心に個人消費が急増したことを示している。
中国政府は終わりの見えないロックダウン(都市封鎖)とゼロコロナ政策を断念したが、消費者支出の増加にもかかわらず、統計の裏にある証拠は、明るい見通しが誤っていることを示していた。最近の数字は、経済がいかに低迷していたかを示すものとなっている。
消費者信頼感の低下
6月の個人消費の数字が、最近の景気の弱さを浮き彫りしている。5月の消費データはコロナ流行後の好況を反映して、12.7%の伸びを見せたが、6月はわずか3.1%増にとどまった。
不動産価格の下落が報じられる中で、中国の世帯主が自信を失っている兆候が他にも見られることや、ロックダウンにより、労働者が安定収入を得る機会が疑問視されていることが背景にある。中国の家庭では、お金を使う代わりに貯金する傾向にあり、貯蓄預金は2023年上半期に約18%増加した。
消費者信頼感の低水準は、北京当局の過去の政策と大いに関係しているように思われる。見当違いで過激なコロナ対策は、最も裕福な中国人を除くすべての人々の反感を助長した。
不動産価格の下落も過去の計画ミスを反映している。当局は不動産の崩壊を民間の開発業者のせいにしようとしており、恒大集団など多くの開発業者が倒産している。
これらの企業の経営陣が慎重であったとは言い難いが、不動産問題の大部分と倒産した開発業者の問題は、長年に渡り、北京が住宅用不動産開発に取り込んできたことに起因している。
2021年の時点では、この部門は経済の25%を占めるまでに膨れ上がっていた。経済学者はこれが持続不可能な水準だと考えていた。市場のシグナルからではなく、中央の計画担当者が選んだ場所で不動産が開発された結果、過剰開発は不動産価格の下落に直接繋がっていった。
民間部門
中国政府は企業投資の不足に対して、自らの政策や言動が影響している可能性があると認識している。習近平国家主席は最近まで、中国がマルクス主義の原則を再び取り戻す必要があるとの考えを示していた。
習氏と中国共産党(中共)当局者は、民間企業やその所有者を厳しく攻撃し、利益や市場シグナルだけを追求する企業は悪であると示唆してきた。
このような発言や姿勢が、民間企業の経営者や経営陣を失望させ、事業拡大や雇用、投資への意欲が低下する要因になっている可能性がある。
確実な証拠はないが、この状況が多くの人々に、習氏の支配から逃れて海外に資産を移す方向に動かす誘因となっているかもしれない。
最近では、経済の弱さを認識した習氏は、企業家を「わが同胞」と呼び、姿勢を一変した。しかし、現在のところ企業家たちの警戒感は消えていないようだ。過去6か月間、民間企業の投資支出は実際に縮小しており、そのペースは月々で加速しているようだ。
中国経済のもう一つの大きな足かせである対外貿易は、中国政府の政策とは直接の関係が薄い。欧州は不況に陥っており、米国は成長しているものの経済は堅調とは言えない状況だ。
欧米各国の購買力が低下し、日本経済も低迷しているため、中国の主要産業である輸出も第1四半期を通して減少し、6月だけで約12.4%減少した。
中共の政策立案者たちは長年にわたり、中国経済の圧倒的な輸出依存からの転換について議論してきた。しかし、彼らは具体的な行動に移すことはない。
習氏の発言であれ、中国政府の中で地位の低い人々の発言であれ、この問題に対する取り組みは主にレトリックにとどまり、具体的な政策にはあまり反映されていないようだ。
もし中国が行動を起こしていたら、中国は現在のように海外の経済情勢に影響されず、より安定していた可能性がある。
景気循環調整
この期待外れの景気減速で、中国内外から景気刺激策の強化を求める声が高まっている。中国人民銀行(PBOC)は複数回の利下げを行い、PBOCの劉国強副総裁は更なる「反循環的調節」を行うと表明している。
中国政府は景気刺激策の標準的な手段であるインフラ投資にも目を向けている。2022年に公共投資支出が急増し、1~6月の間に8.1%増加した。
しかしながら、これらの取り組みが具体的にどれほどの成果をもたらすかは不透明だ。中国の消費者と企業の間に信頼感が欠如していることを考慮すると、電気自動車などを対象とした税制優遇措置や借入金利の引き下げが、より多くの経済活動を促進することができるかは不確実である。
また、過去のインフラ投資の試みが経済的な勢いを生み出せなかったこともあり、同じ提案に対してもどのような結果が得られるかは疑問だ。
責任がどこにあるにせよ、中共がかつてのような巨大な経済力を持っていないことは明らかだ。党がこれを認めるか否かにかかわらず、中国は政府の掲げる5%の成長目標を達成できない可能性が高いとされている。
今後の成長は、中国と世界がこれまで経験してきた成長率よりも遅いペースで進むだろう。その多くは、中国政府が採用してきた中央計画経済の失敗の構造に起因している。この問題は近年ますます顕著になっている。
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