米国とラテンアメリカの主要港で進む中国の影響力拡大 専門家が懸念表明

2025/02/12 更新: 2025/02/15

専門家たちは、アメリカ議会の下部委員会で証言し、中国企業が西半球の港湾、特に5つの主要なアメリカの港湾に権益を有しており、それが安全保障上の懸念を引き起こしていると述べた。

2月11日に開催された国土安全保障省の運輸・海上安全小委員会での証言では、中国が特にパナマ、ペルー、ブラジルで戦略的な港湾投資を行っていることを指摘した。

現在、中国共産党(中共)のパナマ運河への影響力が注目を集めているが、中共はアメリカの「裏庭」における港湾投資や重要インフラ契約を着実に確保してきた。専門家たちはまた、中国企業がメキシコの3つの港、アンティグアのセントジョンズ港、ジャマイカのフリーポート港にも権益を有していると述べた。

公聴会では、中共が西半球で行っている戦略的な港湾投資と、アメリカが自国およびアメリカ大陸で共産主義体制の影響力に対抗するために何ができるのかを検討した。

アメリカに迫る影響

カーネギー国際平和財団の中国研究シニアフェローであるイサック・カードン氏は、この公聴会で証言し、中国がアメリカ国内の港湾に及ぼす影響について語った。
カードン氏は、中国の国有企業である「コスコ・シッピング(Costco Shipping)」と「チャイナ・マーチャント・グループ(China Merchants Group)」、そして香港に拠点を置く「CKハチソン(CK Hutchison)」が、アメリカの港湾で主要な中国のパートナーであると述べた。

これらの中国企業は、ロサンゼルス、シアトル、ヒューストン、マイアミ、ロングビーチの港湾ターミナルにおいて少数株主としての権益を有しているという。

戦略国際問題研究所(CSIS)のアメリカ大陸プログラムディレクターであるライアン・バーグ氏による証言によれば、中共は世界で約130の港湾に何らかの所有権や運営権を持っている。さらに、その半数以上が主要な航路や戦略的な要衝に位置している。

バーグ氏は、中共の国家安全保障法が中国企業に国家の情報収集への協力を義務付ける「国家主導のスパイ行為」だと指摘した。

バーグ氏は「アメリカは戦後の惰眠から覚めつつある。アメリカはもはや、戦略的ライバルが我々の共有する地域で根を下ろすのを黙って見過ごしてはいない」と語った。

パナマ運河

パナマの主要5港のうち2港、太平洋側のバルボア港と大西洋側のクリストバル港は、CKハチソン傘下のハチソンポートが運営している。この事実は、安全保障の専門家の間で大きな懸念となっており、米中の間で紛争が発生した場合に、この水路が妨害または封鎖される可能性があると考えられている。

2025年2月2日、パナマのハビエル・マルティネス・アチャ外務大臣(右)とルビオ米国務長官 (Arnulfo Franco/AFP via Getty Images)

下部委員会の委員長を務めるカルロス・ヒメネス下院議員は、パナマ運河で活動する中国企業に注目したトランプ大統領の姿勢が正しかったと述べた。パナマ運河は、世界貿易とアメリカ海軍の作戦にとって重要な動脈である。
「これは、中共にとって世界で最も重要な水路の1つにおける戦略的な地位を提供するものであり、商業航路に影響力を行使し、アメリカおよび同盟国の船舶の動向を把握し、危機時には海軍の機動を制限する可能性を与える」とヒメネス氏は述べた。

トランプ大統領は1月の就任後、パナマ運河が中国によって運営されているという主張を繰り返し、介入する意向を示した。これに対し、中共とパナマは否定した。
トランプ氏は就任演説でこのように語った。「中国がパナマ運河を運営している。そして、それを中国に与えたのは我々ではない。我々はそれをパナマに与えた。そして、我々はそれを取り戻すつもりだ」と述べた。

パナマは1月、中国企業ハチソンの港湾契約を精査することを発表した。

2月2日にルビオ米国務長官の訪問後、パナマのムリーノ大統領は、中共の「一帯一路」プロジェクトを継続しないと発表し、トランプ政権の圧力キャンペーンにとって大きな勝利となった。

ヒメネス氏は、アメリカが安全保障にとって重要なインフラを外国の敵対国に支配されることを容認できないと主張し、モンロー主義の原則を引き合いに出した。
「200年以上にわたり、モンロー主義の原則に基づき、アメリカは西半球の安定と安全の主要な保証人であり続けてきた。そして、我々の経済安全保障にとって重要な貿易航路が、外国の敵対国の支配下に置かれることを防いできた」と述べた。

中共への対抗策

アトランティック・カウンシル副所長のマシュー・クローニグ氏は、アメリカが隣国と協力し、港湾やその他の重要インフラへの中国依存を減らすべきだと提言した。
クロー二グ氏は、パナマが中国企業による管理下にある港湾を監査する動きが、これらの港湾を再入札する際に、アメリカ企業やその同盟国が管理権を獲得する好機となり得ると述べた。

また、中国の投資を受け入れることで経済的利益を期待する中南米諸国は、その契約が進むにつれて発生する隠れたコストを理解していない可能性があると警告した。
「中国は投資を通じて、資源へのアクセスを確保し、エリート層を取り込み、各国政府に影響力を行使し、自国に有利な方向へ国の政策を転換させる。そして、民主的な価値観や透明性、環境基準を弱体化させている」と、かつてCIAや国防総省で安全保障問題に携わったクロー二グ氏は述べた。

クロー二グ氏は、アメリカが中南米諸国に対し、中国と重要インフラ、通信、衛星、監視、希少鉱物の分野で契約を結ぶことには安全保障上のリスクが存在することを明確に伝えるべきだと主張した。

専門家らは、中国がコンテナクレーンなどの装備にスパイ用のソフトウェアを組み込む可能性を指摘した。しかし、農産物などを扱う貿易は国家安全保障には影響しないとも述べた。

クロー二グ氏はまた、アメリカが中国の港湾投資と同じやり方で競争しようとするのではなく、アジアやヨーロッパにおける海事パートナーのネットワークを活用するべきだと強調した。

議会は、SHIPS for America Act(アメリカのための船舶法)のような法律を優先して制定し、さらなる船舶の建造と国家的な海事戦略の調整を目指すべきだと提案した。また、この立法を補完する形で「海上安全保障顧問」を設置することも提案した。

バーグ氏はさらに、アメリカ国際開発金融公社やその他の多国間金融機関を活用し、中南米諸国で「港湾権益回復プログラム」を展開することを提案した。加えて、アメリカは中南米諸国が港湾から中国製の設備を撤去するのを支援するべきだと述べた。具体例として、ファーウェイの設備や中国の港湾クレーンメーカーであるZPMCのクレーンが挙げられた。

アメリカ港湾局協会(AAPA)の会長であるケリー・デイビス氏は、「我が国の港湾業界は、特に西半球の港湾における中国の影響力への最良の対抗策は、港湾投資を通じて強力なリーダーシップを発揮することであると考えている。我々は港湾インフラを近代化し、世界的な競争力を維持する努力を続けなければならない」と述べた。

テキサス州を拠点に活動する米国のエポックタイムズ記者。州政治や選挙不正、失われつつある伝統的価値観の問題に焦点を当て執筆を行う。テキサス州、フロリダ州、コネチカット州の新聞社で調査記者として活動した経歴を持つ。1990年代には、プロテスタント系のセクト「ブランチ・ダビディアン」の指導者デビッド・コレシュについて暴いた一連の記事「罪深きメシア(The Sinful Messiah)」が、ピューリッツァー賞の調査報道部門で最終候補に選出された。
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