袁紅冰(えんこうひょう)氏によると、トランプ氏再登場で、米国の戦略がアジア太平洋へ転換した。中国共産党(中共)経済基盤を破壊し、習近平政権の外交は「脳死」状態に陥っているという。
最近、オーストラリア在住の法学者・袁紅冰氏は、「トランプ2.0現象」が世界にもたらした衝撃について分析した。彼によると、トランプ氏が、国内で政府機構を簡素化し、国外では関税戦争や貿易戦争を展開し、ロシア・ウクライナ停戦を促進するなどの行動を取っていることから、米国の国際戦略の重心をヨーロッパからアジア太平洋地域へと移行させつつあり、同時に中共経済が爆発的に成長するための国際的基盤を破壊しようとしていると言う。これは世界情勢にかつてないほど巨大な変化をもたらすだろうと指摘した。
なぜトランプ氏はアジア太平洋地域へ戦略転換するのか
袁紅冰氏は『看中国』のインタビューで次のように述べた。「わずか1か月半で、トランプ氏とその政権チームは、活力に満ちた驚異的な効率性を示し、アメリカの国際戦略重心をヨーロッパからアジア太平洋地域へ移行させるという確固たる意志を明確にした」
同氏によれば、トランプ政権はあらゆる細かな手続きを飛ばして、この国際戦略の重心位置転換をあらゆる手段で実現しようとしている。
袁氏はまた、中共党首・習近平が常に米国に取って代わり、新たな国際秩序を確立する存在になろうとしてきたが、「トランプ2.0現象」が出現した現在、世界情勢は、明らかにトランプ氏が追求する方向へと向かっていると述べた。
トランプ政権が仕掛ける関税戦争や貿易戦争について、袁氏は、その戦略目標は単なる貿易問題だけではなく、「中共経済が爆発的成長を遂げるための国際的基盤、つまりいわゆる経済グローバル化という趨勢そのものを破壊することにある」と指摘した。
「現在のいわゆる経済グローバル化とは、中共独裁政権が経済的爆発成長を実現するための国際舞台となっていた。今のこうした世界情勢の劇的な変化は、すでに時代という地平線上に雷雲のように立ち上っている」
袁氏は、「トランプ2.0という嵐が吹き荒れることで、世界情勢には前例のない巨大な変動が起きている」と述べている。
袁紅冰:中共外交システム全体が脳死状態に陥った
中共側がトランプ政権への対応として掲げた「幻想を捨て闘争準備」「戦略的定力維持」「中国(共産党)の底線堅守」「戦略的弱点補完」の4原則について、中共元高官・黄奇帆による動画発言がネット上で広く拡散されている。
これについて袁氏は、「これらは、我々はこれまでもこのことをすべて明らかにしてきた内容だ。問題なのは、なぜ現役官僚や公式機関ではなく、すでに退職した黄奇帆という人物がこうした発言をしているのかだ」と指摘した。
袁氏によれば、「トランプ2.0」の嵐が吹き荒れてからわずか1か月半で、「世界情勢には重大な変化が生じ、中共は完全に縁に追いやられてしまった」
習近平自身も方向性を示そうとしていたものの、「今や自分自身が世界から忘れ去られつつあることに気づいた」と言うのだ。
「我々が見る限り、中共政権は『トランプ2.0現象』への対応策すべてにおいて受け身であり、自発的・積極的な攻撃策は全くない。これは習近平独裁下の外交部門全体が脳死状態に陥り、『トランプ嵐』によってどう反応すればよいかわからなくなっていることを示している。またこれは、中共独裁政権全体の政治意志そのものが老朽化し鈍感化していることも示している」
袁氏によれば、「こうした状況下、中共指導部には『トランプ2.0』への具体的で有効な国家戦略や外交戦略が存在しないため、黄奇帆など退職官僚による報告や演説で国内情勢を安定させざるを得ない」
「中共政権は最悪の場合、『台湾海峡戦争』という最後の賭けや「窮鼠猫噛み(弱い者も追いつめられると強い者に反撃することがある)」式抵抗も視野に入れている。しかし具体的な外交方針、例えば欧州情勢への対応方法や米露関係改善阻止策、ロシア・ウクライナ停戦交渉妨害策、イラン敗北防止策など個別問題について習近平はいずれも愚かさと無能さしか示していない」
袁氏によれば、「こうした状況下では国家戦略上重大な誤りを犯すことになり、それこそ中共暴政が直面する重大な政治危機なのだ」と解説した。
ロシア・ウクライナ戦争勃発の背景と「トランプ2.0」嵐到来
ロシア・ウクライナ戦争について袁氏は、それ自体歴史的論理にもとづいて勃発したものであると分析した。一方で米欧左派政治家らは、表面的にはウクライナ支持を表明しながらもエネルギー分野や対中制裁措置などで曖昧さや軟弱さを露呈してきた。
「同時期、中共独裁政権は、密かにロシアへの支援を続けており、この長期化傾向につけ込んでロシアとの邪悪な同盟関係を強化・固定化してきた」と指摘した。「中共独裁政権は、これによって米国とのグローバル競争で、戦略優位性獲得を狙っていた」と述べた。
袁氏によれば、このような厳しい背景下でこそ、米国政治界で「トランプ2.0」の嵐が巻き起こり、それが急速に世界規模へ拡大しつつあり、「第二次世界大戦以来、前例のない変化に直面している」と言うのである。
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