習近平の権力に挑戦? 中共軍部で進行する内部闘争

2025/03/23 更新: 2025/03/24

 習近平政権下で進む中国共産党(中共)軍部の粛清と内部反発が注目を集める。側近の失脚や権力闘争が激化し、体制そのものに亀裂が生じる可能性がある。この状況は中国国内だけでなく、国際社会にも重大な影響を及ぼす。

アメリカの著名な中国問題専門家ゴードン・チャン氏は3月19日、アメリカの『ザ・ヒル』に寄稿した記事で、中国共産党の軍内部で衝撃的な権力闘争が繰り広げられていると指摘する。チャン氏は、この闘争が続けば、世界で最も危険な事態の一つになる可能性があると警告する。

なぜそれほど深刻なのか? それは矛先が習近平に向けられているから

チャン氏の分析によれば、習近平はここ数年、「反腐敗」の旗の下、軍に対して10年以上にわたる大規模な粛清を実施し、軍権を自身の手中に収めようとしてきた。しかし、今や軍内部で反撃の兆しが見え始めている。

明らかな兆候として挙げられるのは、昨年7月から中共の機関紙『解放軍報』が突然「集団指導制」を頻繁に取り上げ始めたことである。これは「習近平一人への権力集中」に対する反発の動きとみるべきである。

さらに興味深い点として、これらの記事の著者が軍事委員会副主席の張又俠と密接な関係にあることが挙げられる。習近平が「軍権を掌握している」と主張するのであれば、このような記事が『解放軍報』に堂々と掲載される状況は矛盾している。

さらに衝撃的な噂として、習近平の側近であるもう一人の軍事委員会副主席何衛東が取調べを受けているとの情報や、総後勤部前部長趙克石が逮捕されたという話も浮上している。

チャン氏によれば、これらの情報が事実であれば、習近平は軍内で深刻な挑戦を受けていることになる。噂が全て事実ではないとしても、このような話題が体制内で広く流布していること自体、中共上層で混乱が生じている証左と言える。

何衛東は習近平が直接抜擢した幹部であり、彼さえも守れない状況は体制そのものに亀裂が入り始めたことを意味する。

チャン氏はアメリカ退役空軍将軍ブレイン・ホルト氏の言葉を引用し、中共内部では「奇妙な現象」が生じていると指摘する。全国人民代表大会(全人代)のたびに官僚が失脚する状況はほぼ規則的になっており、「上層安定」は表面的なものである可能性が高い。

さらに重要なのは、内部統制が効かなくなる場合、習近平は外部との衝突を引き起こし、自身への矛盾をそらす選択をする可能性が高いことである。内紛が制御不能になれば、問題を世界に投げつける形で危機を作り出し、自身の権力維持を図る可能性も否定できない。

中共政権は現在「自己との戦争」状態にある。この内紛が全面的に爆発すれば、中共自身だけでなく世界全体にも影響を及ぼす恐れがある。

チャン氏はこの問題についてFOXニュースでも議論しており、その内容はアメリカ国内でも広く注目されている。

アメリカ『ニューズウィーク』誌は何衛東に関する取調べの噂を報じ、彼が習近平の福建省勤務時代からの側近であり対台湾軍事行動を担当していたことにも触れている。この一連の粛清規模は予想以上に大きい可能性も指摘される。

元国家安全保障会議中国担当ディレクターデニス・ワイルダー氏は、中共による粛清手法は軍内部に不安感をもたらすだけだと語る。少しでも動きがあれば誰が忠誠心を持つか推測され始め、それによって信頼崩壊と士気低下につながる。

元米太平洋軍司令部官僚モンゴメリー氏も、このような粛清によって軍高官たちが慎重になり積極性を失い、最終的には戦闘力そのものを弱体化させる結果になると指摘する。

中共は艦艇やミサイルなどへの巨額投資を進めてきた。しかしこれら分野には汚職問題も根強く存在し、「反腐敗」を進めること自体体制全体を揺るがす要因となっている。動けば動くほど反発も強まっていくのである。

何衛東は今どこにいるのか? 301病院に「病気で拘束」との噂が流れ、習近平派に異変が生じている

中共軍事委員会副主席であり、習近平が「最も信頼する軍の将軍」として知られる何衛東の行方は不明である。これらの噂は中国語メディアから発信されており、注目に値する。

最新情報によれば、彼は301病院に収容されている。評論家趙蘭健氏によると、何衛東は連行後に「突然心臓病を発症」し、現在301病院で厳重に監視されている。この病院は中共高官専用の軍の大病院である。

病棟の一階全体が封鎖され、兵士が厳重に警備している。趙蘭健氏は、病状が安定し次第、何衛東が京西賓館に移され、さらなる取調べを受けるだろうと述べている。

さらに、軍事委員会本部は「痕跡消去作戦」を開始しており、何衛東の在任中に署名された文書やスピーチ、写真、ビデオなどを集中的に回収し、軍事委員会弁公庁に一括して引き渡している。これは「存在の抹消」を行っていると言える。

これらの事態がすでに1週間近く続いているにもかかわらず、中共側は一切反応を示しておらず、デマを否定する声明すら出していない。3月14日の「反分裂法施行20周年座談会」には本来、何衛東が出席予定だったが、急遽、劉振立に変更され、外部ではすぐに騒然となった。

さらに、共産党元老と軍部が共同で習近平を追い落とそうとしているという噂も存在する。まず彼の側近たちを倒すという手法である。

もちろん、この説には現時点で確証はなく、何衛東が本当に病気になった可能性も否定できない。最近北京ではウイルスが流行しており、中共No.3趙楽際も公式に「呼吸器感染」とされている。何衛東も同様かもしれない。しかし問題なのは、趙楽際が一晩で「病気が治った」として姿を見せた一方で、何衛東は一週間も姿を消したままである点である。この状況は非常に異常と言える。

さらに疑念を深める要因として、301病院が単なる医療施設ではない点が挙げられる。評論家たちは、この場所を中共闘争の「隠れた戦場」と表現している。歴史的には、中共元高官である彭徳懐や陳毅、徐才厚、さらには鄧小平もここで取調べを受けている。

周永康や薄熙来、令計画もここで「治療」を受けるよう手配されていたが、その実態は秘密裏の軟禁だった。さらに過去には江沢民が301病院で楊尚昆を処理したとされる。楊尚昆が江沢民への批判を強めた際に、「前倒しで手配」し直接死亡処理を行ったという。このような事例は中共体制下では繰り返されてきた。

趙蘭健氏は301病院について、中共による異分子粛清の政治的道具と指摘している。この場所では表向き病気治療を装いながら実際には清算が行われている。

したがって何衛東が本当に301病院へ送られている場合、その目的は単なる療養ではないと言える。

軍内の噂は常に先行している

注目すべきは、ここ2年の中共軍高官の失脚を、しばしば海外の噂が事前に予告し、その後、公式に確認されていることである。

例えば、2023年7月、ロケット軍の高官解任前に、元海軍司令部中佐でアメリカ在住の姚誠氏がTwitter(現在のX)で、司令官の李玉超が6月26日に執務室での会議中に連行されたと暴露した。姚誠氏はその後も将軍たちの失脚を事前に明らかにした。

元国防部長の李尚福も同様の運命を辿った。2023年9月7日、評論家の蔡慎坤氏が海外SNSのXで「未確認情報」として、李尚福が汚職と重大な規律違反の疑いで調査を受けていると発表した。2023年9月15日、趙蘭健氏は大紀元に対し、李尚福が9月1日に逮捕されたと語った。2023年10月24日、当局は正式に李尚福の国防部長などの職務解任を発表し、失脚が現実のものとなった。

2023年9月中旬、趙蘭健氏は再び中共軍工関係者の逮捕を独自に暴露した。逮捕されたのは、中国兵器集団 董事長の劉石泉 、中国航天科工集団 董事長の袁潔 、中国兵器装備集団 総経理の陳国瑛、元中国航空工業集団 董事長兼書記の譚瑞松などで、彼らの失脚は後に確認されている。

2024年11月11日、蔡慎坤氏と姚誠氏はSNSのXで、中央軍事委員会の委員で政治工作部主任の苗華が連行され、取調べを受けていると発表した。趙蘭健氏はその後、北京の紅二代のWeChatグループで、苗華が頭巾を被せられ、複数の兵士に連行される様子を多くの住民が目撃したと明かした。

2024年11月28日、中共国防部 報道官の呉謙は定例記者会見で、苗華が「重大な規律違反の疑いで職務停止・調査中」であると発表した。

何衛東と趙克石が本当に問題を抱えているかどうかは、まもなく明らかになるだろう。

李強が「後継者に指名された」? 習近平の連任計画に変更の噂

もう一つの重要な噂として、中共の現総理 李強がすでに「内定の後継者」となったのかどうかを見てみよう。

3月17日、アメリカ在住の評論家・呉祚来氏がSNSのXで、小説のように習近平の連任はもはや不可能であり、元老たちが内々に李強を後継者に指名したと暴露した。呉祚来氏はしばしば小説的な形式で中南海の内幕を描写している。

呉祚来氏の分析によると、何衛東の失脚は実際には障害を取り除き、李強の後継者としての道を整えることで、さらに重要なのは、習近平が窮地に追い込まれて戦争を起こし、権力を維持しようとするのを防ぐことだったということだ。

記事によると、現在、中共の元老たちと軍部はすでに明確に認識しており、もし習近平にこのまま暴走を続けさせ、経済が崩壊し、民生が悪化し続ければ、それは党の滅亡への道だと。そこで、習近平に「体面を保った退場」をさせ、習がまだ受け入れられる人物——李強を選んだというわけだ。

最近、李強が頻繁に公の場に姿を見せるようになった。特に、5月に予定している欧州連合(EU)50周年サミットへの出席準備を進めている。この場合、理論的には習近平が出席すべきだが、李強を出席させることは、多くの人々が権力移行の兆候と解釈している。

さらに興味深いのは、昨年の北戴河会議以降、李強が公の場で「習核心」や「習思想」に言及する頻度が明らかに減少し、時には全く言及しないことだ。これは中共の体制において大きな出来事だ。

また、最近の蔡奇主導の「党整頓運動」は、実際には習近平の最後のあがきだと分析する人もいる。彼は整風運動を通じて「習一尊」の地位を再構築し、連任への道を整えようとしているのだ。

しかし、問題は軍部が協力的でないことだ。どれだけ「整風」を進めても無駄だ。中共の国家安全部はわざわざ文書を発表し、「漢の武帝の軍事乱用」を引用して軍隊を皮肉って、暗に習近平を批判しており、内部闘争がほぼ公然化している。

さらには、中共がすでに「戒厳令の予備案」を準備しているという噂もある。もし状況が制御不能になれば、全国で鎮圧を行い、戒厳令を敷き、パンデミック時期の供給販売社や配給制を再開する可能性があるのだ。

李強の「後継者」の噂は、このような背景の中で浮上した。ある分析によれば、これは「ソフトな政権移行」の一形態かもしれない。表面上は習近平に体面を保たせつつ、実際には徐々に実権を手放させる狙いがあるのだ。

もちろん、これらは現時点ではすべて噂に過ぎない。しかし、中共の不透明な体制の中で、このような噂が広がること自体、決して単純なことではない。

唐青
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