DOGEによるUSAID再編 裁判所が一時許可

2025/03/26 更新: 2025/03/26

米連邦控訴裁判所は3月25日、トランプ政権が進める米国際開発庁(USAID)の縮小計画に対し、連邦地裁が出していた差し止め命令の効力を一時的に停止する判断を下した。これにより、政府効率化省(DOGE)が主導する再編作業は、少なくとも3月27日まで継続が可能となった。

メリーランド州地裁のテオドア・チュアン判事は3月18日、USAIDの本部閉鎖、大規模な人員削減、契約の打ち切りなどが、憲法に定められた三権分立の原則に反する可能性が高いとして、政権の施策を差し止める命令を出していた。

しかし米第4巡回区控訴裁判所は25日、署名なしの短い命令文を通じて、チュアン判事による差し止め命令の効力を「3月27日の業務終了時まで停止する」と通知した。命令文には理由は記されていない。

大統領権限か、越権行為か――法廷での論点

トランプ氏は2月4日、記者から「USAIDを段階的に廃止する予定か」と問われ、「そう思う」と述べた。

DOGEのリーダーであるイーロン・マスク氏について、トランプ氏は「素晴らしい仕事をしている。USAIDの中にある不正を明らかにしている。あそこは急進左派の温床だ」と発言した。

しかしチュアン判事は、マスク氏およびDOGEによるUSAIDの業務停止措置について、「連邦議会の承認なしに、議会が創設した機関を事実上解体しようとする行為」であり、憲法上の権力分立原則を侵害する可能性が高いと指摘した。

「USAIDの本部閉鎖や職員の大規模解雇、契約終了といった措置は、いつ、どのように、機関を廃止するかを決定する権限を、国民の代表である議会から奪う行為だ」と判決文には記されている。

判事はまた、DOGEおよびマスク氏に対し、USAID職員と契約業者の同庁システムへのアクセスを復旧させ、今後の契約解除や解雇手続きも停止するよう命じた。

司法省が緊急申し立て、控訴裁が一時停止命令

今回の控訴裁による判断は、米司法省が3月21日に提出した緊急の行政上の一時的差し止め申請に基づくもので、チュアン判事の判断に対する控訴審が開かれるまでの間、政権側に暫定的な猶予を与えるものとなった。

司法省は申し立ての中で、チュアン氏がマスク氏を「連邦政府の幹部(officer)に該当する可能性がある」とした判断を誤りだと主張。

マスク氏は「米国法に基づく重要な権限を行使しておらず」、連邦最高裁が1991年に下したFreytag対コミッショナー事件の判例に照らしても、上院承認を必要とする連邦職員ではないとした。

政府はまた、マスク氏の立場について「純粋に助言的な役割にとどまり、行政機関を拘束する最終決定を下す権限も政策を決定する権限も持たない」と強調している。

最高裁、トランプ政権に対し援助金支払いを命令

3月5日には連邦最高裁が、2月26日付の仮差し止め命令を維持する判断を示し、トランプ政権に対して20億ドル(約3000億円)の対外援助資金の支払いを命じた。

この命令は、ワシントンD.C.の連邦地裁アミール・アリ判事が出したもので、1月20日(トランプ大統領の就任日)以前に締結された契約にもとづく援助金の凍結に対し、USAIDおよび国務省に支払い再開を命じていた。

最高裁はアリ判事に対し、「仮差し止め命令に従うために、政府が果たすべき義務を明確化すること」を指示しており、履行可能性にも配慮するよう求めている。

大統領令とDOGEの役割

トランプ氏は就任初日の2025年1月20日、大統領令第14169号を発令し、「アメリカの対外開発援助を90日間一時停止し、事業の効率性や外交方針との整合性を評価する」よう命じた。

この命令に伴い、政権内で新たに設置されたOGEが始動。政府のコスト削減や業務効率化のための提案を行う組織とされている。

また同日発令された大統領令第14158号では、オバマ政権下で設立された「U.S.デジタルサービス」が再編され、「U.S. DOGEサービス」として新たに発足した。

議会調査局(CRS)によれば、新組織には「連邦政府の技術・ソフトウェアの近代化を通じて、行政の生産性と効率を最大化する」という使命が課されている。

 

マシュー・ヴァダムは、受賞歴のある調査ジャーナリストです。
メリーランド州に拠点を置く大紀元のシニアリポーター。主に米国と世界のニュースを担当。