市場揺れる中 富豪ビール氏「関税こそ唯一の道」

2025/04/09 更新: 2025/04/09

著名投資家ビル・アックマン氏が新たな関税に対し一時停止を求める中、銀行家で億万長者のアンディ・ビール氏は、トランプ前大統領による強硬な関税政策を「唯一の道」と支持した。ビール氏はインタビューで「今こそアメリカ経済を正す機会」と語り、金融市場の動揺を伴っても改革を進めるべきだと主張した。一方、アックマン氏は翌日、関税自体には賛成の立場であることをSNSで強調し、交渉のための猶予期間を求めている。

ビール氏は経済メディア「MarketWatch」のインタビューで、トランプ氏の関税政策について「各国を交渉の場に引き戻し、公正な自由貿易を実現し、アメリカの国際経済的地位を再構築するための手段だ」と語った。その上で「好機は今しかない。もう待てない」と強調した。

「ビル・アックマンは間違っている。もう一度90日間の猶予期間を設ける必要などない。私たちは長年、幻想の中で生きてきた」とビール氏は断言した。

また、ビール氏は米連邦準備制度(FRB)の金融緩和政策と、長年にわたる政府の赤字財政を厳しく批判。これらがインフレや経済の実態を覆い隠してきたとし、実際の実体経済はすでに縮小していると述べた。「政府が毎年2兆ドルを借り入れて支出している状況では、現実が歪められ、健全な経済への再調整が先送りされてきた。今こそ調整のときだ」と語った。

さらに「アメリカは貿易赤字と財政赤字をこのまま長期間維持することはできない」と警告。「早期に対応すれば痛みは少なくて済む。政府が借りて使う1ドルと、イノベーションや生産によって稼ぐ1ドルは全く意味が異なる」と強調した。

ビール氏は関税によって市場が揺れることは認めつつも「それが唯一の道だ」と述べ、議会を通じた改革には時間がかかりすぎるため、トランプ氏には「2年しかない」と指摘した。

ビール氏はBeal Bankの創業者として知られ、またラスベガスでプロポーカープレイヤーと対戦する姿でも話題を呼んだ人物。通常は公の場での発言は少ないが、トランプ氏とは親交が深く、2024年の選挙に向けたトランプ氏の再選運動に500万ドルを寄付している。

トランプ氏がほぼすべての貿易相手国に対し一律10%の基準関税を導入し、特定の国にはさらに高い関税を課す方針を発表したことを受け、米国株式市場は大きく揺れ、経済の先行きにも不透明感が広がった。

これに対し、アックマン氏は4月7日、「関税発動は『自作自演の経済的核の冬』を招く」と警鐘を鳴らし、各国に貿易協定を再交渉するための3カ月の猶予を設けるようトランプ氏に提案した。

しかし翌8日、アックマン氏は自身のXで「自身の立場が誤解されている」と投稿し、改めて「トランプ氏による関税政策そのものには賛成している」と表明した。

「一部の人々は私の関税に対する見解を誤解している。私はドナルド・トランプ大統領が関税を用いて、貿易相手国による関税や不公正な貿易慣行を是正し、アメリカ国内への投資と製造業の回帰を促すという政策を完全に支持している」と述べた。

また「私が提案しているのは、関税が発動される前に30日、60日、あるいは90日の猶予を設け、各国が交渉の場に着けるようにすることだ。それによって、世界経済への混乱を最小限に抑え、米国内の脆弱な企業や市民への影響も和らげることができる」と付け加えた。

アックマン氏はさらに、輸入関税をめぐる交渉の場を持つべきだと政府に呼びかけ、「もし一部の国が誠意を持って交渉に応じなければ、その時こそトランプ大統領が強硬な手段を講じるべきだ。しかし、まったく交渉の時間を与えないまま関税を発動すれば、不要な損害を生むことになる」と訴えた。

一方のビール氏は「貿易赤字や財政赤字をこのまま放置すれば、最終的には米国は債務不履行に陥るか、大幅な増税を強いられることになる」と警告。「本来ならもっと早く対処すべき問題だ。今はもう、覚悟を決めるしかない」と語った。

李言
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