米連邦地裁のトレバー・マクファデン判事は8日、大統領執務室や大統領専用機での取材からAP通信を締め出した決定について、「編集方針を理由に報道機関を差別することは憲法違反である」とする判断を下した。
この訴訟は、トランプ政権が「メキシコ湾」の呼称を「アメリカ湾」へと改めるよう命じた大統領令に従わなかったことを理由に、AP通信がホワイトハウスでの13人限定の報道プールから外したことを受けて起こしたもの。
マクファデン判事は、AP通信がこの呼称変更に従わなかったために、2月11日の大統領関連行事への参加を拒否したことについて、「政府による第一修正(言論の自由)の侵害にあたる」と認定した。
政権側は2月25日、ホワイトハウス報道官チームがプール取材の参加者を決定する方針を発表し、それまでこの権限を持っていたホワイトハウス記者協会からその役割を奪っていた。
AP通信は裁判で、「自社は国際的な報道機関であり、世界の大多数はいまだに“メキシコ湾”という名称を使用している」と主張。さらに、一般的には他の主要メディアにも開いている行事への参加を制限されたと訴えていた。
マクファデン判事は、「AP通信は他社に比べて大規模な行事から繰り返し排除されており、時折、写真記者や海外支局の記者が参加を許されたにすぎなかった」と述べた。
また判事は、ホワイトハウスへのアクセスが制限された影響で、AP通信はここ2か月間、報道や写真の質が低下し、顧客離れが進んで「経営面でも出血状態にある」と指摘した。
ただし、判決ではホワイトハウスに対し「AP通信に恒久的なオーバルオフィス(大統領執務室)やイーストルーム、その他の行事へのアクセスを認めよ」と直接命じるものではなく、「他の報道機関に対してアクセスを開放した以上、特定の編集方針を理由にAPを排除することはできない」と限定的に判断した。
判決文では次のように記している。
「確かに、AP通信がかつてホワイトハウス記者協会の枠内で享受していた“常に優先的に取材できる権利”を今後も当然に保証するものではない。だが、第一修正に基づけば、政府が一部の記者にドアを開けた以上、その記者たちの見解に基づいて他の記者を締め出すことは許されない。憲法は、それ以下のことを認めてはいない」
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