米商務省 医薬品と半導体の輸入調査開始 関税強化を見据えた動きか

2025/04/15 更新: 2025/04/15

4月14日、米商務省は、連邦官報に公告を掲載し、医薬品半導体の輸入が国家安全保障に与える影響について、通商拡大法第232条に基づく調査を開始すると発表した。今回の調査は、将来的な追加関税の実施に向けた布石とみられる。

商務省が、発表した2件の通知によれば、調査の対象は、「輸入された半導体と半導体製造装置」と、医薬品およびその有効成分(原薬)」とされている。調査は完成された医薬品に加え、重要な原材料や派生製品にも及んだ。

関連文書は、4月16日に公開予定で、そこでは一般からの意見提出期間が21日間設けられることや、トランプ政権が通商拡大法(1962年)第232条の権限に基づき、関税の導入を視野に入れていることが明記されている。この種の232条調査は、発表から270日以内に完了しなければならない。トランプ米大統領はこれまで、外国で製造された医薬品や半導体が国家安全保障上の脅威になると繰り返し主張してきた。特に、米国内での半導体生産体制の回復や、製造業全体の再生を国家戦略の柱に位置づけており、こうした輸入品に関税を課すことで、アメリカの製造能力を取り戻すことを目指し、AI分野での国際的な主導権確保も、トランプ政権の最優先課題のひとつであった。

一方、4月11日には、スマホ、パソコン、記憶用半導体など一部のハイテク製品に対しては、対抗関税の対象から除外する措置が取られた。

また4月14日の朝、トランプ氏は、自身のSNSトゥルース・ソーシャルで、次のように述べた。

「国家安全保障に関する関税調査では、半導体と電子機器の供給網全体を対象に調査を行う。アメリカは自国でモノをつくる必要がある。他国、特に共産主義中国のような敵対的な貿易相手に依存してはならない」

同日、米ABCテレビの報道番組This Weekに出演したラトニック商務長官も、トランプ氏の方針について言及。

「1~2か月以内に、スマホ、パソコン、その他の電子製品に対して“重点対象関税”を課す予定だ」としたうえで、「半導体や医薬品についても業界全体に関税を課す方針だ」と明らかにした。

ラトニック氏は、「これらの製品は一部の対抗関税の対象外ではあるが、半導体関税に含まれる見通しだ」と述べ、こうした措置により生産拠点がアメリカ国内へ移転することを期待していると語った。

半導体業界は、世界全体での売上が6000億ドルを超えており、自動車や航空機、スマホ、家庭用電子機器などにとって不可欠な部品だ。

一方、製薬業界はこれまで国際的な協定によって保護されてきたこともあり、貿易摩擦の影響を受けにくい分野とされてきた。しかし、トランプ氏は繰り返し「アメリカの製薬会社は海外生産に頼るべきではない」と主張し、国内回帰の必要性を訴えている。

業界関係者の間では、関税の影響を緩和するため、段階的な導入を求める声が上がっており、企業側も生産体制の見直しに向けた時間確保を政府に働きかけ、米国の大手製薬会社であるメルクやイーライリリーなどは、アメリカ、ヨーロッパ、アジアを中心に複数の生産拠点を保有しており、米国内への生産移転には多額の投資と長期的な対応が必要とされていると言う。

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