トランプ大統領 ワシントンに州兵を派遣 大規模な治安作戦を開始

2025/08/15 更新: 2025/08/15

アメリカのトランプ大統領は11日、連邦政府によりワシントンD.C.の首都警察局(MPD)を接収し自らの管理下に置き、都市の治安維持のために州兵を派遣すると明らかにした。11日夜、市内では850人の警察官と連邦捜査官が動員され、計23人を逮捕した。最初の州兵部隊は翌日から順次到着し、警備活動を開始した。

ホワイトハウスの キャロライン・レビット報道官は12日の記者会見で、この措置はトランプ政権による大規模な法執行作戦の幕開けであると述べ、「今後1か月にわたり、政府は法を侵し、公共の安全を損ない、善良な市民を危険にさらすすべての暴力犯罪者を執拗に追跡し、逮捕していく」と強調した。

レビット氏によれば、初日の作戦は市全域で実施され、逮捕容疑には殺人、銃器不法所持、ストーキング、飲酒運転、薬物犯罪、無賃乗車、わいせつ行為などが含まれていた。また、捜査の過程で6丁の不法な拳銃を押収した。

犯罪対策に加え、トランプ氏は市の景観を整え、ホームレス問題に取り組むことを約束した。レビット氏は、路上キャンプ地に居住するホームレスをシェルター、薬物リハビリ施設、精神医療機関へ移送すると説明。拒否した場合、罰金や拘留の可能性があるという。これらの措置は、道路や歩道の占拠・通行妨害を禁じる地方法規など、現行法に基づくものである。

法的根拠と接収期限

1973年の「コロンビア特別区自治法」によれば、大統領は緊急事態下で警察局の指揮権を一時的に接収できる。初期は48時間で、議会への通知により最長30日まで延長が可能。さらなる延長には上下両院の承認が必要とされる。レビット氏は、30日経過後に「再評価のうえ延長の是非を判断する」と述べた。

トランプ大統領が署名した命令では、警察組織の指揮系統は大統領を頂点とし、次にパム・ボンディ司法長官、さらにテリー・コール麻薬取締局(DEA)長官が続く。

市当局の反応と波紋

ワシントンD.C.は州に属さないため、ワシントン市当局は連邦政府の接収を阻止する手立てがほぼない。トランプ氏は自治法第740条を適用し、警察局を緊急時に直接接収した初の大統領となる。

市長のミュリエル・バウザー氏は、追加の警察力の効果的な活用を確保するため、連邦の法執行に協力すると表明した。しかし前日には、この接収が治安改善に繋がらないとの懸念を示し、暴力犯罪はすでに過去30年で最低水準にあると指摘していた。

両者はこれまで、軍事パレード、2020年の警察暴力に対する抗議、そして「ブラック・ライヴズ・マター(BLM)」の街頭スローガンなどを巡って何度も対立してきた。しかし、トランプ氏の第2期政権発足と共和党の議会掌握後、バウザー氏はNFL(National Football League、米プロフットボールリーグ)チーム「ワシントン・コマンダーズ」の本拠地を特区に戻す計画など、一部で協調姿勢も見せている。

依然高水準の治安課題

首都警察局の最新統計によれば、本年の市全体の犯罪発生率は前年比7%減で、殺人は11%減、暴力犯罪は26%減、財産犯罪は4%減となった。しかし警察労働組合は、この数字が改ざんされている可能性を指摘し、ある分局の指揮官が停職・調査対象となっている。

統計によると犯罪率は減少しているものの、アメリカの首都での犯罪水準は依然として高い。ホワイトハウスが公表した2024年の比較資料によると、同市の殺人発生率は人口10万人あたり27.54件で、コロンビアの首都ボゴタ(15.1件)やメキシコシティ(10.6件)を上回っている。

トランプ政権は、この作戦を「首都美化プロジェクト」の一環と位置づけており、レビット氏は「大統領は選挙公約を果たし、ワシントンを世界で最も美しく、かつ安全な都市にする」と強調した。
 

王君宜
王君宜