AUKUS協定 米国防総省が審査完了 トランプ氏「全速前進」

2025/12/06 更新: 2025/12/06

アメリカ国防総省は12月4日、イギリスおよびオーストラリアとの間で結ばれたAUKUS(安全保障の枠組み)協定を承認し、同協定を「全速力で前進させる」と発表した。これには、オーストラリアが今後15年以内に少なくとも3隻のバージニア級原子力潜水艦を取得する計画も含まれている。

国防総省報道官ショーン・パーネル氏は声明で、同省が5か月にわたる審査を完了し、AUKUS協定を最終的に支持したと述べ、さらに「これはトランプ大統領の『アメリカ・ファースト』政策方針にかなうものである」との見解を示した。

同氏は次のように述べた。「トランプ大統領の『AUKUSを全力で推進せよ』との指示に従い、今回の審査ではAUKUSを最も強固な基盤の上に構築するための機会も見いだされた」

12月8日、ワシントンではアメリカとオーストラリアの外相・防衛相会談が予定されている。これはトランプ氏が政権復帰後、初めてとなる同種の会談であり、AUKUS審査の結果が主要議題となる見通しである。その後、12月10日には米・英・豪三か国の国防相による三者会合も開催される予定である。

AUKUSとは

AUKUSの正式名称は「Australia-United Kingdom-United States Security Partnership」(豪・英・米安全保障パートナーシップ)である。2021年9月15日、当時のオーストラリア首相スコット・モリソン氏、イギリス首相ボリス・ジョンソン氏、アメリカ大統領ジョー・バイデン氏の三者が共同で、三国間の安全保障および防衛協力を強化するため、新たに「AUKUS」と呼ぶ三国安全保障パートナーシップを発足することを発表した。名称の「A-UK-US」は、各国名(Australia, United Kingdom, United States)の頭文字に由来する。

AUKUS協定に基づき、オーストラリアは2023年、今後30年間に3680億豪ドル(約35兆円)を投じ、アメリカから原子力潜水艦を購入するとともに、イギリスと協力して自国製の原潜を建造することを約束した。これはオーストラリア史上最大規模の単一防衛プロジェクトである。

三か国の政権交代を経ても堅持

2025年6月、オーストラリアはイスラエルの閣僚イタマル・ベン・グヴィル、ベザレル・スモトリッチ両氏に対して制裁を科した。これに加え、アメリカが国防費の問題を理由にAUKUS計画、特に原潜供与部分の再検討に着手したことが、両国関係の試金石になると分析されている。

今回の再審査は、アメリカ国防総省政策次官エルブリッジ・コルビー氏の主導で行われた。コルビー氏は昨年、「こうした潜水艦は台湾海峡有事におけるアメリカ最重要の通常戦力資産であるにもかかわらず、アメリカの産業能力では自国向けの潜水艦生産すら不足している」として、オーストラリアへの潜水艦供与に懸念を示していた人物である。

国防総省内部からも、「オーストラリアはもし米中間で台湾をめぐる紛争が勃発した場合、本当にこれらの潜水艦を展開する意思があるのか」という疑問の声が上がっていた。

しかし現在、見直し作業は完了しており、米下院軍事委員会の海洋戦力・兵力投射小委員会に所属する民主党筆頭議員ジョー・コートニー下院議員は、「AUKUS審査完了は、その枠組みがアメリカの国家安全保障上の利益と合致していることを確認するものだ」と述べた。

同氏はまた、「注目すべきは、2021年のAUKUS協定が三か国での政権交代を経ても、現在にいたるまで堅固に維持されていることである」と指摘した。

AUKUSの2つの主要分野

概して、AUKUSはインド太平洋地域における水中抑止力を強化することを目的としている。AUKUSは2つの主要分野から構成されており、第一の分野は原子力潜水艦協力を対象とする三段階のプロセスである。

第一に、2027年からアメリカとイギリスが交互に西オーストラリアのスターリング海軍基地(HMAS Stirling base)に原子力攻撃型潜水艦を配備する。第二に、2030年以降、アメリカがオーストラリアにバージニア級潜水艦3隻を供与し、必要に応じてさらに2隻を追加供与する。第三に、2030年前後から英豪両国がアメリカの技術支援のもと、新型潜水艦「SSN-AUKUS」の共同建造を開始し、イギリスは12隻、オーストラリアは5隻を建造する計画である。

一方、第二の分野では、オーストラリア、イギリス、アメリカが量子計算、人工知能、水中戦、極超音速ミサイルなど、先端技術の共同研究と開発を加速するとしている。この取り組みには日本、ニュージーランド、カナダ、台湾も参加に関心を示している。

紀語安