絶景トイレが安全保障上の懸念に 中共スパイ疑惑受けノルウェーで閉鎖

2026/05/29 更新: 2026/05/29

ノルウェーで「国内で最も美しく、最も高価な公衆トイレ」として知られる建築作品が、中国共産党によるスパイ活動への利用が懸念されるとして、当局により閉鎖された。地元市長は「不合理な措置だ」と反発している。

問題の公衆トイレ「ブッケシェルカ(Bukkekjerka)」は、ノルウェー北部アンドーヤ島西岸の国立観光道路沿いの休憩施設に設けた建築作品で、2018年に完成した。建設費は2千万ノルウェークローネ(約3億円超)に上り、建築専門のメディアからは「ノルウェーで最も美しい景観の一つ」と高く評価されている。

最大の特徴は、床から天井まで全面に設置されたマジックミラー(片面鏡)だ。利用者はトイレ内部から雄大な海の景色を一望できる一方、外部からは内部の様子が見えないため、完全なプライバシーが確保されている。

ところが、この観光名所として人気を集めた鏡張りの構造が、思わぬ形で国家安全保障上の懸念を招くことになった。現在、施設は閉鎖され、扉には鍵が掛けられている。その背景には、中国に関連するスパイ事件への疑惑があるという。

ノルウェー紙「VG(ベルデンス・ガング)」によると、ノルウェー公安警察(PST)は5月、アンドーヤ島で中国人女性を拘束し、スパイ活動を支援した罪で起訴した。また、重さ22トンに及ぶ衛星信号受信装置も押収した。

ノルウェー公安警察は、何者かがアンドーヤ宇宙港での衛星打ち上げに関する信号の傍受を試みていた可能性があるとみて捜査を進めている。捜査当局によれば、関係者はシンガポールやノルウェー中部オッタのペーパーカンパニーを通じてアンドーヤ島の不動産を取得し、活動拠点として利用していた疑いがある。

ブッケシェルカはアンドーヤ宇宙港から数キロしか離れておらず、トイレ内部の片面鏡越しには宇宙港方面の海岸線を見渡すことができる。当局は、スパイ事件発覚後、この構造が監視活動に利用される恐れがあると判断したとみられる。外部からは内部に人がいるかどうかも分からず、何をしているのか確認できないためだ。

地元メディア「ヴェステローレン・オンライン(VOL)」が最初に閉鎖を報じた。ノルウェー観光道路事業の担当者シリエ・ミューレ・アムンセン氏は書面で、「予防的措置」と説明したものの、再開時期や恒久的な閉鎖の可能性については「現時点では答えられない」と述べるにとどめた。誰が閉鎖を決定したのかについても、関係者は明言を避けている。

これに対し、アンドーヤ市のキェル=アーレ・ヨハンセン市長はノルウェー放送協会(NRK)に対し、「正式な説明もなく建物を閉鎖するのは納得できない」と批判。「仮にスパイがいたとしても、トイレの外に立つことは可能だ。扉に鍵を掛けたところで何も防げない」と語った。

報道によれば、皮肉なことに、この片面鏡は当初から利用者のプライバシー保護を目的として設計されたものであり、宇宙施設の機密を守るためのものではなかった。実際、情報収集を目的とするなら、トイレ脇の駐車場の方がはるかに広い視界を確保できるという。

アンドーヤ宇宙港は1960年代以来、欧州有数の研究用ロケット発射拠点として知られてきた。VGによると、近年はアメリカとの契約により人工衛星打ち上げ業務も受託しており、戦略的重要性が一段と高まっている。

(台湾の通信社「中央通訊社」より転載)

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