TSMC熊本など半導体工場が稼働再開 令和8年熊本地震で傷んだサプライチェーン 中小企業復旧の課題

2026/08/06 更新: 2026/08/06

令和8年熊本地震の発生から1週間が経過した。半導体関連のTSMC熊本(JASM)や三菱電機、ルネサスエレクトロニクス、アイシン九州といった主要企業の工場で、安全が確認できた工程から順次、稼働が再開されている。

ただ、赤澤亮正経済産業大臣は8月4日の会見で、日本経済への影響は現時点では見通せず、規模の小さな二次・三次下請け企業の被害状況についても「まだ十分につかみ切れていない」と述べ、復旧の全体像はいまだ不透明であることを認めた。

経済産業省は、地震が発生した7月28日以降、主要な半導体・電子部品関連企業や自動車関連企業を中心に、サプライチェーンの被災状況の把握を進めてきた。

一部の半導体・自動車部品メーカーの工場では、設備に被害が出たため操業を停止した。これを受け、直接の被害を受けていない完成車メーカーも、部品メーカーの被害状況の確認と復旧を優先するため、一部の生産を止めた。影響は九州にとどまらず、会見では、埼玉県や三重県にある工場の生産停止も指摘された。地震の揺れそのものを受けていない地域でも、部品が届かなければ生産ラインは止まる。サプライチェーンのつながりの脆さが浮き彫りになった形である。

TSMC熊本や三菱電機など主要工場の稼働再開状況

一方で、復旧の動きも広がりつつある。赤澤経産相によると、生産再開に向けて各社が最大限の努力を続けており、TSMC熊本、三菱電機、ルネサスエレクトロニクス、アイシン九州などが、安全を確認できた工程から順次、稼働を再開している。三菱電機とルネサスエレクトロニクスの一部再開が比較的早く、その後にTSMC熊本やアイシン九州が続いた形だ。

TSMC熊本は、台湾積体電路製造(TSMC)が出資する日本の半導体生産拠点(JASM)であり、日本の半導体供給網の中核の一つに位置づけられる。台湾を代表する企業の日本拠点が被災から立ち上がる過程は、経済安全保障の観点からも、台日の産業協力の観点からも注目される。

把握しきれないティア2・ティア3の中小企業被害

ただし、大臣の発言を丁寧に読み解くと、楽観視するには早いことが分かる。

第一に、「経済全体への影響は見通せていません」との点である。赤澤経産大臣は、国内経済への影響について現時点で予断を持って判断するのは難しいとし、各工場の復旧状況を注視しつつ、生産停止などによる影響が最小限となるよう全力で対応していく、と述べるにとどめた。

第二に、「規模の小さな下請けの被害が、まだ把握できていません」という点である。会見では、自動車業界のように裾野が広い産業では、ティア2・ティア3と階層が下がるほど企業規模が小さくなり、大手の系列に属さない中小企業も多いため、自力での状況把握や復旧が難しいのではないか、との指摘が出た。

これに対し赤澤経産大臣は、まず被害状況を正確に把握する必要があるとしたうえで、中小企業を激甚災害に指定できるかどうかは、工場内の被害額の把握が前提になると説明した。ところが、その工場の経営者自身が被災し体調を崩していたり、生活の再建に追われていたりして、聞き取り調査をしたくてもできない状況があると述べた。そのうえで、TSMCや三菱電機のような大企業から先に状況が分かってくる一方で、被害が懸念されるティア2・ティア3については「我々自身もまだ状況をつかみかねている」とし、現時点での評価やコメントについてはもう少し時間をかけてほしいとの認識を示した。

小さな部品メーカーほど被害の把握も支援も後回しになりやすく、そこがサプライチェーン全体の弱点となりうる――これが現段階の実像である。

経済産業省による現場支援と激甚災害指定の行方

経済産業省は、こうした状況の把握と復旧を急ぐため、8月4日時点で本省から14名、九州経済産業局から5名、九州保安監督部から5名の計24名を熊本県庁や市町の現場に派遣している。中小企業の激甚災害指定に必要な被害額の算定に向けては、熊本県商工労働部への職員派遣を増やし、調査体制を強化した。

被災地の生活基盤の面では、ガソリンについて通常時の最大4倍の供給力を確保し、供給制限はほぼすべて解除された。被害の大きかった八代市、宇城市、氷川町では、ガソリンスタンド73件のうち64件(約9割)が営業を再開している。

赤澤経産大臣は、各工場の復旧状況を注視しつつ、生産停止などによる日本経済への影響が最小限となるよう、全力で対応していく考えを重ねて示した。

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