上海で、公衆トイレの案内板が思わぬ騒動を巻き起こした。
「公共トイレ」と書かれた看板の矢印が、撮影する角度によって、ちょうどファーウェイの店舗を指しているように見えたのだ。
写真は中国SNSで瞬く間に拡散。「1000万元(約2億円)以内で最高のトイレ」など、ファーウェイの宣伝文句をもじった冗談が飛び交い、現地には記念撮影に訪れる人が殺到した。
ところが25日になると、現場には人が常駐するようになり、訪れた人の撮影を制止。翌26日には、話題になった案内板が撤去され、矢印の向きを変えた新しい案内板に交換された。公衆トイレは変わらず通常通り使われている。
もちろん、ファーウェイの店舗が公衆トイレだったわけではない。撮影する角度が生んだ、ただの偶然である。

それなのに、なぜ案内板を撤去し、矢印の向きまで変えたのか。
背景には、中国でファーウェイが「普通の企業」とは少し違う存在として扱われてきた事情がある。同社は「愛国企業」の代表格とされ、表向きは民間企業ながら、中国共産党や政府との深いつながりでも知られる。そのため、ファーウェイをめぐる冗談まで、ときに単なる「笑い」では済まなくなる。
似た騒動は先月にもあった。
回すと「ワーワー」と鳴る昔ながらの玩具「竹ゼミ」が、ファーウェイをからかうネタとして大流行。関連動画が同社からの通報を受けて次々と削除されると、逆に「横暴すぎる」「国家権力を背景にした言論封じだ」と批判が噴出した。
さらに通販では、商品ページの削除や注文のキャンセル、発送後の商品まで送り返されたとの投稿が相次いだ。消そうとするほど話題は広がり、ただの玩具がファーウェイや権力をからかう象徴になっていった。
そして今度の相手は、公衆トイレの看板である。
誰かが仕掛けた風刺ではない。街にあった看板を撮ったら、たまたま矢印の先にファーウェイがあった。それだけのことだった。
「ワーワー」の次は、物言わぬ一本の矢印。笑われたくないという必死さが、皮肉にも、かえって笑いを広げている。

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