日米韓共同訓練「フリーダム・エッジ26」は、9月7日から11日にかけて、防衛省市ヶ谷地区と、九州西方の東シナ海の公海上・上空で行われる。2024年に始まった訓練で、今回が4回目となる。
訓練では、海上や航空、サイバー、後方支援の分野で連携を確認する。日米韓3か国の部隊が、情報を共有しながら対応する力を高めることが狙いである。統合幕僚監部は、インド太平洋地域の平和と安定に寄与し、力による一方的な現状変更を許さない安全保障環境の構築を目指すとしている。
日本周辺では近年、中国軍やロシア軍の航空機・艦艇の活動、北朝鮮による弾道ミサイルの発射が続いている。日本は、北海道周辺から南西諸島、朝鮮半島周辺まで、広い範囲で警戒監視を続ける必要がある。
東シナ海で続く中国軍Y-9の飛行
8月19日、中国軍の情報収集機Y-9が大陸方面から東シナ海に飛来し、長崎県・男女群島の南方まで飛行した。その後、沖縄本島沖の上空で進路を変え、男女群島南方と奄美大島沖の空域を往復して大陸方面へ戻った。航空自衛隊は戦闘機を緊急発進させて対応した。
8月25日にも、中国軍のY-9が沖縄本島沖や奄美大島沖、長崎県・男女群島沖の空域を飛行した。領空侵犯はなかったが、自衛隊は戦闘機を緊急発進させた。
情報収集機の飛行は、単なる移動とは言い切れない。自衛隊の探知能力や緊急発進までの時間、監視態勢などを把握する目的がある可能性がある。沖縄本島や奄美大島、九州西方の空域は、南西地域の防衛や東シナ海の海上交通、台湾海峡をめぐる情勢とも関わる重要な地域である。
日本としては、領空侵犯の有無だけでなく、飛行の頻度や経路、ほかの軍事活動との関連を継続して分析する必要がある。
北海道から南西諸島へ広がるロシア軍の活動
ロシア軍の活動は北海道周辺にとどまらない。8月10日には、ロシアの情報収集機IL-20が大陸方面から飛来し、日本海上空を南西へ進んだ後、京都府沖付近で進路を変えて北上した。
海上では、8月14日にロシア海軍のミサイル護衛哨戒艇4隻が宗谷岬の北東で確認され、宗谷海峡を西へ進んだ。15日から16日にかけては、情報収集艦が宗谷海峡を西へ進んだことも確認された。20日には、スラバ級ミサイル巡洋艦が宗谷岬沖を航行し、宗谷海峡へ向かった。
南西地域でも活動が確認されている。8月13日、キロ改級潜水艦と潜水艦救難艦が与那国島の南方を北東へ進み、与那国島と西表島の間を通って東シナ海へ向かった。16日から17日にかけては、キロ改級の潜水艦と潜水艦救難艦が対馬海峡を北東へ進んだ。
宗谷海峡、対馬海峡、南西諸島周辺はいずれも、日本の防衛や海上交通にとって重要な海域である。北海道周辺、日本海、九州西方、南西地域でロシア軍の活動が確認されていることは、自衛隊に広い範囲で継続的な警戒監視を求める要因となっている。
小泉防衛相は8月の記者会見で、ロシアによるウクライナ侵攻が続く一方、日本周辺でも活発な軍事活動が続いていると指摘した。中国との戦略的な連携を含め、日本の防衛にとって強い懸念だという認識を示した。
北朝鮮ミサイルが突き付ける初動対応
北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、日本の安全保障に時間的な課題を突き付ける。8月12日、北朝鮮は東岸付近から少なくとも1発の弾道ミサイルを東へ発射した。防衛省は、最高高度はおよそ90キロ、飛翔距離はおよそ690キロで、日本海にある日本の排他的経済水域、EEZの外に落下したと推定している。
8月20日にも、北朝鮮は内陸部から北東へ向けて複数の弾道ミサイルを発射した。最高高度はおよそ90キロ、飛翔距離はおよそ320キロで、朝鮮半島東岸沖の日本のEEZ外に落下したと推定される。
日本への被害は確認されていない。ただ、ミサイルの発射があった場合、発射を探知し、飛行の経路や落下地点を推定し、国民に情報を伝えるまでの時間は限られる。日米韓がレーダーや衛星、艦艇、航空機などで得た情報を速やかに共有できるかどうかは、対応の正確さに直結する。
日本周辺で問われる情報共有と抑止力
フリーダム・エッジ26には、自衛隊の護衛艦「あさひ」と「あたご」、P-1哨戒機、SH-60K哨戒ヘリコプター、F-15・F-2戦闘機、E-767・E-2D早期警戒機、KC-46A・KC-767空中給油・輸送機などが参加する。海上や航空の部隊に加え、後方支援やサイバー分野の訓練も行われる。
早期警戒機が広い範囲を監視し、戦闘機が必要な対処に当たる。哨戒機と護衛艦は海上や海中の動きを把握し、空中給油・輸送機は航空機の長時間の活動を支える。後方部隊は燃料や補給品の確保、整備、人員や物資の輸送を担う。サイバー分野では、部隊間の通信網や情報基盤を守る。
抑止力は、艦艇や航空機の数だけで決まるものではない。複数の地域で同時に事案が起きた際、各国が状況を共有し、必要な部隊を動かし、活動を続けられるかが重要である。
中国軍による南西空域での活動、ロシア軍の広い範囲での海空の行動、北朝鮮による弾道ミサイルの発射は、日本が一つの方向だけを警戒していればよい状況ではないことを示している。
自衛隊統合幕僚監部によると、フリーダム・エッジ26は、武力衝突を引き起こすための訓練ではない。危機の際にも日米韓が連携し、迅速かつ秩序立って対応できる態勢を示すことで、武力や威圧による現状変更を思いとどまらせる狙いがある。東シナ海で問われるのは、装備の性能だけではない。3か国が情報を共有し、足並みをそろえて危機の拡大を防げるかどうかである。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。