猛スピードで走る車を止めようと、思い切りブレーキを踏む。ところが、ペダルを支える部品が折れてしまった。想像するだけで血の気が引く、まさに絶体絶命の瞬間だ。
中国の高級車の性能試験で、そんな恐ろしい問題が発覚した。ところが、検証動画がネット上から次々と削除され、メーカーを批判した政府系メディアの記事まで消えた。
安全性への疑問に加え、情報削除への不信も広がる中、購入予定者の間では、高額な手付金が戻らなくても購入を取りやめる動きが相次いでいる。
問題となったのは、ファーウェイと江淮汽車が共同開発した高級車「尊界V800」。価格は2000万円を超える。
中国の自動車情報サイト「懂車帝(ドンチャーディ)」が行った試験では、時速100キロから急ブレーキをかけた際、3台すべてでブレーキペダルを支える部品が同じ箇所で折れた。
試験映像が公開されると、車の安全性をめぐって批判が殺到。ところが翌日には、関連動画が中国のSNSから次々と削除された。

この事態を受け、メーカー側は「国家基準や業界基準を上回っている」「通常とは異なる極端な試験条件だった」などと説明した。
これに対し、10月10日、新疆ウイグル自治区政府の公式アカウント「新疆発布」が、メーカーの対応を痛烈に批判する記事を掲載した。
記事は「売るときは誰にでもわかる言葉で説明するのに、問題が起きると難しい専門用語ばかり」「消費者が知りたいのはブレーキが本当に安全なのかということだ、基準を満たしているという説明ではぐらかさず、もっとわかる言葉で答えられないのか」と批判した。
さらに、記事は「『うちの車は安全で、ブレーキペダルは踏んでも折れない』と言えば責任が生じるが、『国家基準を上回っている』と言えば責任を回避できる」とメーカーの姿勢を厳しく追及した。
ところが、10万回以上読まれたこの記事も、公開から半日足らずで非公開となった。

一連の情報削除に対し、中国のネット上では怒りと不信が渦巻いている。
「リコールすべきなのは車なのに、真っ先に回収されたのは問題を暴いた検証動画と、メーカーを批判した記事だ」
「ファーウェイの後ろ盾が中国当局なのは周知の事実だが、ここまで露骨にやるとは。もはや隠す気すらないのか」
翌11日には、浙江省政府の公式アカウントも「世論への対応で陥りやすい6つの誤り」と題する記事を掲載。企業が問題を指摘された際、原因究明や説明よりも、情報を隠したり批判を封じたりする対応に走ることを批判した。新疆の政府系メディアの記事が公開から半日足らずで非公開となった直後だけに、浙江省政府の発信にも注目が集まった。
一方、購入予定者の間にも不安が広がっている。
四川省成都の男性は、すでに約100万円の手付金を支払っていたが、車の受け取りを拒否する意向を示した。購入予定の車はオプション込みで約2500万円に上るという。
ほかにも、手付金を失ってでも車の受け取りを拒否する購入予定者が相次いでいる。
メーカー側はブレーキ関連部品を無償で改良し、11月から順次対応する方針を示している。一方、検証動画や政府系メディアの批判記事が相次いで削除された詳しい経緯は、明らかになっていない。

ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。