【長編連載小説】 千代能比丘尼物語 第四回
顕日が自分の怒りを捕まえたときも、最初、怒りは顕日そのもので、怒りの中に顕日がいた。怒りと顕日は同じものだった。だが無学老師の巧みな誘いと受け流しで、ふとした切欠が生まれ、顕日はその自分そのものであると思い込んできた怒りを、奥に隠れていた見知らぬ自分が、照らし見ている事に気づいたのだ。その者を仏の宿り主と答えた。あたかも眠っていた自分の本体が、束の間、目覚めたようであった。
【長編連載小説】 千代能比丘尼物語 第三回
美しい女がいては修行ができぬと? そういわれた千代能は自らの顔を火箸で焼く。