【大紀元日本10月12日】北沢防衛大臣は11日、東南アジア諸国連合(ASEAN)拡大国防相会議が開かれるベトナム・ハノイで中国の梁光烈・国防相と会談した。争点となっている尖閣諸島問題について、双方とも「適切に処理する」との発言に止まり、尖閣諸島の領土問題について触れなかったという。
今回の日中防衛相会談は漁船事件後初の閣僚級会談であり、中国が通告した日中間の閣僚級以上の交流停止の対抗措置がこれで終了したと見られる。
同日、北沢防衛大臣はゲーツ米国防長官とも会談した。尖閣諸島の「安保適用」と米国側が表明したことに謝意を示した。一方、中国海軍艦艇が東シナ海のガス田付近に展開している状況に対し、日米連携で中国海軍艦艇の動向を監視している。
領土問題、触れていない
11日の新華社通信によると、中国の梁国防相は「中日関係は、日本が釣魚島(尖閣諸島の中国名)海域で不法に中国漁船と漁民を拿捕した事件により深刻なダメージを受けているが、我々はこうした状況を望まない」としたうえで、「中国側はこれまでずっと中日関係の発展を重視し、対話を通じて相互理解を深め、協議を通じて行き違いを是正し、両国関係の大局を維持しようとしてきた。日本側も敏感な問題を適切に処理し、中日関係を早く正常な軌道に乗せてもらいたい」と述べた。
同報道によると、北沢防衛大臣は「双方が冷静になり、適切に問題を処理する必要がある。各分野、特に防衛分野における交流を深め、両国関係を前進させたい」と話した。
また、共同通信によると、北沢防衛大臣は梁国防相に、海上での衝突を防ぐため、合同で連絡体制を構築することを提案したという。
一方、時事通信は、北沢防衛相は尖閣諸島の領土問題に関し「(ここで議論するのは)生産的でない」と梁国防相に述べたと報じた。
いずれにせよ、日中双方の報道では、尖閣諸島の領土問題は議題に上っていないもよう。
日中衝突の幕引き 対抗措置もうやむや
英BBCが10日、「日中衝突幕引き 対抗措置うやむや」と題する記事を掲載。同記事はフジタ社員の釈放が日中衝突の幕引きを意味するとの見方を示した。
また、先月19日に中国外務省が通告した日中間の閣僚級以上の交流停止の対抗措置が、正式な解除宣言がないなか、うやむやに終了したと指摘した。
なお、菅首相は9日、フジタ社員・高橋定さんの釈放をうけ、日中関係について「いろんなことが元通りに戻っていくのではないか」と期待感を示したという。
日米防衛相会談 年内に日米合同演習
同日に行われた日米防衛相会談では、北沢防衛大臣は、尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲内と米国側が表明したことについて謝意を示し、中国の海洋活動に関して「日米間で緊密に協力していくことが重要」と述べた。
北沢防衛大臣はまた、すべての武器の輸出を禁じる武器輸出3原則について、見直しを検討する考えを表明し、年末にまとめる防衛大網で一定の方向性を示すと伝えた。これをうけ、ゲーツ米国防長官は「大変前向きなことで歓迎する」と評価した。
尖閣沖での衝突をきっかけに、自衛隊が沖縄での防衛増強を計画しているようだ。6日の朝日新聞によると、防衛省は航空自衛隊三沢基地に配備されているE2C早期警戒機を、定期的に那覇基地に展開させる検討を本格的に始めた。同計画は尖閣諸島の衝突事件前から検討が進められていたが、事件後、海上だけでなく空域での警戒態勢も増強すべきとの意見が強まったという。
なお、先月発表された12月上旬に行われる予定の日米合同演習について、菅首相は「尖閣諸島の事案を想定した演習の計画はない」と6日に明らかにし、米国防総省のモレル報道官も5日に、予定される演習は「以前から計画されていた日米の運用能力を維持するものであって、(尖閣諸島問題とは)何の関係もない」と述べていた。
日米連携 中国海軍艦艇の動向を監視
9日付の産経新聞によれば、尖閣諸島の衝突事件後、初めて中国海軍艦艇が東シナ海のガス田付近で活動していることが確認された。今回の活動は平成17年9月以来のことで、海洋権益確保に向けた中国の示威活動であると同時に、日米の軍事的対抗策を確認する狙いもあるとみられるという。
同記事は、中国軍艦の活動に対し、日米が連携して中国海軍艦艇の動向や、中国海軍潜水艦の動きを監視していると報じた。
中国海軍艦艇が展開している「平湖」ガス田は、ガス田の中でも日中中間線から最も離れており、日中共同開発の協議対象でもないという。中国側は日米を必要以上に刺激しないよう、巧妙に「示威と確認」を行ったものとみられる。ガス田周辺で日米と中国の牽制態勢が常態化する懸念もある。