【大紀元日本12月11日】「朝カーテン開けたら、目の前が真っ白で、目が見えなくなったと思った」――。ネットユーザーのこの書き込みは、12月に入ってから中国の広範囲に広がる大気汚染の深刻さを物語った。中国当局の発表によると、2013年の一年間、「煙霧・スモッグ」の観測日数は1961年以来、52年ぶりの多さを記録した。国土の大半に広がるスモッグに一般市民が不安と怒りを抱えつつ、過ぎ去る2013年を「スモッグ年」と命名する。
今回の大規模なスモッグは、31ある省・市・自治区のうちの25に及び、100以上の都市で観測された。10日、中央気象台が1週間続いたスモッグ警報をようやく解除したものの、「スモッグ頻発シーズン」に入ったことを認めた。
スモッグが深刻な都市では、高速道路や空港の閉鎖や、休校などの緊急対策が講じられた。しかし一般市民にとっては、空気清浄機とマスクだけが頼みの綱。杭州市など多くの都市ではマスクが売り切れ、各家庭では数台もの空気清浄機がフル回転している。また、週末を利用して山や森に出かける「肺清浄ツアー」も人気だという。
10月21日、黒竜江省ハルビン市 (STR/AFP/Getty Images)
12月6日、上海虹橋国際空港 (PETER PARKS/AFP/Getty Images)
そういった中、大手政府系メディア2社が大気汚染にも利点があると報道。人民日報傘下の環球時報は「敵が偵察しようにもはっきり見えず、ミサイルを撃っても目標に命中しない」と軍事的にプラスの面があると謳歌。中央テレビ局CCTVはスモッグの「5つの意外な利点」として、中国人がもっと団結、平等、冷静になり、ユーモアのセンスが磨かれ、知識も増えたとまとめてみせた。
さすがにこれらの論調には一般市民のみならず、他の政府系メディアも異論を上げた。河南商報は10日、「2人の兄貴、これはもしかして、伝説のブラックユーモア上級編か?」と大きな見出しで反論し、新華社も「全く不適切」と苦言を呈した。
ネットユーザーらはCCTVお墨付きのユーモアセンスで、さらに「利点」を追加した。「北京や上海などの大都市での汚染が、中小都市住民の『幸福感』の向上に貢献した」「全国民がマスクを購入し、経済成長を促進した」「登校困難がオンライン教育に発展のチャンスを与えた」
5つの「利点」のなかでも、とくに「平等説」に反論が集まった。南京市では清掃員対象のスモッグ対応マスクの配布令が出たが、清掃員らが受け取ったのは普通のガーゼマスク。スモッグ対応のものは、オフィスに座る幹部らが代わりにもらったという。「スモッグの前でみな平等、でもなさそうだ」とネット上では非難する声があふれた。
大気汚染は当然、ユーモアで済ませることではない。ロサンゼルスから上海を訪れた若い男性はドイツ国際放送の取材に「飛行機から降りた途端、涙が止まらず目が痛い。しゃべることもしんどい」と話す。上海は今回、微小粒子状物質PM2.5濃度が1立方メートル当たり600マイクログラムを超えての「最悪レベル」。このPM2.5により、5億の中国人が5年以上の寿命が縮まった、と国際調査団が7月に米科学アカデミー紀要で発表したばかりだ。
中国政府は大気汚染対策として、石炭消費の削減や新たな自動車燃料基準の導入などを打ち出している。ただ、身の丈以上の経済発展やGDP成長率を地方幹部の評価基準にすることこそが大気汚染の「根」であることを故・趙紫陽元総書記の秘書だった鮑トン氏は指摘する。資源や環境への無視は、毛沢東の「人間が天に勝つ」と標榜する「大躍進」や_deng_小平の「発展こそ絶対な道理」に遡ることができ、GDP至上の政策が変わらない限り、汚染問題の抜本的解決は望めないとの見方を示した。
「大変だ。天安門に掲げる毛沢東像が見えない」と北京のユーザーが書き込むと、「そんなの、大したことではない。我ら上海では、ポケットからお札を出しても毛さんが見えないぞ」(中国のお札に毛沢東肖像が印刷されている)と上海のユーザーはユーモアたっぷりに返す。大気汚染の深刻さを語るには、市民らも元祖を忘れてはいない。
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。