得難きものは親友とよく言われる。元米国下院議長で歴史学者でもあるニュート・ギングリッチ氏は、自他ともに認めるトランプ大統領の親友だ。同氏はこのたび、ドナルド・トランプ氏の「解説書」となる『Understanding Trump(トランプを知る)』を上梓した。
2016年の大統領選で、当初は一傍観者に過ぎなかったギングリッチ氏が、最終的には筋金入りのトランプ支持者へと変貌した。その親密な様子に、一時はトランプ氏が大統領に就任した暁には副大統領に指名されるのではないかとの憶測まで飛んだほどだ。
15年1月、トランプ氏は大統領選の出馬に必要な資金等についてギングリッチ氏に尋ねた。「競争力のある候補者を目指すなら、少なくとも7000万ドルから8000万ドル(約77億8000万円~99億9000万円)は必要だろう」。これに対して「ほう、クルーザー1隻くらいか。クルージングよりもこっち(大統領選)の方が面白そうだ」と答えた。
「ただの冗談だと思っていた。まさか本当に出馬するとは」。ギングリッチ氏に限らず、トランプ氏が共和党17人の候補者中から頭角を現すとは、誰も予測していなかった。
トランプ氏が庶民感覚に敏感な理由
ギングリッチ氏は著書の中で、トランプ氏が大統領に上り詰めることができたのは、米国民の心情を推し量るうえで、ある種の勘のようなものが働くからだと語っている。
例えば、選挙活動中、トランプ氏は「資産は90億ドル」などと、自身が富豪であるとアピールしていた。これは「億万長者なら誰かに金で買収される心配はない」との大衆心理をよく理解していたからだ。ほとんどの米国人は、政治家について、国民の代弁者ではなく金持ちの操り人形だと考えていた。
別の例を挙げよう。トランプ氏がメキシコ移民について「差別的」な発言をしたときのことだ。15年6月16日の大統領選出馬表明で「メキシコ(政府)は犯罪者や強姦犯を米国に送ってくる」旨の発言をしたところ、これを人種差別的だとする左派から痛烈に批判された。だが彼らは、米国政府がそれまで数十年に渡って不法移民問題を放置してきたことについては、口をつぐみ続けている。トランプ氏が不法移民問題を取り上げると、「人種差別主義者」というレッテルを張って非難する。
トランプ氏の発言は、多くのまじめなメキシコ移民にとって不公平な物言いだが、いっぽう、極端な表現で大衆が抱いている不満を表した。
トランプ氏は華麗な演説が得意でなく、小学5年生程度の語彙力しかないと批判されたこともある。だが、トランプ氏と米国市民との間には、他の政治家とは違う共感のようなものが生まれているようだ。カリフォルニア州のアジア系トランプ・パーティ代表を務める中国系米国人ソフィー・ウォン氏は、大紀元の取材に対し、トランプ氏を支持する理由は「私の思いを代弁してくれるから」と説明している。
資産家のトランプ氏がなぜこうした庶民的感覚を持ち得たのか。トランプ大統領は、自身は伝統的な家庭に生まれ、一般的な米国人給与所得者の家庭と大差ない環境で育ったと語っている。父親は事業を起こし、母親が5人の子どもを育て上げ、子どもたちはいずれも、金を手に入れるのは並大抵のことではないと教えられて育ったという。またトランプ氏は子供時代、資産家の子弟が通う私立高校ではなく、ニューヨーク・ミリタリーアカデミー(陸軍学校の1つ)に編入させられたことも、こうした庶民感覚を養うことに一役買っているかもしれない。
(つづく)
(翻訳編集・島津彰浩)
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