英国のメイ首相はこのほどの訪中で、中国とは「黄金時代」と良好関係をアピールする一方、中国が主導する広域経済圏構想「一帯一路」を全面的に支持する覚書の署名に応じなかった。訪問中、90億ポンド(約1兆4000億円)超相当の契約に締結したものの、中国の拡張路線への不信感を改めて示したものとなった。英BBC中国語版が1日報じた。
メイ首相は北京で1月31日、中国の李克強首相との会談で、構想について前向きの姿勢をみせた。しかし、透明性や環境基準などへの懸念を示し、「国際基準に合致するよう」にと求め、協力強化などを盛り込んだ「一帯一路」構想の覚書には署名しなかった。
不公平な競争への規制が必要
昨年5月、北京で開催された「一帯一路」国際協力サミットフォーラムでは、英国をはじめ、ドイツやフランスなど一部のEU加盟国が中国との貿易推進に関する文書への署名を拒絶した。
ドイツの代表はその場で、「一帯一路」の透明性に懸念を示し、不公正な投票権や差別待遇への禁止を確保することを要求した。米国代表団のマット・ポッティンガー(Matt Pottinger)国家安全保障会議(NSC)アジア上級部長が、中国がより透明性の高い競争入札メカニズムを確立し、より多くの国や民間企業を参加させる必要があると助言した。
ワシントンの有力シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)が先月発表した報告書で、「一帯一路」プロジェクト受注業者約9割が中国企業で、現地企業は1割にとどまっていると述べた。透明性が低いうえに、中国企業が国の支援を受けているため、外国企業は公平な競争ができず、貿易不平等につながると指摘した。
「欧州分断」の思惑に危機感
中国と東欧16カ国は昨年11月27日、ハンガリーの首都ブダペストで首脳会議を開き、中国の李克強首相は同地域で30億ユーロ(約4000億円)の資金協力拡大を表明した。会議に合わせて、ハンガリーとセルビアを結ぶ高速鉄道整備の入札も発表された。同鉄道は広域経済圏構想「一帯一路」の一環として、中国からギリシャの主要港に届いた物資を欧州に運ぶ重要な手段となる。
東欧で動きを活発化させている中国に対して、欧州各国は中国が東欧を足がかりに対中政策で欧州を分断させる思惑だと懸念している。EUは昨年2月、総工費約2800億ドル(約30兆円)に上る同プロジェクトがEU法に順守しているかどうか、調査に乗り出した。大型輸送プロジェクトについては公開入札を実施しなければならないと定めたEU法に抵触したかどうかを調べていると、欧州の複数当局者が英フィナンシャル・タイムズ(FT)に語った。
中東欧では、「一帯一路」のほか、中国は2012年から進めている、中東欧16カ国との経済協力枠組み「16+1協力」がある。チェコ、ハンガリーなど16カ国は、中国と西欧を結ぶ沿線国に当たり、「一帯一路」戦略を推し進める上で、地政学上の要地でもある。西欧より発展が遅れている中東欧各国では、中国によるインフラ投資が年々拡大している。
中東欧各国を利用して欧州に影響力を深めたい中国にEU各国は危機感をあらわにしている。ドイツのガブリエル外相は昨年、「一致した戦略がとれなければ、中国は欧州の分断に成功する」と述べた。
フランスのマクロン大統領は今年1月訪中時、「一帯一路」を支持すると表明した一方、「沿線各国を附属国にする覇権の道になってはならない」と中国を牽制した。
(翻訳編集・王君宜)
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