中国、米国の裏庭で「バラマキ外交」 軍事脅威の懸念も

2022/02/20 更新: 2022/02/20

米中間の緊張が高まるなか、中国は米国の裏庭、中米カリブ海諸国で勢力を拡大している。中台の草刈り場でもある同地域で台湾と断交し、中国と国交を結ぶ国が続出した。台湾との同盟切り崩しに躍起になっている中国は、今後もインフラ投資を通じて影響力を拡大するとみられる。

専門家はこの地域で米国はまだ優位に立っているが、中国の動きに警戒する必要があると指摘した。米国営放送ボイス・オブ・アメリカ(VOA)が報じた。

中台の綱引き場

中米・カリブ海地域は中台外交競争の主戦場となっている。世界で台湾を国家承認する15カ国のうち8カ国がこの地域に集中する。

台湾の蔡英文総統が就任した2016年以降、中国はカリブ海・中米諸国への関わりを強めている。インフラ投資を約束した中国の切り崩しが功を奏し、17年にパナマ、18年にはエルサルバドル、ドミニカ共和国がそれぞれ台湾と断交し、中国と国交を結んだ。

この地域はチャイナマネーを必要としている。パナマ政府は台湾と断交後、域内でいち早く中国政府の広域経済圏構想「一帯一路」に加わった。中国は同国で橋、鉄道、電力施設など20以上の大型インフラプロジェクトに投資した。

中国は19年、エルサルバドルに対し、競技場、国立図書館などの建設に計5億ドルを投じると約束した。

中国は民主主義弱体化の国々に人気

政治専門家らは、米国が中米やカリブ海諸国の政治腐敗に取り組み、一部の政府高官に制裁を加えようとしていることも、民主主義の基盤が弱いこれらの国々が中国政府に傾く理由の一つである、とみている。

ニカラグアは、米国が同国オルテガ大統領の側近に制裁を加えた後、昨年12月に台湾と断交し、中国と国交を回復した。

米政府がエルサルバドルのブケレ大統領の側近を汚職高官のブラックリストに載せた直後、同大統領は中国政府のインフラ投資は「条件付きではない」と称えた。

ホンジュラスのカストロ大統領は選挙に勝利した後、中国と国交を結ぶ可能性を示唆した。

VOAは、「中米・カリブ海諸国は、中国のアプローチは政治目的によるものだとわかっているし、中国への経済的依存に危機感も抱いている。ほとんどの国は、米国を怒らせるつもりもなく、米中の間でうまくバランスを取ろうとしているだけだ」と分析した。

「一帯一路」構想による軍事的脅威

中国政府は、この地域を「一帯一路」構想に組み入れようと積極的に動いている。

昨年12月末、キューバは新たに「一帯一路」構想に参加した。キューバのほか、ジャマイカなどカリブ海の6つの島国、中米のエルサルバドル、コスタリカ、パナマがすでに同構想に参加した。

近年、中国はエルサルバドルの新しい港に数十億米ドル(1米ドル=115円)相当の資金を投入し、アメリカから100マイル(160キロ)も離れていないバハマの港に大型コンテナターミナルを新設した。中国はこの地域の他の国でも、同様に港湾への投資を進めている。

米国は、中国が同地域で多額の投資と港湾事業を展開していることに警戒感を抱いている。これらの港湾は軍事拠点に転用できるからだ。

中南米を管轄する米南方軍のクレイグ・ファラー司令官はかつて、中国がパナマ運河に関わるインフラを支配することに重大な懸念を示した。中国がこの地域の深水港を掌握すれば、世界各地での軍事展開をサポートできるという。

中国の企業連合は18年、15億ドル(約1700億円)でパナマ運河にかかる4本目の橋の建設案件を落札した。

19年、米国はエルサルバドルに圧力をかけ、沿海のペリコ島(Isla Perico)を中国企業に売却することを阻止した。一部報道によると、最近、中国の国有企業が再びこの計画を進めているという。

中国は中米・カリブ海地域の天然資源にも投資を拡大している。中国政府はカリブ海沿岸諸国が保有する膨大な量のアルミニウムやレアアースを狙っている。ジャマイカの2つの大規模なアルミナ精錬所は中国資本が保有している。

米ボストン大学の経済学者レベッカ・レイ氏は、この地域における中国の経済的利益と外交的利益は絡み合っていると指摘した。

米国はまだ優位にある

専門家は、中国が中米・カリブ海地域で米国に取って代わることはまだ非現実的だが、中国が間違いなく米国の優位性に挑んでおり、米政府は中国政府の動きに警戒する必要があると助言した。

米フロリダ国際大学ラテンアメリカ・カリブ海研究センター所長代理のルイス・G・ソリス氏は、この地域において米国が依然として優位にあると指摘した。

米政府はかつて、中米・カリブ海諸国における中国の勢力拡大は脅威であり、悪質であると批判した。

専門家は、この地域の国々はインフラ投資を切実に必要としている一方で、持続的経済成長の最大の阻害要因はガバナンス(国家管理)力の不足と指摘し、米国はこの地域のより信頼できるパートナーであると言及した。

米ウィルソン・センター中南米プログラムのベンジャミン・ゲダン副主任は「中国への協力は投資を呼び込めるかもしれないが、中国は政治腐敗に無関心で、透明性に欠けているので、ガバナンスの問題を深刻化させるだけだ」と述べた。

この地域の一部の国にとって、中国との提携の悪影響がすでに現れている。中南米ニュースサイトによると、エクアドル政府は昨年12月、ダムが手抜き工事で地元の環境と経済に深刻なダメージを与えたとして工事を請け負った中国企業を提訴した。

(翻訳編集・叶子静)

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