「ノーガードは致命的」大阪と武漢新港の提携関係めぐり疑問の声

2022/05/18 更新: 2022/06/24

大阪港湾局が昨年12月に武漢新港管理委員会とパートナーシップ港提携に関する覚書(MOU)を締結した問題をめぐって、大阪府議会の議員から反発の声が上がっている。

大阪府のホームページ(HP)に掲載されている提携に関する知らせによると、調印式は「中国湖北-日本経済貿易協力説明会」の席上で行われていた。説明会のプログラムに「中国湖北―日本関西の川海連絡輸送一帯一路連通提携プロジェクト」という記載があるため、SNSを中心に提携関係の妥当性が疑問視された。

大阪港湾局によると、2021年11月に武漢新港管理委員会から大阪港湾局へ協力関係の構築について打診があり、12月に調印式が行われた。

大阪府議会の西村日加留議員(自民)は提携関係を結んだことによって、大阪港及び大阪府営港湾は「一帯一路」に組み込まれているのではないかと危惧している。

大阪港湾局の担当者は、「武漢新港と情報交換を通じて、競争力強化につながればと思っている」と提携はあくまでも交流目的だと強調し、中国の巨大経済圏構想「一帯一路」との関連を否定した。

「一帯一路」は発展途上国のインフラ整備を支援し、広域の共同体を構築する中国の国家プロジェクト。しかし、参加国に経済規模にそぐわない巨額の債務を負わせる「債務のわな」や、地元住民が恩恵を受けられない事例が発生するなど、問題点も多い。

中国肝煎りの一大戦略

同プロジェクトは19年11月に始動し、武漢市を中心に、同市を流れる長江や日本の海路を経由して大阪、名古屋、神戸を結び、コンテナを直接輸送する国際輸送ルートである。欧州や「一帯一路」沿線国を結ぶ国際貨物列車「中欧班列」と接続する。中国側は、国際輸送の中継を実現し、「日本ー武漢ー欧州(中央アジア)」のグローバル物流クローズド・ループを形成し、東アジア・中央アジア・欧州を跨る新たな国際物流通路の構築を目指している。

湖北日報の昨年12月17日付は、今後日本側の延伸も計画しており、横浜港、東京港がその対象に含まれると明らかにした。

中国政府は武漢市を国家物流ハブに作り上げようと計画している。長江の中流に位置する武漢は、中国政府が打ち出した「中部地区の勃興戦略(中国語:中部崛起戰略)」の重要都市でもある。

湖北省内を流れる長江の流域には18カ所の河川港がある。同省政府は14年に「武漢新港を中心に省内の港湾資源を統合、河川物流の中核に成長させる」との目標を掲げ、近年、港湾機能の強化に取り組んできた。

20年1月、当時の国民民主党の国会議員は同プロジェクトを視察するため武漢新港を訪れ、同港管理委員会トップの張林氏から説明を受けた。張林氏は同議員に日本政府の支援を要請した。

今回のパートナーシップ関係の締結は日本でほとんど報じられていない。一方、中国では人民日報電子版(日本語)、地元主力紙の湖北日報が調印式を詳しく報じたほか、在日中国大使館のホームページや多くの中国メディアにも転載された。

昨年12月に北京大学などが作成した「一帯一路動態評価報告」も、日本と提携関係を結んだことを「一帯一路における国際経済貿易合作の事例」として取り上げた。

こうした扱い方の違いから、日本側に一帯一路に参加した認識がなくても、中国側は「参加した」と見なし、宣伝している可能性がある。

日中間のずれは、表記の違いにも現れている。調印式では、中国語版のプロジェクト名(中国湖北—日本関西江海聯運帯路互通合作協議)には「帯路(一帯一路)」の文言が入っているが、日本語版(中国湖北-日本関西地域のSea&River一貫輸送相互通航協力プロジェクト)には入っていない。

西村議員は「中国側が国益のために様々な施策を展開しているが、日本側はノーガードで受け入れるのは致命的だ」とし、今後も政府に対して説明を求めていくとした。

追記:2022年5月19日午後3時に一部内容を追加いたしました。

張哲
張哲
高遠