交流の名の下に 日本で進む中共の文化浸透

2025/09/24 更新: 2025/09/26

中国共産党(中共)による文化的浸透は、友好交流の名を借りて日本を含む自由社会の基盤を侵食している。日本では382件の友好都市提携(日本国自治体国際化協会北京事務所、2025年8月時点)、日中友好協会、13校の孔子学院が存在し、地域社会から学術界にまで広がっている。長年日中文化交流に携わった画家の宇宙大観氏は「日本ほど複雑かつ広範に中共の影響が広がっている国はない」と語り、米中関係を研究する法学博士の鄭存柱氏も「浸透は生活の隅々に及び、隠蔽的だ」と警告する。

友好都市と地域への浸透

宇宙大観氏によると、戦後の日本社会には、戦争への反省と中国に対する負い目が根強く存在した。だが、中国共産党と国民党、そして中国人民という複雑な概念を区別することはできず、中国全体を一括して「中国」として捉える傾向が強かった。

「その結果、日本人の間には懺悔と関係修復の思いが生まれた。さらに日本文化は中国から大きな影響を受けたこともあり、中国文化への愛着や山水風景への憧れ、中華料理やパンダへの好意といったものが、すべて『日中友好』という大きな枠にまとめられてしまったのだ」

このような状況で、人々に「細かく慎重に区別せよ」と求めても、一般にはなかなか難しい。そこへ共産党が入り込み、混乱に乗じて立ち回った。宇宙氏自身も交流に関わってきたが、「中国に行っても真剣な議論が交わされることはほとんどなく、結局『日中友好』という言葉のもとで曖昧なまま流されてきた」と話した。

経済的働きかけ

中共は経済的利害関係を通じて人々を取り込んできた。宇宙氏は「日中交流に関わる人々には、純粋な善意から交流を進める人と、金銭や利害で結び付けられた人がおり、その両面を持つ者も多い」と指摘する。

その上で「多くの人が本来は善良な意図を持って日中交流に携わっていたが、しかし、やがて中共の思惑どおりの人間に変えられていき、中共の代弁者となり、中共に便宜を図る存在へと変わってしまう可能性がある」と警鐘を鳴らした。

さらに日本国内では、ほぼすべての自治体に中共系の文化交流協会や友好都市提携が存在することに言及した。文化交流事業は表向き「友好」の姿をとるが、実際には影響力拡大の手段との見方が強い。

中国では、独立した意志を保ち続けることは難しい。多くの活動は政府の承認を経なければ進められない。

宇宙氏は「この過程でさまざまな仕掛けが組み込まれる。そうした圧力に耐えられる人は多くなく、自主性を保てなければ、少なからず中共の代理人や代弁者となり、中共の意向に従って動かざるを得なくなる。実際には、中共が許容する範囲の中でしか活動できず、その要求に沿って動く形になってしまうのだ。さらに孔子学院をはじめ、数え切れないほどの組織が存在している。全体を整理すれば、中共による対日浸透は世界で最も深刻であると言わざるを得ない」と危機感を募らせた。

学生交流という名のプロパガンダ

中国の文化交流事業は表向き「友好」の姿を装うが、実際には影響力拡大の手段との見方が強い。オーストラリアでは孔子学院が監視対象となり、アメリカでは学問の自由やスパイ活動への懸念から閉鎖が相次いでいる。それでも世界全体では160以上の国・地域に550を超える孔子学院が活動中で、日本でも13校が存在するとされる。

習近平が2023年11月、サンフランシスコ訪問の際に「5年間で5万人のアメリカ青少年を中国に招く」と発表。

2024年夏にはデューク大学などの学生が中国江蘇省で交流プログラムに参加した。しかし交流に参加した学生によると、中国へ出発する前に「5年5万人」構想について聞いたことがなく、自身の交流がその一環であることも知らされていなかった。現地での行程は宣伝色が濃い内容だったという。

滞在費用は全額無料で、さらに航空券代も支給。学生らは到着直後から中国メディアに取り囲まれ、発言を誘導される場面もあったと証言した。

長年米中関係を研究してきた法学博士の鄭存柱氏は「浸透はスパイ活動にとどまらず、日常生活の会話や友人グループの中にまで入り込んでいる」と語った。

「中国は歓迎の姿勢を示すが、実際の行程や会う相手、訪問先はすべて綿密に決められている。本当の中国を知ってもらうのではなく、『彼らが見せたい中国』を体験させることが目的なのだ」

一方、中国人学生がアメリカに留学すると、高い自由が与えられ、幅広い情報や社会的視点に触れることができる。その経験は、いわゆる「壁の内側(中共の情報統制下の社会)」にいる若者が西側の民主主義や自由を理解する助けになると指摘した。アメリカ人学生が中国本土を訪れる場合について「それは対等な交流ではなく、一方的な言論のコントロールにすぎない」と注意を呼びかけている。

留学生と企業を通じた浸透

元中国法学教授の袁紅氷氏は、国費で派遣される中国人留学生について「派遣前に中共国家安全部と秘密協定を結ばされ、海外で得た情報を報告する義務を負うだけでなく、中共の党文化を広める役割も課されている」と指摘した。交流学者や科学者、人文分野の研究者も同様に、この任務から逃れられないという。

また、一帯一路を通じて設立された海外の企業も、経済活動の拠点であると同時に「党文化を世界に広める拠点となっている」と述べ、こうした文化的浸透は深刻な脅威だと強調した。

教授はさらに「もし人類文明全体が党文化に浸食されれば、共産党による全体主義的な拡張は人類の未来に計り知れない脅威をもたらす」と警鐘を鳴らした。

その上で「21世紀の人類の未来は、共産党文化に支配されるのか、それとも自由・民主・法治・人権といった普遍的価値が主導するのかという問いが、すでに鋭く突き付けられている」と語った。

清川茜
エポックタイムズ記者。経済、金融と社会問題について執筆している。大学では日本語と経営学を専攻。