衆院選で、高市首相率いる自民党が圧勝した。日本のメディアは、選挙期間中にX上で、大量の中国系アカウントがAIで作成したコンテンツや画像を使って高市政権の印象を下げる投稿を行ったと報じた。このことは、日本のメディアのみならず政界にも波紋を広げている。中国共産党(中共)による認知戦はもはや台湾にとどまらず、今後、民主主義国家が直面するのは「ネット工作部隊」ではなく「アルゴリズムによる統一戦線」になるとの見方が出ている。
日経新聞は2月22日付の独自報道で、今年実施した衆院選期間中、前例のない規模の情報拡散が発生していたと伝えた。報道によると、X上で約400件の中国関連アカウントが、組織的に「反高市」メッセージを拡散し、高市政権の信頼性を下げる印象づけを行ったという。
この報道は日本国内だけでなく、国際社会に対しても中共が認知戦(偽情報やSNSを駆使し、敵対する国家の市民や指導者の認知「思考・感情・判断」に働きかけて分断や誤認を誘発し、行動を変容させる情報戦の新たな形態)を仕掛けていることを改めて浮き彫りにした。中共の認知戦はすでに台湾情勢の他に、より国境を越えた組織的な干渉手法へと進化しているのだ。
台湾国防安全研究院の沈明室研究員は「これまで台湾も、中共によるさまざまな経路やテーマを通じた情報拡散の影響を受けてきた。主に民進党などの与党への攻撃だ。台湾と中国は文字が同じため、中国側は繁体字を簡体字に変換するだけで済む。しかし、X上の中国語投稿が日本にどのような影響を及ぼすかは不明だ。むしろ、国内向けプロパガンダの一環として、中国の人々に対し、高市早苗氏や自民党に否定的な印象を与える狙いも考えられる」と述べた。
分析によると、これらのアカウントは高度に組織化している。個人の単発的な投稿ではなく、AI生成画像や「高市退陣」「国民の裏切り者高市早苗」などの特定ハッシュタグを使って、精密に拡散していたという。
沈明室氏は、日本が台湾と極めて類似した中共による統一戦線宣伝や認知戦に直面しているとの認識が広がっていると指摘した。「日本側は台湾から対応策を学ぼうとしており、日台のサイバーセキュリティ協力は一層緊密になった」と考えている。「これは中共にとって逆効果だったと言える」と述べた。
日本政界では、中共による統一戦線宣伝と認知戦が緊迫した国家安全保障上の脅威であるという認識が強まった。この危機意識が、日台協力を一層強める契機となっている。
台湾では、ネット工作員対策やファクトチェック体制の構築、政府と民間団体の長期的な連携モデルづくりなどが進められている。これらは日本各界の参考にもなっている。中共の介入行動は短期的には混乱をもたらすが、長期的には民主主義国同士の防衛協力をより強化する結果を生み出す。
沈明室氏は台湾における中共の手口を紹介した。「主に台湾内部の民衆や異なる政党、さらに中国本土で事業を行う台湾企業に対して、毎日のように宣伝資料を送信している。また、『コンテンツファーム』の仕組みを通じて、台湾の多数のSNSに曖昧な言説や中傷・デマ情報を流し、社会情勢の変化に合わせて迅速にネット上のデマを作り出している」
元日本特派員もFacebookへの投稿で、この調査報道は台湾の今後の地方選挙にとって重要な参考になると指摘した。特に警戒すべきなのは、一見すると地域や個人を装った現地アカウントのように見えるものの中に、実際には中国系の認知戦アカウントの特徴を強く持つものが多い点だ。
台湾国防安全研究院の謝沛学副研究員は「中共はSNSなどを通じ選挙介入を行っており、その手法は高度に体系化された運用となっている。台湾やアメリカをはじめ、複数の民主国家でこのような事例を確認している」と述べた。
また、「台湾では最大規模かつ最も深刻な認知戦を受けている。中共は台湾内部の矛盾を増幅させることに注力している。選挙が近づくと関連アカウントが活発に情報操作を行う」と付け加えた。
2024年末から2025年初頭にかけて、中国の復旦大学とSNSの小紅書(「レッドノート」とも「中国版Instagram」と呼ばれるソーシャルコマースプラットフォーム)のエンジニアが共同で発表した研究では、単なる技術論文ではなく、中共の認知戦が受動的な拡散から能動的なシミュレーション段階へ移行する転換点になったとしている。
謝沛学副研究員は、「彼らはXの公開アカウント100万件と小紅書の900万件の投稿データを利用し、1千万以上のAI仮想人格を生成して台湾の社会状況をシミュレーションした。そのうえで、さまざまな統戦戦略や言説がもたらす影響を検証している。まるで実験室のような仕組み。つまり、認知戦は単なる情報拡散から、社会と世論の反応をシミュレーションし、精緻な戦略を設計できる」と指摘した。
評論家らは、この研究が明るみに出たことで、日本で最近確認した組織的な「反高市」キャンペーンの背景を説明できると指摘した。台湾でのシミュレーションが成熟した後、日本に転用した実地運用だった可能性もある。
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