チベット文化に関する演劇舞台は昨年、予定された英国の劇場で「経済的な理由」によりキャンセルされた。しかし、実際は中国共産党政府からの圧力に屈した劇場側と、英国芸術当局の判断であったことが最近、報道により明らかになった。国際的な批判を受けて劇場側はチベット側に謝罪し、中止となった舞台は2019年春に上演することを約束した。
インド在住の劇作家アビシェフ・マジュンダール(Abhishek Majumdar)氏による演劇作品「パ・ラ(Pah-La)」は、現代のチベット人の生活や、ダライ・ラマ14世を含むインド亡命のチベット人について舞台で表現する内容だ。
チベットは1950年頃、中国共産党の人民解放軍に「チベットの解放」の名目で侵攻を受けた。以後、漢民族の大量流入や言語や信仰の弾圧などの民族同化政策により、チベット文化は「風前の灯火(ともしび)」と人権専門家らは危惧している。
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英紙タイムズによると、ロンドンのロイヤルコートシアターで2017年10月~11月に上演予定だった同舞台について、劇場側が英国文化振興会(ブリティッシュ・カウンシル)に、中国との外交の影響を相談していたことが明らかになった。
記事によると、劇場側は、舞台公演の時期に中国で「重要な政治会議」である第19回党大会が開催されることや、中国にいる英国文化振興会に所属するアーティストの活動への影響を懸念していたという。
劇場側の質問に対し、英国文化新興会の中国および東アジア担当者は次のように回答した。「正直、パ・ラがロイヤルコートシアターで上演されることは、中国での仕事および中国との関係をリスクにさらす恐れがある」。これを受けて劇場側は舞台のキャンセルを決定した。
2018年2月、舞台のキャンセル要因が報道により暴露されると、チベット弾圧側に立ったとして批評を巻き起こし、ロイヤルコートシアターはチベット人のコミュニティに謝罪した。また、2019年4月に舞台の上演を約束した。
中国ビジネスの取引規模が増大するなか、欧米企業は中国共産党が目を光らせる領土や信仰、人権、政治問題について慎重な態度を示す傾向が強まった。オンライン言論サイトを運営する英国の「ケンブリッジ・ジャーナル」は、チベット、台湾、文化革命に関する記事300本を一時取り下げた。国際的な航空会社やメーカーは、チベット、香港、台湾を「国家」と表現したことで謝罪に追い込まれた。米ホテル大手マリオットホテルは、チベット独立の動きを支持するイベントに「いいね!」を押した従業員を解雇した。
(編集・佐渡道世)
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