中国電子技術大手のZTEは、中国共産党の対外ソフトパワー戦略の一環組織である孔子学院と10年以上協働しているという。米メディア、デイリービーストが報じた。
それによると、ZTEは長年、孔子学院のスポンサーとなっている。学院で使用されている遠隔操作教育ツールなどを無償提供し、交換留学イベントを共同開催してきた。
デイリー・ビーストによると、ZTEは、2005年にフランスのポワティエ大学で孔子学院を共同設立し、遠隔学習機器を提供した。
2010年10月には、ギリシャのアテネ大学でビジネス孔子学院が設置され、ZTEは同様の機器を提供した。当時の中国・温家宝首相と当時のギリシャ首相で、全ギリシャ社会主義運動党党首ゲオルギオス・パパンドレウ氏は開設式に出席した。
中国教育部(文部省に相当)が中国から教員を派遣し、教育部の指導に沿ってカリキュラムが決定される孔子学院。その内容は、言論や思想の自由を否定し、共産主義を拡散しているとして、米国やカナダ、欧州の専門家から問題点を指摘されている。
これまでに、米国ではテキサスA&M大学、シカゴ大学、ペンシルベニア州立大学、スウェーデンのストックホルム大学、カナダのマクマスター大学などが孔子学院の契約解除を決めた。
孔子学院は表向き「非営利の教育機関」としているが、対外宣伝工作組織・中国共産党中央統一戦線工作部(以下、統戦部)のトップ、劉延東・現副首相が、総責任者を務めていた。統戦部は、数千万人にも及ぶ在外華人や留学生の思想指導や情報収集にあたる。
2018年2月13日、アメリカ連邦議会上院の情報委員会の公聴会でクリストファー・ライFBI長官は、孔子学院について、スパイ活動などの違法行為に関わる疑いで捜査対象にしていると公言した。
ソフトパワーについて、中国国営メディア新華社通信の副社長・魯〇(火へんに韋)氏は2010年、同紙寄稿文で次のように例えている。「国の要求に基づいて、全世界のあらゆる地域の正しい情報をリアルタイムで収集する…タイムリーに、かつ完璧に収集できれば、大きなコミュニケーション能力に変わる。これは影響力を持つようになる。つまりソフトパワーである」
中国国務院の説明によると、孔子学院の目的は「核心価値である社会主義を基礎とした教育を広める」「中国の夢を宣伝する」としている。
日本の政権与党である自由民主党は、昭和30年(1955年)11月公表の基本文書「党の性格」のなかで、「階級独裁により国民の自由を奪い、人権を抑圧する共産主義、階級社会主義制力を排撃する」とある。しかし、日本の14大学に設置されている孔子学院について、明確な「排撃」行動は起こしていない。
2018年2月26日、衆議院予算委員会で自民党の杉田水脈議員は、FBIがスパイ容疑の捜査対象となっていると前置きした孔子学院について、文部科学省に対応を確認した。文部科学省高等教育局長は、全国の学院設置数の回答にとどまり、それ以上の回答はなかった。担当する部署もないことが杉田議員により指摘され、対策不足が浮き彫りとなった。
(編集・佐渡道世)
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