新疆ウイグル自治区では、何もない砂漠地帯に相次ぎ、刑務所に似た構造の収容施設が建てられている。英BBCの取材チームは10月、現地調査を敢行した。
BBCによると、取材チームはウルムチ空港の到着から移動中、少なくとも5台の警察や政府当局の車両に追跡され続けた。また、ウルムチから100キロ離れた達坂城区にある収容施設の近くで、撮影禁止を要求された。
記者が見た収容施設には16の監視塔が建てられており、敷地が鉄の網に囲まれている。出入口は少ない。
2015年まで、現在の収容施設の建つ達坂城の土地は何もない更地だった。しかし、衛星写真には2018年4月に大型収容所が姿を現し、同年10月までのBBCの現場撮影によれば、更なる拡張工事が行われている。
当局の監視により、BBC取材チームは新疆の現地住民に直接カメラを向けることが困難と判断し、電話取材を行った。「(思想の)再教育施設だ」「中には数万人が収容されている。思想の問題らしい」と住民らは答えた。
欧州宇宙機関(ESA)や欧州委員会から、宇宙インフラの監視を委託されている多国籍航企業GMVは、新疆を撮影した衛星写真を分析した。同社によれば、新疆には監視塔や脱走防止柵のある44の、刑務所に似た大型収容施設が確認できるという。
別の刑務所構造に詳しいオーストラリアの専門家によれば、達坂城の施設の寮には「小さな空間にできるだけ多くの人を詰め込めるように」推計で14万人が収容可能な造りになっている。
現地政府、警棒や催涙スプレー大量注文
中国当局は対テロ対策や過激思想の矯正を口実に、これらの施設を「職業訓練センター」と称し、大規模な収容を正当化しようとしている。
AFP通信は10月25日、新疆ウイグル自治区ホータン県政府の購入品リストを入手したと伝えた。リストは2018年初めの注文内容で、警棒2768本、棒状のスタンガン550本、手錠1367組、唐辛子スプレー2792缶が含まれていたという。ほかにも催涙スプレー、監視機器、有刺鉄線が記載されている。AFP通信は、大規模な「職業訓練センター」の管理に関連している可能性があると伝えた。
中国国営メディア環球時報英字版の総編集長は10月24日にSNSで、新疆ウイグルの収容所の内部を撮影した2分間の動画を公開した。入所者は、統一された作業着を着て、屋外の運動場で卓球したり、ダンスしたりしている様子が映っている。この動画を見たネットユーザーからは、「北朝鮮のように、内部の人々が幸せに暮らしていると言いたい古典的なプロパガンダ」「本人たちへの取材が許されない閉鎖性」など批判的なコメントが相次いだ。
英フィナンシャル・タイムズが報じた、ドイツ拠点の世界ウイグル会議ドルクン・イサ代表の話によると、ウイグル自治区では両親が当局者に拘束されたことで孤児状態になった子供がいる家庭は、数千件に上るという。
100万人が拘束中とされる収容施設について、米ペンス副大統領は10月初めの演説で「新たな迫害の波」と例えた。米ポンペオ国務長官もまた9月、収容者は「重度の政治的な洗脳をはじめとする虐待に耐えている」「宗教的信仰を奪われている」と強い論調で批判している。
超党派の米議員は、国務長官とムニューシン財務長官に宛てた書簡の中で、収容に関わる中国当局者らに制裁を科すよう求めた。
(編集・佐渡道世)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。