情報サービス世界大手グーグル(Google)は、中国のAI開発戦略に積極的に協力している。トランプ政権は、中国における技術協力は軍事利用される危険性があると警告を発している。
トランプ大統領は7月26日、ツイッターで「グーグルの中国における技術研究に国家安全保障の問題が見つかった場合、調査しなければならない」と警告した。
グーグルが2017年に設立したアジア初のAI研究所「中国AIセンター」の公式ホームページは、「世界トップレベルのAIおよび機械学習の専門家と、中国の研究者との協力を促進する」と説明している。共同センター長には、米スタンフォード大学職員の李飛飛氏(リ・フェイフェイ、42)が就任した。李氏はグーグルの元上級幹部。
李氏は16歳で渡米し、AI研究を評価され2016年11月に米国グーグルの要職に就いた。2018年9月に離職し、その後スタンフォード大学の教職に就いた。しかし、同時に、李氏は中国政府が支援する学術研究プロジェクトに複数関わっている。
李氏は、西側諸国の最新技術を持つ専門家や技術者を厚遇で中国へ招き入れる中国共産党主導のリクルート計画「千人計画」に参加し、米国から中国に戻った一人でもある。
米国は、中国の「千人計画」はスパイ活動の一環とみて、監視している。これまで、連邦政府の企業秘密を盗んだ罪で起訴された数人の中国人は、このプログラムの参加者だった。
グーグルは2006年に中国市場から撤退した。しかし、グーグルは今も人工知能(AI)に関連する多くの技術研究プロジェクトを中国で維持している。同社は北京、広州、上海、深センに事務所を構える。
中国の科学者を雇用するグーグル
中国科学院は2019年6月28日、グーグルが雇用する中国系カナダ人のAI研究開発者・翟樹民(ザイ・スーミン)氏による、研究論文を掲載した。翟氏は、他の研究員と協力するために北京を訪問している。
論文は、AIにより素早く、高精度で標的を定める技術について書かれている。サウスチャイナ・モーニング・ポストは匿名の2人の中国人研究者の話によると、軍用価値の高い技術だという。戦闘機パイロットまたは防空ミサイルの操作者が、タッチスクリーンを利用して高速かつ正確にターゲットを射程範疇に入れるためのAIの開発だという。
さらに2人によると、この技術は中国の最新ステルス戦闘機、殲20(J-20)にも採用されているという。中国科学院は発表当初、この研究目的は「軍事、医療、教育、デジタルエンターテイメント、その他」としていたが、後に「軍事」を削除した。
グーグルは、サウスチャイナ・モーニング・ポストの取材に対して、「軍事」目的の研究ではないと否定した。「ユーザーがタッチスクリーン上の対象物との反応を向上させるためのもの」とした。
北京にある清華大学とグーグルによるAI研究所
グーグルはすでに、中国で最も権威ある科学研究の清華大学が設立した、軍事用のAI開発を目的とした研究所にも協力している。
中国教育省の機関紙、中国教育報2018年6月8日に掲載された、清華大学副学長・尤政氏の文章によると、同大は中国中央軍事委員会の科学技術委員会から1億元(15億円)以上の資金を受けて、「有人機と無人機共同作戦向けのAI理論と重要技術」について研究するプロジェクトを進めている。同大には90年代から複数のAI研究プロジェクトを設置している。
尤政氏は、「清華大学は中央政府に従い、軍民融合という国家戦略とAI超大国戦略とを密接に合わせていく」と述べ、大学が共産党当局の軍事戦略に従うことを表明している。
グーグルは、尤政氏の文書が発表されてまもない6月28日、清華大学内で「清華グーグルAI合同シンポジウム」を開催した。主催は清華AI研究所と、グーグルの中国AI研究所。
AI開発は共産党政権が最重要視するハイエンド技術のひとつ。中国国務院は2017年、2030年までに「AIの世界リーダーになる」ための詳細な計画を発表した。国内で1500億ドル規模の市場の構築を目指すという。
(翻訳編集・佐渡道世)
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