11月14日に医療専門誌「BMC医療倫理(BMC Medical Ethics)」に掲載された報告によると、中国の自由意志に基づくドナーの数は操作されており、強制的な臓器収奪の新たな証拠であると指摘した。
報告はイスラエルの著名な心臓移植医ジェイコブ・ラビィ(Jacob Lavee)氏、豪州の統計学博士レイモンド・ヒンディ(Raymond Hinde)氏、調査ジャーナリストのマシュー・ロバートソン(Mathew Robertson )氏らが共同執筆した。
報告は、中国が急速に発展したと主張する「合法的な臓器提供プログラム」に疑問を投げかけた。数字は適切な統計が行われておらず、水増しされ、国際組織や一般市民を欺いているという。また、もっとも適切な説明としては「臓器収奪という国際的な疑惑を払しょくするための数字の改ざん」とした。
2010年以降、中国は自発的な臓器提供と分配システムの改革に取り組んでいる。これは、刑務所や警察から提供されていた遺体の調達が、病院ベースに切り替えられたことを意味する。中国当局は2015年から、臓器の供給は唯一、病院からであり、自発的なドナーのみと発表した。
報告は、2010~18年に中国臓器移植応答システム(COTRS)と中国赤十字社によって公表された死亡臓器提供データを、法医学統計法を用いて調べた。
COTRSによると、2010~18年にかけて、自発的な臓器提供数は年間34件から6316件になり、185倍に増加した。移植された腎臓と肝臓は、2010年の63件から2016年の1万481件になり、166倍に増加した。
臓器移植の分配システムは、提供者ひとり当たり、心臓や腎臓、肝臓など各種臓器がそれらの移植希望者に分配される。中国赤十字社のデータ分析では、2010年1月1日~2017年12月まで、ドナーひとり当たり「平均2.75の移植臓器」を提供するように、8年余り、不自然にも数字がほとんど一致している。
調査者たちは、中国赤十字が報告するドナー数は、自発的ではない人、また臓器提供を強制された人が含まれており、「複雑で混同した移植プログラム」である可能性が高いとした。ドナー数は2015年末~2016年初め、そして2016年末~2017年初めに急増している。報告によると、家族と多額の現金で取引して遺体を「ドナー」にした例があり、これらも「自発的な臓器提供者」に含まれているという。
中国衛生部は、「死刑囚の臓器は使用しない」と宣言していたが、2015年1月に中国人体器官捐献与移植委員会主任委員で元衛生省次官の黄潔夫氏は中国国営テレビに出演した際「死刑囚が自らドナーを希望するなら、否定しない。提供の権利を奪わない」と死刑囚の臓器利用をほのめかした。
中国での臓器移植濫用停止国際ネットワーク「ETAC」広報担当スージー・ヒューズ(Susie Hughes)氏は、BMC掲載の調査報告について「中国の移植業界の嘘を暴露するものだ」とコメントしている。
年間10億ドルのビジネス
人道犯罪について第三者による調査と結果を示す「民衆法廷」の中国臓器収奪問題・最終裁定が6月17日、英ロンドンで開かれた。50人以上の証言と1年に渡る調査の結果、中国本土では「強制的な臓器摘出が、相当な規模で行われている」と結論付けた。主な犠牲者は、迫害されている法輪功学習者と推測する。
民衆法廷の報告によると、中国共産党による臓器強制収奪は「国家による大量虐殺」と例え、毎年10億ドルの利益を得ているとした。
9月下旬、国連人権理事会で、民衆法廷で陪審員役を務めたハミッド・サビ弁護士が、中国の臓器強制収奪についてスピーチし、即刻の停止を呼び掛けた。
中国の臓器移植産業は、病院、医療スタッフ、その他のインフラへの大規模な投資を基盤に発展した。2000年頃、法輪功迫害の始まりの時期と重なって、中国の臓器移植産業の活動が激増した。通常、十数年の待機時間を要するドナーからの臓器提供が、中国では、わずか数日で入手できる。中国の医療雑誌によると、緊急手術には4時間以内に移植用の肝臓が入手できたという報告がある。
国営病院を含む移植病院のウェブサイトには、「非常に短い待ち時間」の心臓、肝臓、腎臓、角膜の移植手術の広告が出始めた。国際的な追跡調査により、中国の移植用臓器の供給数は、合法的な自主的ドナー数のみでは埋まらないと指摘された。批判の高まりにより、2007年に中国は臓器移植法「人体器官移植条例」を制定し、臓器売買および移植目的で入国した外国人への移植手術を違法と定めた。
しかし、この中国臓器移植問題について10年以上調査を行っている有志組織「法輪功迫害追跡調査国際組織(WOPIFG)」によると、中国本土の移植病院ではいまだに数週間という非常に短い待機時間で移植手術が受けられるとの回答を得ていることなどから、臓器収奪が止んだという証拠はないとしている。
(翻訳編集・佐渡道世)
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