生物兵器研究所をめぐる偽情報にとどまらず、ロシアと中国は主に国内向けプロパガンダの内容を一致させている。「ウクライナの過激派が民間人を人間の盾として利用している」「ロシア軍は軍事目標しか狙わない」といったロシア側の根拠のない主張を中国は検証なく報道している。戦地取材を続けるAP通信によれば、ウクライナでは学校や病院、住宅地が砲撃を受け多数の民間人が犠牲になっている。
中国中央テレビ(CCTV)はロシア政府関係者の言葉を引用し「ゼレンスキー大統領が首都キエフを脱出した」と虚偽の報道をした。中国共産党機関紙・環球時報は、ロシアの国営メディア・RTを唯一の情報源として「侵攻初日に多くのウクライナ兵が降伏した」と伝えた。
これらのことから、中国国内の視聴者やネットユーザーが目にしている戦争は、世界のほとんどの国が報道している内容とは異なっていることが窺える。
中国共産党はまた、ロシアのプロパガンダにほとんど制限をかけず、戦争についてロシア寄りの国内世論形成を容認してきた。西側メディアや主要情報サイトを厳しく制限するいっぽう、ロシア国営メディア・スプートニクなどは微博で1160万人以上のフォロワーを抱える。
米政府系ラジオ・フリー・ヨーロッパ(RFE)はこうした状況について「中国共産党当局が国内の14億人に何を見てほしいかを物語っている」と指摘した。
中国の習近平国家主席とロシアのプーチン大統領は2月4日の北京五輪開幕日に行った共同記者会見で中露関係の「新時代」到来を告げた。ウクライナ侵攻後、北京はクレムリンと外交的に距離を置いているように見せたが、相互の政治宣伝の共有を見る限り、互恵を目指す戦略的な関係に変化はないようだ。
習近平氏とプーチン氏は長年にわたってさまざまなメディア協力協定に署名してきた。2015年以降は毎年、中露メディアフォーラムが開催されている。
欧州政策分析センター(CEPA)の昨年12月の報告書によると、中露はコロナ関連の偽情報とプロパガンダを広める上で中心的な役割を果たしてきた。同報告書は「互いのキャンペーンを借用し、増幅させた」と指摘した。
同様に、カーネギー・モスクワ・センターが昨年6月に発表した報告書によると、中露の国営メディアや当局者は世界の出来事についてしばしば同様の論調や筋書きを繰り返しているという。
これは「中露政府間の積極的かつ継続的な協力関係というよりも、中国(共産党)の関係者がクレムリンの手法を注意深く研究し、中国向けに適応させた結果だ」と指摘。中国とロシアが世界情勢における「戦略目標」を共有していることを示しているとした。
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