イーロン・マスク氏は4月25日、シリコンバレーの著名な極左企業であるツイッター(Twitter)を440億ドルで買収することで合意した。買収の動機は、言論の自由への支持と左派のキャンセル・カルチャー(Cancel Culture)への反対だと言われている。
この動きは、他の実業界のリーダーたちが左翼の「覚醒(woke)」した暴徒に立ち向かい、顧客と株主の利益のために会社を経営することに戻る道を開くかもしれない。しかし、それは簡単なことではないだろう。
他のシリコンバレー企業と同様、Twitterはこれまで左派に迎合する方向に動いてきた。最も恥ずべきことは、イランの最高指導者(アヤトラ)アリ・ハメネイ師やロシアのウラジーミル・プーチン大統領のアカウントには手を出さなかったにもかかわらず、ドナルド・トランプ前米大統領のアカウントを政治的立場を理由に閉鎖したことだ。
また、中国共産党を批判するツイートや新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する政府の方針を問うツイートなども検閲の対象となった。ジョー・バイデン氏の息子、ハンター・バイデン氏のノートパソコン・スキャンダルに言及したツイートも軒並みブロックされた。これは、バイデン氏の選挙戦に悪影響を及ぼす可能性があると見られていた。
このようなことはシリコンバレーでは当たり前で、Google、YouTube、Facebook、Instagramも同様な検閲を行っている。Amazonは『A Parent’s Guide to Preventing Homosexuality(仮邦訳:同性愛を防ぐための親の手引き)』など、右寄りと思われる書籍を取り下げた。Appleは、保守系ラジオDJのアレックス・ジョーンズ(Alex Jones)氏のポッドキャスト番組「インフォウォーズ」を「ヘイトスピーチ」として率先して削除した。
彼らは皆、ブラック・ライブズ・マター(BLM)などの左翼運動を支持している。Facebookは人種差別撤廃団体に1000万ドル、YouTubeは黒人クリエイターに1億ドルを寄付し、AppleとGoogleは人種平等活動に数億ドルを寄付している。ちなみに、BLMは寄付金の不正使用の疑いで、カリフォルニア州から差し止め命令を受けたため、寄付を受け付けることができなくなった。
Amazonのジェフ・ベゾス最高経営責任者(CEO)も左派のワシントン・ポスト紙を買収し、経営している。Facebook創業者のマーク・ザッカーバーグ氏はオバマ選対本部の総責任者だったデヴィッド・プラフ氏の助言で、2020年の大統領選で(主に民主党支持の選挙区での)開票作業のために4億ドル以上を非営利団体に寄付した。
これらの企業は、左派をなだめるために、自らの利益に反する行動をとっているように見える。トランプ氏が大統領になった時ほど注目されたことはないTwitterだが、トランプ氏の個人アカウントを永久凍結してしまった! これがきっかけで、競合のParlerが誕生した。YouTubeがCOVID-19の情報を検閲したことで、新たなライバルRumbleが生まれた。
これらの実業界の大物や産業界の巨頭たちは、本当に左派なのだろうか?彼らは大きな政府、社会主義、検閲、そして覚醒主義(wokisme、左翼文化運動)がアメリカにとって最善の道だと本当に信じているのだろうか?ありそうもない。実際、内部関係者はザッカーバーグ氏がそうではないことを明らかにした。政治的なスタンスとしては、リバタリアン(自由至上主義者)と表現するのが適切だろう。では、なぜ彼らは左翼を支持するのだろうか。理由は3つあると考えられる。
第一に、彼らは自分の財産を守ろうとする億万長者であること(ベゾス氏の推定保有資産額は1850億ドル)。階級闘争を煽り、 「所得格差」 に執念深い左翼にとって、彼は当然のターゲットである。さらに、左翼の意見に反対すれば、ターゲットにされる。左翼を支持しているとはいえ、ベゾス氏は依然として大きな標的になっている。
「ウォール街を占拠せよ」 や「ブラック・ライブズ・マター」 の集会では、抗議者たちが「ベゾスに課税せよ」と書かれたプラカードを掲げていた。自宅前でも何度かデモが行われた。ベゾス氏が自社のロケットで宇宙に行ったとき、「ジェフ・ベゾスを地球に帰すな」 という嘆願書には、数万人が署名した。彼らは彼の高級スーパー「ホールフーズ・マーケット」を略奪した。そのため、左翼に媚びることは、自分たちの富と安全を守ることだと考えているのだ。
第二に、検閲を要求するのは左翼である。左翼は、アメリカ文化を左翼思想に置き換えるために「キャンセル・カルチャー」を発明した。彼らは反対意見に対して、無知な大衆が近づいてはいけない陰謀論のレッテルを貼った。そして、認められた記述と矛盾するCOVID-19の情報は危険だと主張している。左翼の政治家からは、こうしたものを検閲するよう圧力がかかっている。だから当然、企業はそれに従うことになる。
第三に、シリコンバレーの巨大な労働力は、そのほとんどが左翼に洗脳されたミレニアム世代で構成されている。彼らは高い給料だけでなく、ストレスの少ない、柔軟性のある働き方を求めている。彼らにとっては、出社しなければならないのであれば、オフィスには卓球やプールなどのレクリエーション施設、注文を受けてから作るカプチーノ、17時以降の生ビールなどがなければならない。また、経営陣には社会正義に関する意見を共有することを期待している。そうでなければ、経営陣の退陣を求めることになる。
Facebookに20億ドルで売却されたOculus VRの共同創業者、パルマー・ラッキー氏の追放はその適例である。売却後、ザッカーバーグ氏はラッキー氏に事業の統括を依頼した。ラッキー氏は2016年の大統領選で民主党候補ヒラリー・クリントン氏に反対する団体に1万ドルを寄付した。これを知ったFacebookの社員は大騒ぎになった。
ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)紙は2018年11月、ザッカーバーグ氏がラッキー氏の公開謝罪文を起草しなければならなかったと報じた。そこには「Oculusとパートナーの方々の気持ちを傷つけた私の行動を深く反省しています」 と書かれていた。それから半年も経たないうちに、ラッキー氏はFacebookから追い出された。
数十億円規模の英バイオテクノロジー企業ロイバント・サイエンシズ(Royvant Sciences)の最高経営責任者ヴィヴェック・ラマスワミ氏も、保守的な考え方に反発する従業員の抗議により辞任に追い込まれた。彼はその後、『Woke, Inc.: Inside Corporate America’s Social Justice Scam(仮邦訳:覚醒会社= アメリカ企業の社会正義詐欺の内幕)』という本を執筆。同書では、辞任の理由をこのように説明している。
「『正義の味方』を装いながら金儲けに走るアメリカ企業のゲームにうんざりしていた。それはアメリカの民主主義を静かに破壊している。社会にとって何が良いことなのかを、民主主義全体ではなく、一部の投資家や最高経営責任者が決定している。(中略)覚醒主義は、アメリカの資本主義を乗っ取ってしまった」
マスク氏も似たようなことを言っている。「覚醒主義は、その根底において、分裂的で、排他的で、憎しみに満ちている。卑劣な人々はそれを使って偽りの美徳を装い、卑劣かつ残酷な行為を行っている」
Twitterを買収することで検閲を制限し、言論の自由を促進しようとするマスク氏の取り組みは、他のハイテク大手からも大きな注目を集めることになるだろう。もし彼が目的を達成できれば、他の企業に方向転換する勇気を与えることができるかもしれない。左派はそれを承知で、マスク氏への攻撃を強めている。マスク氏の取り組みが達成され、状況が改善されるまでは、厳しい戦いが続くだろう。
執筆者プロフィール
ジェームズ・ブレスロ(James Breslo)
公民権弁護士で、ポッドキャスト「Hidden Truth Show」 のホストを務めている。国際法律事務所Seyfarth Shawのパートナー、上場企業の社長を経て、現在に至る。Fox NewsやCNNに法律の専門家として何度も出演している。
オリジナル記事:英文大紀元「Musk Twitter Purchase Could Wake Up the Woke Silicon Valley」
(翻訳・王君宜)
ご利用上の不明点は ヘルプセンター にお問い合わせください。