米マイクロソフトの検索エンジン「Bing」が北米で、中国政府が「政治的に敏感」と見なす中国人の氏名を検閲している。カナダ・トロント大学の研究グループ「シチズンラボ(Citizen Lab)」が19日に発表した調査報告書で明らかになったものである。
それによると、Bingの自動提案システムによる個人名の検閲を分析したところ、ポルノに関連する名前のほか、中国共産党の指導者や反体制派の名前が最も多く検閲されていることがわかった。
シチズンラボは、2021年12月に中国本土、カナダ、米国で同時にBing検索のテストを開始し、中国語や英語の文字による検索結果から検閲の有無を検証していた。
調査によると、米国では、「中国政治」というカテゴリーに関連する中国語の検索がBingによって検閲される確率は93.8%であるのに対し、中国政治と無関係な中国語の検索がBingによって検閲される確率はわずか6.2%であることが判明した。
報告書はこの結果について、「Bingは米国で政治的に敏感な中国語の名前をターゲットにして検閲を行っていることがほぼ確定した」としている。
中国本土、カナダ、米国では、中国の政治家の名前を含む中国語は、ほぼ検閲されている。その中には、習近平などの現職指導者、温家宝などの引退した高官、周永康などの政治スキャンダルや権力闘争に関わった元高級幹部などが含まれている。
シチズンラボは、中国ではマイクロソフトが中国の法的規制に従ったため、検閲を行っているが、「米国とカナダではBingの自動提案機能を使ってこれらの名前を検閲する法的根拠はない」と批判した。
これに対し、マイクロソフト社の広報担当者は、IT系ニュースサイトMotherboardに送った声明の中で、「設定ミスにより、ごく一部のユーザーには有効な自動提案コンテンツが表示されなかったことがある」と釈明し、問題はすでに解決したとした。
21年6月、Bingが「タンクマン(戦車男、天安門事件の象徴となった戦車の前に立ちふさがった男性)」の画像検索を検閲していると指摘された。当時、マイクロソフト社はこの問題を「偶発的な人的エラー」によるものだとした。
シチズンラボは、マイクロソフト社の対応について楽観視していない。報告書は、「今回の調査結果は、インターネットプラットフォームが、一部のユーザーを対象に検閲を行いながら、別のユーザーに表現の自由を提供することは不可能だと改めて示すものである 」と指摘している。
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