太陽光パネルの生産過程とサプライチェーンで、ウイグル人への強制労働と人権侵害が指摘されている。3月に行われたハドソン研究所の対談で、同研究所のヌーリー・ターケル氏が英シェフィールド・ハラム大学教授のローラ・マーフィー氏とこの問題について意見を交した。
マーフィー氏は2021年の報告書「In Broad Daylight」のなかで、新疆ウイグル自治区は太陽光パネル向けポリシリコンの生産シェアで世界全体の約45%を占めると指摘している。さらに、中国のポリシリコン産業は約5年前に新疆にシフトしたと述べた。安価な石炭エネルギーに魅せられただけでなく、ウイグル人の 「余剰労働者」 を強制的に利用するための補助金など、金融や税制の優遇措置も理由に挙げられている。
「ウイグル地域のすべてのポリシリコンメーカーは、労働力移転プログラムへの参加を報告し、また原材料メーカーから供給を受けている」と、報告書の要約に記している。
バイデン米政権は新疆における人権侵害を「ジェノサイド」と非難するほか、強制労働を理由に新疆からの輸入を全面的に禁止する「ウイグル強制労働防止法案」を成立させた。
「中国の強制労働に関与している企業が、この人権危機への加担から手を引くために何ができるかを検討しなければならない」とのターケル氏の発言に対して「今日、企業として責任ある行動をとるには、その地域から完全に撤退するしかない」とマーフィー氏は指摘した。
「労働力の徴用だけでなく、パスポートの取り上げ、礼拝の拒否、人の移動の制限など、世界が注意を払わない中で抑圧的な政策がゆっくりと展開されている」とマーフィー氏は述べた。
また、ターケル氏の「ウクライナ侵攻後、企業はロシアからすぐに撤退した。しかし、なぜ新疆からの撤退にはこれほど遅れているのか」との質問に対し、「私たちが世界中で消費している多くの商品の市場を中国政府が実質的に掌握していることにある」と回答した。
以前のハドソンのイベントでは、専門家が、中国共産党が防衛上重要な電池のサプライチェーンを中国が独占することを通して、米国経済や国家安全保障にどのような影響力を及ぼしているかについて議論した。
トランプ元大統領の下で米国家地理空間情報局の最高技術責任者を務めたアンソニー・ビンチ氏は、電池とサプライチェーンの問題は、「通常の」経済競争ではなく「戦場の準備」と呼ぶにふさわしい状態であると述べた。
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