米証券取引委員会(SEC)は26日、米国に上場する中国企業が米当局の会計監査や調査活動などを受け入れたのを受け、中国側との間で合意したと発表した。アリババなどの中国企業の上場が維持される可能性がある。いっぽう、米側は「完全な監査ができなければ上場廃止になる」と強く牽制した。
SECのゲンスラー委員長が同日に声明を公開し、「この合意は、われわれが初めて中国から受け取った具体的なコミットメントである」とした。声明によると、今後SEC監督下の米国公開会社会計監督委員会(PCAOB)が中国企業への監査などを実施する。
中国側の発表に自国有利な文言
米側の発表によると、PCAOBは「中国側と協議したり意見を聞いたりする必要がなく」、調査を行う企業、監査業務を行う独自の裁量を持つほか、中国企業の未修正の監査書類を入手して中国と香港の監査法人の職員から直接聞き取りを行う権限を得る、などの内容に合意した。
だが、中国側は「監査書類は中国側を通じて入手する」と発表し、「(米)独自の裁量」に言及しなかった。また、職員への聞き取り調査などは「中国側の参加と協力の下で」行われ、監査は「対等と平等」の原則の下で行われると強調した。自国に有利になるよう印象付ける狙いがあるとみられる。
中国政府系メディア「中国基金報」は25日、米中両政府間の合意について「非常に大きな朗報である」「重要な一歩を踏み出した」と伝えた。
ゲンスラー委員長は、中国との合意は「重要ではあるが、プロセスの一歩に過ぎない。合意はPCAOBが、中国にある監査法人を完全に監査できる場合のみ意味を持つ。これができなければ、200社の中国企業は米国での証券取引が禁止される」と警告した。
米議員「最高レベルの猜疑心で」
ブルームバーグによると、PCAOBの監査官らが香港で中国企業の監査状況を調べる予定で、中国当局は国内の各監査法人に対し、米上場の中国企業の会計監査データを香港に送るよう指示した。
中国政府は今まで、国家安全保障上の懸念を理由に、中国企業の監査書類の開示を巡る米側の要請を拒否してきた。
米議会はこうした中国側の対応に対抗して、2020年に外国企業説明責任法(HFCAA)を可決した。同法は中国企業を念頭に、外国企業が3年連続で米証券当局の監査基準を満たさない場合、米株式市場での上場を廃止すると規定。
SECも同法の下で21年に、外国企業に対する情報開示義務に関する規制を改定し、上場廃止リスクがある企業159社のリストを公表した。今月中旬、さらに中国石油化工(シノペック)など国営企業5社の、米ニューヨーク証券取引所の上場廃止計画を公表した。
外国企業説明責任法の立案者の1人、マルコ・ルビオ上院議員(共和党)は26日、PCAOBが中国企業への会計監査を完全に実施できるよう促した。
「中国企業は何年間もわれわれの規定を無視し、米国の金融市場から利益を得て米国人を莫大な金融リスクにさらした」と議員は批判した。
同議員はまた、中国政府がこの約束を実現できるか「最高レベルの懐疑心を持って注視すべきだ」と警告し、「中国は何度も何度も国際公約を破って信用できない」と示した。
今年3月までに、中国企業200社以上が米市場に上場し、市場総額は1兆3000億ドル(約179兆円)に達している。うち2000億ドル(約27兆7000億円)は米国投資者が保有している。
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